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第72回:「ぼっち」でも人と関わるのはやっぱり楽しい

こんにちは、あみのです!今回の本は、相崎壁際さんのライトノベル作品『どうか俺を放っておいてくれ』(GA文庫)です。

今作では高校3年間をぼっちのまま過ごしてしまった主人公が、同級生の女子と共に高校入学時へタイムリープしてしまいます。1周目の高校生活では見えなかった同級生たちの姿を知り、主人公は何を学ぶのか。笑いだけでなく、思わず共感してしまう話題も満載な作品です。読むと凄く前向きな気持ちになれます!

あらすじ(カバーより)

 恋、友情、輝かしい青春。そんな期待に胸を膨らませた俺の高校生活は――結局ぼっちのまま終わった。
そして迎えた卒業式前日‥‥‥。
「死なないで!七村くん!」
 モデル顔負けの美人・花見辻空をかばい、俺はトラックに轢かれて人生の幕を閉じた‥‥‥はずだった。
「神様の気まぐれかもね」
 しかし、その事故を機にどうやら俺は同級生の花見辻と一緒に高校一年生の入学式に戻ってしまったのだ。
 二度目の高校生活は輝かしい青春など期待せず大人しくぼっちで過ごそうと思いきや‥‥‥彼女から望んでもいない提案が。
「ぼっち脱却、私が手伝ってあげる」
 この物語は俺が二度目の高校生活で送る、最悪で最高の青春ラブコメだ。

感想

私も過去に穂高と似た経験があるので、彼の思考には共感しかなかったです。確かに旅行とかひとりで行動した方が圧倒的に楽だよねって思うときはあります。一方で誰かとしょうもない話がしたいなって思うときもあります。この物語にはそんな感情の全てが詰まっていました。

ぼっちでいることは穂高の強みでもあると思うけど、タイムリープがきっかけで花見辻さんと関わるようになり、人付き合いの楽しさを知ったことは彼にとって大きな発見だったのではないでしょうか。学校やファミレスで花見辻さんと何気ない会話を繰り広げる時間は、近い将来穂高にとって宝物のような思い出に変わると思います。

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穂高のクラスには星ヶ崎さんというギャルがいます。私は、彼女と穂高が巻き込まれた事件のくだりが特に印象に残りました。

陽キャで自分とは住む世界が違う彼女を苦手だと思っていた穂高。そんなある日、専門店へラノベを買いに行った穂高は、売り場にて星ヶ崎さんの意外な一面を知ります。それは、彼女も自分と同じくラノベが大好きであることでした。

星ヶ崎さんの秘密を知ったとき私は、彼女は素敵な趣味を持っているなと思いました。しかし、学校では陽キャのグループに属していることと「ラノベ好き=キモい」と思われてしまうことへの不安から、星ヶ崎さんはラノベ好きであることを周りに隠していました。

秘密を隠しながら陽キャグループの一員として高校生活を送ってきた星ヶ崎さんですが、思いもよらぬ形で彼女の秘密が周りにバレてしまいます。彼女の予想通り、陽キャがラノベ好きという事実を否定する生徒も何人かいました。彼女の趣味を否定する生徒には私も苛立ちを感じました。

唯一星ヶ崎さんの秘密を知る穂高は、彼女がこれ以上傷つかないよう嘘をついて星ヶ崎さんを救います。穂高の嘘で1周目の高校生活では救われなかった星ヶ崎さんの青春を救えたことは、彼の大きな成長のひとつだったのかなと思いました。星ヶ崎さんの件からは、外見だけでは相手を知ることはできないことを痛感します。

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今作にて穂高は、「ぼっちを貫くと決めたとしても、やっぱり誰かとのつながりは欲しいこと」「今の自分には少なくとも花見辻さんの存在が必要であること」に気付きました。このことは下記のセリフからもよく感じられました。

「人間関係ってのは面倒で、一人でいるぼっちは楽だ。これは絶対的な真理。でも、面倒なことをひたすら回避して生きていても、どこにも行けない気がするんだよな。うまく言えないけど、面倒なことも人生に必要だっていうか、この面倒くささもどこかにつながってるっていうか。花見辻と過ごしてて、そんな風に思った」(p272)

ひとりでいる時間ももちろん大事だけど、誰かと関わる時間を作ることも同じくらいに大事。この物語では「人と関わることの大切さ」を学ぶことができました。私も今以上にいろいろな人と話してみたい!と思える、そんな作品でした。しょうもないことで盛り上がれる仲間を持つことは、人生を充実させるためには必要だと思う。

今作だけでも穂高は、たくさんの人とのつながりを持つことができたと思います。そんな彼がこれからどのような高校生活2周目を楽しんでいくのか、私はとても興味があります。先が面白そうな展開で物語が終わっていたので、続編が出たら引き続き読んでみたいです!

あと穂高、読書が好きでも好きなジャンルが違う人とは分かり合えないという気持ち、私も凄くわかるよ。

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今回の読書感想を読んで頂き、ありがとうございます。学生時代に読みたかったなと思えるくらい、人付き合いの大切さがとてもわかりやすく描かれていた作品だったなと思いました。ぼっちの経験がある人、人付き合いが苦手だと感じている人には特におすすめしたい1冊です。

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(どうでもいい話ですが、アニメイトで今作を買ったら上記のような特典も貰えました。作品の面白さが読む前から詰まっているような凝った特典が、私は大好きです)

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