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第75回:夏なので怖そうな本が余計読みたくなるよね

こんにちは、あみのです。毎日暑いですね。

さて今回の本は、桜井美奈さんの『殺した夫が帰ってきました』(小学館文庫)という作品です。もともと読んでみたかった作家さんというのもあるのですが、怖そうなタイトルに心を掴まれて読んでみました。

殺したはずの夫が突然戻ってきた…という衝撃的なオープニングの今作。日常に潜む恐怖と隣り合わせなこの物語は、一体どこへ向かおうとしているのか。ハラハラしながら読み進めていると思わぬ場所へ到達してしまう、ミステリーならではの感覚が味わえる1冊です。

あらすじ(小学館サイトより)

やっと手にした理想の生活だったのに‥‥‥
都内のアパレルメーカーに勤務する鈴倉茉奈。茉奈は取引先に勤める穂高にしつこく言い寄られ悩んでいた。ある日、茉奈が帰宅しようとすると家の前で穂高に待ち伏せをされていた。茉奈の静止する声も聞かず、家の中に入ってこようとする穂高。
その時、二人の前にある男が現れる。男は茉奈の夫を名乗り、穂高を追い返す。男は茉奈の夫・和希に間違いなかった。しかし、茉奈が安堵することはなかった。なぜなら、和希はかつて茉奈が崖から突き落とし、殺したはずだったからだ。
戸惑う茉奈をよそに、和希は茉奈の家に上がり込む。改めて話を聞いてみると、和希は過去の記憶を一部なくしており、茉奈と一緒に暮らしたいという。茉奈は渋々それを受け入れる。
かつての和希はとても暴力的な人間だったが、いざ暮らしはじめると、暴力的な影は一切見られず、平穏な日々が過ぎていった。
しかしそんな矢先、茉奈のもとに一通の手紙が届く。手紙には一言だけ「鈴倉茉奈の過去を知っている」と書かれていて‥‥‥
記憶をなくし帰ってきた、殺したはずの暴力夫。謎めいた正体と過去の愛と罪を追う、著者新境地のサスペンスミステリー。

感想

家庭内での居心地の悪さから夫の和希を殺害した過去を持つ茉奈。夫を殺害したことによって苦しい生活から解放された…はずでしたが、突然茉奈の前に和希を名乗る男性が現れます。

殺害以前は暴力的な性格だった和希ですが、茉奈の前に再び現れた和希は、不思議と居心地の良さを感じてしまう穏やかな性格になっており、この「優しさ」の中にはどこか「不気味さ」も感じられました。なんか爆弾を抱えているような感覚。

今は優しく、茉奈にとっての理想的な男性でいる和希だけど、いつかは彼に自分の罪を何らかの形でバラされてしまうのでは…という不安を茉奈は抱えるようになります。

茉奈の罪と向き合う瞬間への恐怖と同時に、和希が現れた理由や茉奈の過去に関する謎解きも楽しい作品でした。後半は思わず驚いてしまう展開も多く、改めて今作を読み返したら見方が変わるようなシーンもあるんじゃないかなと思いました。今作を読む機会があったら、謎解きにもぜひ挑戦してみてください。

また、今作は「サスペンス」とか「ミステリー」の面白さだけでなく、「恋愛小説」という楽しみ方もできました。「恋愛」といっても感情としては現実的でエグさを感じさせられるものでしたが。

単純に好きな人と「付き合う」ことと、「結婚」との違いが印象的に描かれていて、おとぎ話のハッピーエンドのような結婚生活なんて、ただの「憧れ」に過ぎないのかなと思いました。

茉奈も結婚前は和希のことを「顔がタイプ」だとか「趣味が合う」とか言ってたけど、結婚してみると女性の気持ちへの理解がないなど茉奈を苦しめる男性であることがわかりました。そして、この苦しみの積み重ねが例の犯行へと繋がってしまいます。

今の私には詳しくわからない感覚ではあるけれど、とにかく「付き合うだけの恋愛関係」と「結婚」って、考え方がかなり異なる世界であることは今作で充分にわかりました。

正直、読む前は残酷描写もそれなりにあるのかな?と思ってましたが、意外と少なく(個人的にですが)、スルスルと読めてしまいました。ひとつひとつの謎が興味をそそるので、読めば読むほど先が気になってしまう物語でした。こういうサスペンスタッチの小説も私は好きです。

ひとりの女性が恋愛としての「居場所」を追求する物語。あなたもこの「爆弾」のような物語に触れてみませんか?

***

最後に、今回の記事を読んで頂きありがとうございます。程よい怖さの作品で、とても面白かったです。ミステリー作品も、もっと読んでいきたいです!

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