たみい

エッセイ『もそっと笑う女2』

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エッセイ『もそっと笑う女2』

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    死者を呼び出す人

    27年前の春に、たくさんの人に送り出されて17歳で兄はあの世へ行った。 それから一年経ってからだろうか。当時中学生だったわたしは、両親に連れられてある場所へ向かっていた。車中で聞かされたのは「お兄ちゃんを呼び出してもらう」ということだけ。呼び出し?頭の中は謎だらけになった。 到着したのは田舎の大きな家。中庭には立派な錦鯉が泳いでいる。見たところ60代くらいのオバハンに「どうぞどうぞ」と、広い和室に通された。入って左側に何やら壮大な祭壇があり、ただならぬ予感がする。 部屋

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      • 今日も生きてますっ。

        先月家の庭で、夫が小さなクワガタを発見した。 過去にカブトムシ三匹(オス一匹、メス二匹)を飼育し、二匹が20匹もの幼虫を産み落とし、飼育ケース(大)二個に分けて、夜になるとオスたちが凄まじい決闘を繰り返し、家中に「ブーンブーン」という重低音の不気味な音が鳴り響き、決闘に負けて今世をまっとうしたオスたちを、ひたすら土に埋めるという恐怖の飼育の経験がある。 それでもうカブトムシの飼育はお腹いっぱいです、となったわけなのであるが、クワガタと聞くと、話が違う。 なぜだろう、クワガ

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        • パワーワード『世界で一つ』

          とある神社に息子と散策をしていた時のことだ。 ベンチにずらり、あふれんばかりの手作り動物を広げたじいさんがいた。よく見るとプラスチックのようなものを再利用し、ハサミを駆使して色んな動物の形作り、カラーペンで色付けしてある。 じいさんなので、カラーペンの色付けは手が震えた為か、動物によっては目の位置がズレていたり、線も震えていたりする。孫のために大量にこしらえたのか、なぜ、このじいさんはこんなにも広げているか、、 立ち止まった瞬間、じいさんはじいさんとは思えない俊敏な動き

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          • ただの主婦が、最強

            たまに盆踊りの練習の後、家が近所なので先生を車で送らせてもらうことがある。その車中の先生との会話がなかなか興味深い。 先生と年は四十ほど離れているが、会話に困ることはほぼない。説教じみたことは一切言わないし、なんならいつもわたしを褒めてくれる。わたしは大変欲張りな人間なので心の中で「そういうのもっと言うてください」とひそかに思ったりする。ねちねちとした人でもないし、偉そうぶってるわけでもないし、じつにさっぱりとして豪快な人で、そんな先生の昔話を聞くのが楽しかったりする。

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            • 今日も生きてますっ。

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              1か月前
              • パワーワード『世界で一つ』

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                3か月前
                • ただの主婦が、最強

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                  4か月前
                  • 日舞ずっこけお稽古道中

                    日舞のお稽古が始まり、先日で六回目となった。 第一回目は扇子の開き方や持ち方もままならない、振りに関しても体がガッチガチ、手と足が同時に出てしまう始末、先生は優しく苦笑い。間違いなく先生を困惑させている。仕様がないのでわたしも一緒に力なく「たはっ」と笑うしかない。それでもひとつひとつ丁寧に指導してくださるので、血眼で先生の踊りを見る。お稽古は35分の待った無し一本勝負なのだ。家路に着いてからも繰り返し復習してみる。合ってるのか合ってないのかさえもわからないのだが。 第二回

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                    • 西加奈子とさっちゃん

                      わたしと作家、西加奈子との出会いは、12、3年ちょっと前になる。 職場仲間の’さっちゃん’が、なぜか急に西加奈子を勧めてきたのだ。 さっちゃんはいつも個性的な格好をしていた。頭からつま先まで真緑で統一したファッションや、番長風のスカートやエスニックなワンピースを奇抜に着こなしたりする。 「友達と二人でメキシコに旅行した時な、あたしたちの格好が面白いのか、メキシコ人たちにめっちゃ写真撮られたねん」と言うほど、カラフルな街並みでも目立ってしまうほどの個性を放つさっちゃんは、

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                      • 祭り前夜

                        取り憑かれたように盆踊りを始めて早5年。 いろんな方の踊りを見てきて、「踊ってる人」と「舞ってる人」と分かれるように思えてきた。踊ってる人は、ただ純粋に踊りを楽しんでる人。 舞ってる人は、指先にまで神経が行き届き、所作が美しいのである。だいたい日舞を嗜んでる方が多い。日舞習ったら、あんなにきれいに踊れるんか・・ええなあ、と心の中にぽっと小さな灯りがともる。その灯りは消さずに胸の奥にしまっておいた。 去年の秋、踊りの発表会が終わったあと、盆踊りの先生から一本の電話。 「

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                        • くーちゃんが死んだあと

                          去年秋に大復活を遂げた我が家の老犬くーちゃんであったが、12月に入り様子がおかしくなってきた。 夜に庭からくーちゃんの鳴き声がする。急いで出ると、犬小屋からお尻だけを出したままじっとしている。足腰が弱くなり、自力で出られなくなったのだ。 次の日、昼間に庭からくーちゃんの鳴き声。見ると、座ったまま鳴いている。 よくよく見ると、前足で踏ん張れず立てないようだ。お尻を持って介助してやっと立ち上がれた。しかし後ろ足もふらつき、またすぐに座り込んでしまう。 立ちたいけど、立てな

