たみい

エッセイ『もそっと笑う女2』 日々笑いと踊りを求めて西へ東へ右往左往 京都の西方面に生…

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エッセイ『もそっと笑う女2』 日々笑いと踊りを求めて西へ東へ右往左往 京都の西方面に生息中 好きな音楽はゴスペルジャズソウル 好きな映画は三谷幸喜の『ラジオの時間』『12人の優しい日本人』

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死者を呼び出す人

私が14歳の春に、たくさんの人に送り出されて17歳で兄はあの世へ行った。 それから一年経ってからだろうか。両親に連れられてある場所へ向かっていた。車中で聞かされたのは「お兄ちゃんを呼び出してもらう」ということだけ。呼び出し?頭の中は謎だらけになった。 到着したのは大きな屋敷。中庭には立派な錦鯉が泳いでいる。見たところ60代くらいのオバハンに「どうぞどうぞ」と、広い和室に通された。入って左側に何やら壮大な祭壇があり、ただならぬ予感がする。 部屋の中央に、両親とわたしは横並

    • 息子の告白

      ある保護者のお父さんが言っていた。 「みんなお母さんたちは料理を頑張りすぎですよ。二品も三品も作るでしょ?適当でいいじゃないですか」と。 最近になってだが、息子が急に過去の衝撃的な出来事を告白してくれた。 息子は小学1、2年の時学童に通っていたのだが、夏休みなどの学校がない期間はお弁当を持参しなければいけない。 そのお弁当作りを夫に任せていた時があった。 料理はできる人なのでそれなりに作っているのだと思っていた。 その当時のことをふと思い出した息子は、 「お弁当箱開けたら

      • 第一回なぜ人は生まれて死ぬのかミーティング

        6年生の夏休みの自由研究、なぜ人は生きるのかっていう哲学的なことをテーマにしたい と、息子が寝る前に宣言した。 結構重めなテーマでびっくりしたが、寝る前だと言うのに息子の目は覚醒していたので、余程本気のテーマなのだろう。 では夏休み入るまでにアイデア出すためにミーティングしてみるのはどう?と提案すると、それはいいね、と息子は頷いた。 数日後、近所の純喫茶へ向かう。夕方だが店内は活気がある。 息子は何の迷いもなくカツカレーを頼む。 これからミーティングだというのに、お腹いっ

        • ことばをあえて使わないでみると

          息子が寝る前に、 お母さん、今から何も喋らないでジェスチャーだけでコミュニケーションをとろう、と、おもろい事を言い出したので、すぐに乗ってみる。 たとえば、今まで何万回と言い続けてきた、 歯磨きをしなさい、とか、 寝る用意しなさい、とか、 ことばにするとなんだかだるいのだけど、 (言ってるこっちが嫌になってくるのだ) ジェスチャーになると途端に軽くなる。コントみたいになる。あそびみたいになる。 チャップリンの映画みたいになる。 自然と笑う。 ガミガミ言っていたのが阿呆らし

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        死者を呼び出す人

          うどん屋

          烏丸にあるな、うどん屋 好きな人と行ってん 17歳のとき 90歳近いおばあさんが、出来たてのきつねうどんを見たとたん、目を細めて懐かしんでいた。 70年前(!)の思い出とか、急に甦るんや、と思ったらびっくりした。 17歳の少女が、好きな人とうどんをすする光景が、霞むように目の前に浮かんだ。

          うどん屋

          助けてください!

          スーパーで、あるおばあさんと目があった。 彼女は大きく開眼し、その瞬間、藁をも縋る思いで、わたしの腕を捕まえた。 助けてください! 鍵をどこかに落としたんです。どこにもなくて、、 かなり動揺している。 店内のインフォメーションセンターに落とし物にないか、聞いてみてはどうですか?と言うと、 ええ、そうなんです、さっき、行ったんです! でも、どうしよう、鍵どこに落としちゃったんだろう、、 私は仕事の合間だったので一緒に探すことができず、 もし見つけたら、インフォメーションに

          助けてください!

          リュックを背負う母

          図書館でパンパンのリュックを背負い、一歳くらいの自由に走り回る我が子を追いかけている母親とすれ違った。 そういえばあのくらいの時期はいつも背負っていた。 着替え オムツ タオル おもちゃ おやつ お茶 色々なグッズを詰め込んで。 その母親はいつかの自分に思えた。 あなたは十分によくやっているよ、あの母親に、あの時の自分に、そう言った。

          リュックを背負う母

          それってただの自己満足やん

          素人が日舞の舞台で高い衣装代や道具代を払ってまで披露することを、ただの自己満足やん、と誰かが言っていた。 確かに、と思った。 日舞だけの話ではない。どんな表現でも、自己満足なのか、誰かを楽しませることができる表現なのかは、一体何がちがうのか。 あるミュージシャンがラジオで言っていた。 感情に入りすぎてるときのライブは全然だめ。 冷静に客観的にみえてないと。

