生きてく栄養素

日常を生きていて、おそらく十人十色、反応するものが違うだろう。
なんてことない景色でも、お、と思うことが転がっている。
私の場合はとても地味なのだが。

移動販売の車に商品を積んでいる若い兄ちゃんに、
「おつかれえ〜、これ」と言って、缶コーヒーの差し入れを渡すおっさん。見たところ、くたびれてはいるが呑気で陽気なバイブスを放ってる。
今日も大変やなあ、とかなんとか世間話をして、へらへら笑っているおっさんの横で、テキパキと商品を詰め込む兄ちゃん。

その場から離れる気配がないおっさんに、「はい、これ。俺の金で買っとくし、受け取って」と、１リットルの日本酒を渡した。
おっさんは、「え〜すまんなあ、ありがとなあ」とデレデレ笑いながら静かに去った。

おっさんがすぐにでも酒を煽っている姿が安易に想像できたし、凛とした表情で働く若い男と、どこか浮世離れした緩んだおっさんの対比がコントみたいで、ハッとして、脳内のメモにしっかりと刻み込まれた。
こんなことメモっていてもなんの役に立つわけではないのだが、生きていく栄養素としては必要なのだ。