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第10回「取材をしてみよう」

「文章の書き方」
編集&ライティング歴40年ほどのフリーライター。120冊以上の書籍化でライティングを担当。
このnoteでは、誰でも文章が上手になるコツを伝えようと思います。特に順序立てて書くわけではありませんので、どの回から読んでいただいてもかまいません。また何回のコーナーになるかも決めておりませんので。暇な時に拾い読みして、参考になる部分だけを実践してみてください。


取材は難しい?

取材=材料を取ってくる

 「取材」という言葉は聞いたことがあると思います。新聞記者や雑誌記者など、メディアの人間がよく口にする言葉です。メディア以外の人間からすると、何となく難しい仕事のようにも思えますが、取材それ自体は別に大層なことではありません。「取材」とはつまり、記事を書くための材料を取ってくるということなのです。

 たとえばブログなどで新しい店を紹介するときには、まずはその店に足を運ぶでしょう。その店の雰囲気を味わったり、その店の名物料理を食べたり、あるいは店員さんと話をしてみたりします。この行為がまさに取材ということになるのです。


読者の分身になろう

 さて、今の時代は情報が十分にありますから、大抵の情報はネットやグーグルなどで検索すればそれで済んでしまいます。たとえば新しい店の紹介にしても、わざわざ足を運ばなくても、ネットなどを検索すればそれで書くこともできるものです。しかし、読むほうからすれば、そんなどこにでもある情報など読む気にはならないでしょう。発信者の独自の情報を読みたいと思っているものです。では、独自の情報を得るためにはどうすればいいのでしょうか。人とは違う取材をどうすればできるのか。

 たとえば新しくできたオムライス屋さんがあったとします。その店のことを発信したいと思う。そこでまずは自分が足を運んで、オムライスを食べることにします。
 オムライスを注文すると、ふわふわで美味しそうなオムライスが運ばれてきます。
 「わあ、美味しそうですね」と言えば、店員さんが答えてくれます。
「卵を四個使って調理をしてます。卵にも拘って、契約農家さんから取り寄せているんですよ」と教えてくれます。
 卵を四個も使っている。その卵は契約農家から取り寄せている。この二つの情報だけで記事を書いたとしたら、きっと読者を満足させることはできないでしょう。なぜならば、この二つの情報は、店員がほとんどのお客さんに話している内容だからです。誰にでも知ることができる情報には、大した価値はうまれません。

 そこで、もう一歩突っ込んだ質問をしてみることです。
 「卵を取り寄せている契約農家さんは、どこにあるのですか?」と聞いてみる。すると店員さんは答えてくれます。「茨城県にある農家さんです」と。そこでもう一つ質問を加えてみる。「その契約農家さんには、どんな特徴があるんですか?」と。「鶏を放し飼いにしているんです。放し飼いにした鶏はストレスがなく、それが美味しい卵につながっているそうです」。  これで二つの情報が加えられることになります。このようにして、とにかく簡単なことでもいいので聞いてみること。こんなことを聞いたら恥ずかしいかなと思わずに、知りたいと思うことが合ったら、積極的に聞いてみることです。
あなたが知りたいと思うこと。それは読者も知りたいと思っている。すなわち、読者の代わりにあなたが店の店員さんに聞いていると言う感覚を持ってみることです。


「聞く」「教わる」人間の行為 

欲しいのは生きた情報

 取材とはつまり、直接聞くということが基本です。書物やネットで調べるだけでなく、実際に誰かに聞いてみること。そこには生きた言葉と情報があります。その生き生きとした情報をみんなは求めているのです。

 どこかに旅にでかけたときにも、旅先で地元の人たちに話しかけてみる。「この町の名産は何ですか」「この地域はどんな歴史があるのですか」「この町の自慢は何ですか」「ここは暮らしやすいですか。冬には雪がつもるのでしょうか」。などなど、どんなことでもかまいません。初めての土地を訪れたときには、そこに暮らす人たちにいろんなことを聞いてみてください。


取材の楽しさは、本能の喜びにあり!

 自分が知っていることを聞かれて、それを教えてあげる。この行為は誰もが好きな行為だと言われています。どんなに口数の少ない人でも、自分が知っている道を聞かれると、丁寧に教えてあげるものです。きっと人間は、本能的に教えることが好きなのでしょう。

 基本的に人は教えることが好きなのですから、遠慮せずにどんどん聞いてみることです。もちろん忙しそうな人に聞くのは遠慮すべきですが、公園のベンチにのんびりと坐っているお婆さんがいたら、傍に行って話しかけてみる。そこで知らない街のいろんなことを聞いてみる。そうすることで、旅はさらに面白くなるのです。そして、地元のお婆さんが教えてくれた情報は、どのガイドブックにもグーグルにも載っていないものです。それこそが、あなただけの情報になり、価値が生まれるのです。ぜひとも取材の楽しさを知ってほしいと思います。

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