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第52回:「家族」以外も充分な味方

こんにちは、あみのです。今回の本は、汐見夏衛さんの『さよなら嘘つき人魚姫』という作品です。汐見さんの作品の感想をnoteにて書くのは、2冊目になります。

今作は、読んでいて辛い気持ちになってしまうシーンがあるかもしれません。だけど、大切なことを教えてくれる物語なのは確かです。

物語の主人公は高校生ですが、この作品に込められたメッセージはきっと幅広い世代の読み手の心を掴むと思います。

あらすじ(Amazonより引用)

どうでもいい嘘ばかりついて、へらへら笑う『かまってちゃん』の綾瀬水月。
誰とも喋らず親切も拒絶して、透明人間扱いされている〈変人〉、羽澄想。
ふたりは、誰にも知られていない悩みがあった。居場所がなくて毎日が息苦しくて――”死”に憧れていた。
そんなふたりが、あるきっかけで一緒に過ごすようになる。互いに聞かれたくないことは触れず、そっと寄り添うように過ごすおだやかな日々。そこに居心地の良さを感じる羽澄と綾瀬。
しかし、現実は残酷で……。

「ふたりなら、きっと、怖くない」
潤んだ瞳が海を見ている。
「せえの……」
息を合わせて、手を繋いだまま、ふたり同時に地面を蹴った。

心を鈍らせ、奇跡を信じていた羽澄と綾瀬。彼らが絶望の中で見つけた答えとは――?

感想

作者の「新境地」とのこともあり、これまでに私が読んだ汐見さんの作品とは異なる印象を放っていた作品でした。

複雑な家庭環境に悩む高校生同士が不思議な友情を通して、生きる理由を知る物語。羽澄と水月は、親から歪んだ感情を日々浴びせられており、毎日を生きることに苦しさを感じていました。

息苦しい家庭、頻繁に飛び交うネガティブな感情、理不尽な世界。想像以上に痛々しい展開には、目を背けてしまいたくなる箇所も多かったです。

それぞれの親と対立する場面や、過去が描かれた部分ではあまりにもの息苦しさに思わず吐き気がしてしまうくらいでした…。

冒頭から物語のカギを握りそうな不穏な話題はありましたが、この話題と羽澄たちの現実が近づいたとき、この物語はどう動いてしまうのか読んでいて凄くハラハラしました。

***

若者たちに、もっと大人を信じて、大人を頼ってほしいなあ

上記は、今作の終盤にて生きづらさを抱える羽澄に対し、沼田先生が掛けた言葉です。沼田先生のこの言葉こそが今作が伝えたかった最大のメッセージだと私は思います。

高校生目線の話なので作中では「大人」という表現が使われていますが、あとがきにて汐見さんは、「大人」という箇所を「周り」という言葉に置き換えることもできると述べていました。

つまり、この言葉は「生きづらさ」を抱えるすべての世代の人に向けていると言っても過言ではないと思います。

私にも家族以外の人に聞いてほしい悩みはあります。だけどなかなか上手く言い出せなくて、逆にストレスとなってしまうことが時々あります。沼田先生の言葉は、私にとって前向きに日々を生きるための勇気を貰いました。

「家族」だけが頼れる「身近な大人」ではない。家の外にいる頼れる人を味方につけ、いざというときに悩みを相談できる関係を日頃から作ることはとても大切であることを今作から学びました。

相談することによって変わる未来もなくはないと思います。

ドキドキするストーリー展開、ミステリアスな設定、希望を感じるラストシーンはぜひたくさんの人に味わって頂きたいものです。(途中苦しくなるかもしれませんが…)

私も幅広い人とのつながりを大切にし、ストレスを溜めない人間になりたいと思った1冊でした。

困難の乗り越え方を知った羽澄と水月の未来に幸あれ。

***

★以前感想を書いた汐見作品

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