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過去を変えること、本当に正解ですか?(太田紫織:『魔女のいる珈琲店と4分33秒のタイムトラベル』)

太田紫織さんの『魔女のいる珈琲店と4分33秒のタイムトラベル』(文春文庫)を読みました!

北海道を舞台にした心温まる話が多い太田さんの作品。
今作では過去をやり直すチャンスをくれる不思議な珈琲店を舞台に、様々な人の後悔と再生の様子が描かれました。

まず今作を読んで感じたのが、もし過去を変えられても、それが必ず幸せな結果になるとは限らないということです。「タセット夕暮れ堂」を訪れた人には、過去を変えるのに成功した人もいれば、失敗してしまった人もいました。

でもそれぞれの結果をよく見ると、もちろん過去を変えて幸せな日々を送る人もいるし、逆に過去を変えていたら今以上に酷い結果になっていたかもしれない人もいました。そう考えてみると過去を悔やんでいる時間よりも、今を見直して、過去を乗り越えるための行動を起こす時間を大事にしていきたいと思いました。

ちなみに主人公の陽葵ひまりですが、彼女にも過去を変えたい願望はあるものの、ある理由でそれができないらしいです。ミステリアスなキャラクターも見どころのひとつである太田さんの作品ですが、今作は特に謎の多い登場人物が多い印象でした。

また今作もいつも通り心温まる話なのかな?と途中までは思っていましたが、最後のエピソードがなかなかに衝撃的な内容でした。
過去を変えることができても、その裏では新たな悲劇が生まれているかもしれない…。ラストで突きつけられた現実に陽葵がどう向き合っていくのか、次回作はより壮絶な物語が繰り広げられそうです。

コーヒーが重要なモチーフとして登場するのもあり、喫茶店で読むにもぴったりの本だと思いました。ゆったりと、時に激しく流れる音楽のような感情に浸れる1冊でした!

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