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第18回:生き辛さはいつの時代も変わらないのかもしれない

こんにちは、あみのです。今回の本は、雨咲はなさんのライト文芸作品『鳴かぬ緋鳥の恋唄』(富士見L文庫)です。これまで歴史モチーフの作品はあまり読んだことがなかったのですが、今作は表紙に惹かれてなんとなく手にしました。

今作は戦国時代が舞台にはなっていますが、生き辛さに悩む登場人物たちの姿は価値観は違えど、現代にも通じる箇所があるように感じられました。恋愛要素もちょっとあるので、気軽に楽しみやすい歴史作品だと思います。

あらすじ(カバーからの引用)

 戦国の折、ある島に一人の少女が流れつく。声と記憶を失った彼女は島の頭領・千早に「ひな」と名付けられ暫し島で暮らすことに。
 余所者を警戒する千早に対し、ひなは迷惑をかけまいと掃除や料理に励むも失敗ばかり。けれど、唯一得意だった縫物の才が島の人達に認められ、少しずつ自立していく。そんな直向きなひなの気心は次第に千早にも変化を与え、ひなも時折垣間見る彼の優しさに心惹かれていった。だが、彼女の出自には重大な秘密があって……?
 すべてを失った少女が、本当の居場所を見つける戦国恋物語。

感想

まず戦国時代を舞台にした作品とのことだったので、読む前は戦国武将が活躍する話なのかなと勝手に思っていました。しかし、主人公のひなは特殊な事情を抱えていましたが、基本的には羽衣島という架空の島を舞台とした戦国時代を生きる一般の人々の生活を描いた物語でした。

作中では、ひなと羽衣島の島民との温かな交流が描かれていました。ひなと羽衣島の人々は立場が大きく異なる存在ではありながらも、ひなの人柄や才能をすんなりと認め、島民たちに大切にされます。ひなを助けた千早をはじめとする島民の優しさにとても心温まる物語でした。主人公がみんなから愛される話は読むだけでめちゃくちゃ幸せな気持ちになります。

また、ひなは羽衣島に流れ着く以前の記憶を失っていることもあり、彼女の過去に関する謎も展開されました。ひなは羽衣島での生活中、自分の過去だと思われる悪夢を何度か見ます。血生臭い悪夢の内容には私も目を背けてしまいたくなる場面もありました。

ひなも最初はこの悪夢に怯えていましたが、羽衣島で彼女のことを大切にしてくれる人たちと関わっていくことによって、やがて自分の正体を思い出すために悪夢と向き合うことを決意します。悪夢と向き合うことは、「羽衣島」という新しい居場所を手に入れるため、ひなにとって必要な試練だったと思います。

歴史ものをあまり読んだことのない私でもとても読みやすく、親しみやすい内容の物語でした。これまで苦しい生活を送ってきたひなは、これからも羽衣島にて千早たちと幸せな毎日を過ごしてほしいです。また作品を読んでみたい作家さんになりそうですし、今作を機に他の歴史モチーフのライト文芸作品も少しずつ読んでみたいなと思いました!

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