          それってただの自己満足やん

          母親らしさって

          学校や習い事の場で、母親同士が会話をしているのを見るたびに、違和感を感じることがある。 みんなまっとうな母親の顔をしてる。 子どもの話をする度に、もう子どもの話なんかしたくない、あなたの話は?あなたの話を聞かせて、という衝動にかられる。 学校や子どもという共通の話題しかないから、当たり前なのだが、ほんとうに?と思う。 みんな本当にその会話したいと思っているの? 退屈そうにぽつんと待機している父親たちの方が、何故だか自然に見えてしまう。 私は母親らしい振る舞いというのは、

          母親らしさって

          生きる着物

          失敗を繰り返し、遠回りしながら、なんとか生きてるタイプの人間がいると思うが自分はまさしくそれだ。 着物のイメージはどんなだろう? 私は数年前まで着物とは祝い事の席で着るもの、それも人生で何度か、お金を払ってでも着付けてもらう、自分で着付け?ぜったいムリ! という感じだった。 とにかく縁遠いもの。ところが。ひょんなことから日舞を習うことになり、縁遠かったものが急に3センチくらい目の前の至近距離になった。 お稽古でも皆さん着物を着ている。というか、基本的に自分で着てこなきゃいけ

          生きる着物

          いい母親になりたくない

          そろそろややこしそうな年代を迎えようとしている息子11歳だが、ここのところ、こちらがブチギレてばかりだ。 カルシウム不足?生理前?更年期?逆に私の方が思春期?もうなんでもいいけど、沸点がとにかく低くなっている。 この間は故意ではないが私の大事なものを壊したので、腕をバシバシ叩いてブチギレた。息子泣く。 「もういい、寝なさい!」と二階に上がらせ、しばらくは怒りがおさまらない。 よく考えたら、そんな激怒するようなことでもないのだが、同じようなことをなん度も繰り返すことにキレていた

          いい母親になりたくない

          年をとることはいいことか

          去年の秋、検診で行った病院の待合所で流れていた映画の番宣。 精神障害者施設で実際に起きた事件を題材にした『月』という映画で、宮沢りえとオダギリジョーと二階堂ふみが出ていた。 その出演者だけで見たくなり、京都シネマへ行く。 主人公の夫(オダギリジョー)が、自分の作った作品が賞に選ばれて大喜びしてるシーンで泣けた。 終了後これから上映予定の映画のチラシをなんとなく見ていたら、ヴィム・ヴェンダース最新映画『パーフェクトデイズ』、主演は役所広司。これは観たい!絶対に面白い予感しかしな

          年をとることはいいことか

          クレープをあげたい

          息子は昔からご近所のおばあちゃんたちに沢山可愛がられてきた。何か困ったことがある時、例えば親が外出していないときに、平気でそういう人たちに頼ることができる。 地域に見守られてる安心感が強い。 その中の一人のFさんは、毎日杖をつきながらリハビリがてら散歩していた。息子は会うたびに声をかけ、まるで友達かのように長話をする。Fさんは決まって、にこにこと笑いながら、自分の孫を見るような温かい眼差しで接してくれるのだ。 いつだったか、息子がFさんと喋ってくると言って出かけたっきり、

          クレープをあげたい

          性格悪いのは誰譲り

          寝る前に息子がわたしの子供時代のことを色々聞きたがり、話し出していくうちに、自分の性格の悪さが浮き彫りになった。 すごくかわいくない生意気な子どもだったし、よくそんな面下げて生きてこれたと思う。 それで同じくらい性格の悪い人間を知ってる、と思った。 父方の祖母である。 めちゃくちゃ気性が激しく大嫌いだった。 はっとした。 祖母の遺伝子をしっかりと受け継いでいる。しかも大嫌いな部分を。 嫌いな人間というのは、自分自身の写し鏡だったのかと思うと恐ろしい。 息子に子どもが生

          性格悪いのは誰譲り

           おてもやんを習いたい

          日本舞踊を習っているのだが、時々「たいそうやなあ」と思う時がある。 つまり自分という平民が舞っても、バランス取れてへんよな?と感じる。 なんというか、格の高い人が舞うべきものでないのか、と体がむずむずするのだ。美しい着物を着て、優雅に舞うことで満足する人もいるのだろうが、大したことのない人間のまま、大したことのない布をまとい、しかし舞は心を込めてそして笑ってもらいたい、という願望が非常に強い。 先日盆踊りの先生を家までお送りする際、『おてもやん』の話題で盛り上がった。おても

           おてもやんを習いたい

          先に笑ったほうが勝ち

          子供に、喧嘩して手を出したほうが負けやで、とよく言うのだが、先日先に笑ったほうが勝ちやな、と思うことがあった。 ラグビースクールの試合の帰り道の車内、後ろで子供たちが「作った笑い合戦」をしていた。 愛想で笑ってるふうに思わせるほうがいいらしい。 二人とも、最初は妙に乾いた笑いを展開していたのだが、やっていくうちにゾーンに入り出し、もう本気笑いに突入。お腹を捻じ曲げて、悶えながら、涙を流しながら笑っていた。 それを見て、大人たちも大笑い。笑いの連鎖で車内は爆笑の渦に包まれた。

          先に笑ったほうが勝ち