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第28回:なんとなく読んだけど、予想以上に共感した1冊

こんばんは!あみのです。今回の本は、此見えこさんのライト文芸作品『きみが明日、この世界から消える前に』(スターツ出版文庫)です。よく行く本屋に「おすすめ本フェア」みたいなコーナーがあって、その中から見つけた1冊です。読んだことがない作家さんだったことと、タイトルの響きに魅力を感じて購入しました。

余談にはなりますが、私は本屋や図書館での「本との偶然の出会い」も凄く大切にしています。事前にインターネットとかで調べて関心を持った本で気に入った作品と出会えた瞬間も嬉しいですが、今回のようにふとした偶然で読んだ本が自分のお気に入りになるともっと嬉しくなります。

あらすじ(カバーからの引用)

強烈な恋と青春の痛みを描く最高純度の恋愛小説——。
ある出来事がきっかけで、生きる希望を失ってしまった幹太。朦朧と電車のホームの淵に立つと「死ぬ前に、私と付き合いませんか!」と必死な声が呼び止める。声の主は、幹太と同じ制服を着た見知らぬ人美少女・季帆だった。その出会いからふたりの不思議な関係が始まって…。強引な彼女に流されるまま、幹太の生きる希望を取り戻す作戦を決行していく。幹太は真っ直ぐでどこか危うげな彼女に惹かれていくが…。しかし、季帆には強さの裏に隠された、ある悲しい秘密があった――。

感想

主人公の幹太が「死にたい」と思ったのは、「幼なじみに失恋したこと」が原因でした。この理由を知った時、私は「なんでこんな些細なことで「死にたい」と思うのだろうか?」と凄く疑問に思いました。憂鬱な気持ちでいた幹太は、駅で季帆という女子高校生に出会います。しかし、彼女は幹太の「ストーカー」を名乗るかなり変わった人物でした。

幹太の悩みを知った季帆は、彼に「七海(幼なじみ)を恋人から奪う」ことを提案します。一方の季帆も幹太のために、七海の恋人の好意を自分に向けてもらうよう、努力をすることにします。それにしても季帆の際どい発言には、読んでいて何度もドキッてしました。

七海に振り向いてもらうため、彼女にアプローチをする幹太ですが、続けていくうちにどうして七海は幹太を恋人にしなかったのか?昔から七海が見てきた彼の弱みと共にその理由が明かされていきます。

実は七海は体が弱く、幹太は病弱な彼女のことを日々気にかけていました。しかし七海本人は今まで、幹太の過保護な性格が迷惑だと思っていました。この事実を知った幹太は更にショックを受けます。もし私が七海の立場だとしても、幹太を恋人には選びたくないです。

一方で季帆自身にも、現在の「生きづらさ」につながる過去がありました。彼女は家族の期待に応えるため、勉強に真面目に取り組み、学校での成績も優秀でした。勉強を教えることによってクラスメートと関わるようになった季帆ですが、遊びに誘っても彼女は勉強を優先してしまうため、後に「ガリ勉」と揶揄されることになってしまいます。

以前の季帆は、勉強を優先することが精一杯だったと思います。だけど、高校生の今となっては他の同年代のように「友達と楽しいことをする」という経験をこれまでしていなかったことに物凄く後悔をするようになります。

七海さんのことが、嫌いなんです。どうしようもなく

季帆のこのセリフは、幹太の想い人である七海への「好意」としての嫉妬の気持ちも含まれていると思うのですが、私は同時に体が弱くても仲間と楽しむことを大切にしている七海に対しての「羨望」の気持ちも感じました。

季帆の後悔からは、「友達と過ごす時間を大切にしてほしい」という作品に込められた強いメッセージを感じました。このあたりの部分は、中高生の頃の自分にも届けたくなりますね。季帆の場合は幹太という強力な味方も近くにいるし、勉強が得意なところを良い方面に活かせばもっと理想に近い青春が送れるのではと思いました。

また、作中には「死にたい」という表現がよく使われていました。だけど、今作における「死にたい」という言葉は「生きづらさ」を表していたのだと思います。幼なじみへの失恋にショックを受ける幹太と、勉強を優先しすぎて自ら理想とする人間関係を避けていた季帆の姿は、案外似た者同士のように見えました。

彼らのような生きづらさを抱えている人って、世の中に多いのではと思います。私も彼らの気持ちに共感した箇所がありました。「死にたい」というネガティブな言葉に隠れた「もっと生きたい」という彼らの希望を、多くの方に感じて頂きたい物語でした。

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