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                          • あんたもう一回タックル行きなさーい

                            久しぶりに小3息子のラグビーの試合があった。 前回は二年生の終わりにタグラグビーで試合をしたのが最後。三年生からはタックルありのコンタクトプレーになるので、一年前に全勝した相手も、悔しさをバネに練習に力を入れ挑んでくるにちがいない、だからタグのようには行かないだろうなと思っていた。 予想通りなかなかの攻防戦になった。応援している保護者にも力が入り、ついつい鼻息荒くなる。 各自様々な応援スタイルなのだが、大概の母親掛け声は、行けー!止めろ!当たれ!など短めのものが多い。当

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                            • 黄色いスクーターを乗り回す女

                              縁とは不思議なものである。 我が家に度々来訪する方の中に、義母の高校時代からの友人のAさんという女性がいる。 最初は義母を通して出会い、挨拶する中だったのが、近くを通りかかったので、と安くで仕入れた野菜、手作りのじゃこ山椒のふりかけ、ふきの炊いたやつ、昆布の佃煮(いずれも美味である)・・などを度々届けてくださるようになった。うちが不在の時は、玄関先に野菜やお菓子が入ったビニール袋が置かれており、「12時50分、A訪問」とメモ書きが貼られてあったりする。 Aさんの髪は全体

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                              • 生きる。

                                我が家には16才の雑種の犬、くーちゃんがいる。人間で言うと、100歳くらいになるのだろうか? 年の割には元気で、去年までは散歩中に軽やかに走ったりするほどだったのだが、急激に老化が進み、目は白内障になり、認知症の動きも見られるようになってきた。 そして突然、歩行もままならず、介護しなければいけない状態までなってしまったのである。 赤ん坊がそのまま大きくなったような、大変人懐っこい犬で、いつも人間を見る時の表情は何か言葉を発するような気配があった。 「ぼく、ここにいてま

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                                • 海に消えたおっちゃん

                                  27年前、兄の葬式で父の友人であるおっちゃんに声をかけられた。 大体の大人たちは、親戚のおじさん、おばさんぶった接し方をするのが常である。(「ちょっと見ないうちに大きくなったなあ」とか「勉強頑張れよ」と言った具合に) おっちゃんは気さくな人で、思春期真っ盛りの野良猫みたいな目つきのわたしに、優しい眼差しを向けてくれた。 それは人に対して判断をしない、フラットな眼差しだった。 田舎で暮らす人たちは、常に目に見えないしがらみの中で生き、それが常識であると疑わない。そんな空気

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                                  • 野生に戻る少年たち

                                    夏休みに入り、息子を連れて山遊びに参加した時のことだ。 最初の川遊びでは、近場にあった木の棒をただ川に流すという遊びを延々繰り返していた。「日本、アメリカ、イタリア」と、木に名付けてオリンピックレースをしている。実にシュールだ。 (ちなみに男の子の三種の神器は、木の棒、石、どんぐりだと思うのだが、小三になってもそれは変わらず不動のままである。) 場所を移動し、ジャングルのような険しい道を進み出すと、子供達のテンションが一気に上がり始める。整備された道ではないので、足元に

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                                    • すずめの鈴木さん

                                      今年に入ったあたりくらいだろうか。急に庭に一匹のすずめが訪れるようになった。決まって朝だ。たまに連れを引き連れてやってくるが、つがいなのか、よくわからない。オスもメスかもわからない。 この小さき訪問者に、「鈴木さん」と名付けた。でも実は毎日来る鈴木さんは鈴木さんではなくて、田中さんなのかもしれないが、ややこしいので「だいたい鈴木さん」と総称している。 鈴木さんの滞在時間は最初は短かった。やはり警戒してだろう。野生界的にはそれが正解だと思う。何が起こるか、何が出てくるのかわ

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                                      • 勧誘ドキュメンタリー

                                        以前勤務していた先で、とても素直でスレたところが一切ない大学生のバイトの女の子がいた。赤ちゃんのような純粋無垢さがあり、いつもへらへらと笑い、嫌なことでも笑いながら引き受けてしまうタイプの子だった。 ある時、少し年配の仕事仲間からうちに遊びにおいでと誘われたと言う。そのオバハンは某宗教の信者で、度々勧誘をしてるらしいと聞いたことがある。 あんたまさか、ついてったんじゃないよね?と聞くと、彼女はやはりへらへらと笑いながら、断れなくて行ったんですぅ、と答えた。 彼女が言うに

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                                        • 変なおっさん

                                          どこの町にも日中ふらふらと放浪して「あの人一体何してるんだろう?」という風貌のおっさんがいるものだ。 我が故郷にも一人いた。 夏目漱石に極似で、いつもぼーっと佇み、どこか遠くを見つめている。小学生の間で「あのおっさんに近づくと、わーっと叫びながら追いかけてくるらしい」と言ううわさが広まっているほどだった。 大人の間のうわさでは「あの人は高学歴で、大変頭が良い人だったが、人生のどこかで狂ってしまったらしい」というものだった。 どちらにせよ、うわさなので誰も真実は知らない

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