マガジンのカバー画像

屋根裏の本棚

17
書き散らした小説や詩を置いておく、屋根裏部屋のような。
運営しているクリエイター

#詩

『ある朝』

『ある朝』

ベッド脇の窓辺に
昨夜の残骸。

飲み干したラム酒と、本と、
ちょっと風邪ぎみ。

季節の名残り

季節の名残り

冷たい雨の朝
しとしと しとしと

通りにはコートにマフラー、彩の傘たち

駐車場に向かうと
あざやかな赤ひとつ

濡れそぼる、遅秋のカケラ
足を止める私に
溢れて消える想いの欠片

『落日に』

『落日に』

 
手を伸ばしても 何も触れない
 
虹がうすくほどけ
 
灰色の風が巻き上がる
 
 
私は浮かびあがり
 
空へと落ちていく
 
 

『それぞれの物語』

『それぞれの物語』

人生とはそれぞれの物語だ
 
他人の人生には登場できても
他人の人生を変えることはできない
その人の見る目で物語が作られているのだから
 
世界は人の数だけあるのだろう
 
 
だから
私たちの物語はけっして交わることがない
混じわることはない
 
できるのはただ
それぞれの物語をスプーンひと匙
分け合うことだけ
 
 

『さいごの季節に』

『さいごの季節に』

  
陽炎(かぎろひ)を
 
追いつつ見遣る かの想い
 
過ぎゆく夏に
 
応えなどなし
 
 

 
 
 

『春の色』

『春の色』

お天気雨の、75秒前。

密集した淡い桃色に目をやると、いつでも時間がグラリとする。

ここではないどこかにすーっと吸い込まれそうになって、
あわてて隙間にある小さな空を仰げば、
今度は、淡い危なげな水色に吸い寄せられそうに。

空の二階を一瞬だけ見たかもしれない。
雨粒をよけながら走って帰る。

『サカナ』

『サカナ』

ワタシはヒト、であるから
あなたという水の中では 生きてゆけないのです

スイスイ スイスイ
サカナになって泳いでみようと
それでもやってはみたけれど

ワタシはヒト、であるから
あなたという水の中で 溺れてしまいました

サカナになれたらよかったのにと焦がれつつ
溺れる幸福もあるのだと
息もできず 苦しみながら
溺れてしまえてよかったのだと

今はそんなことも思い出します
身体を横にして 上へ上

もっとみる
『 everyday 』

『 everyday 』

碧い粒子がふりそそぐ
夏の終わりの夕暮れ

窓をあけて 空へ身体を差し出せば いつも
何かに置き去りにされてる気がした

願いや望みのできるだけ近くへと
この両の腕を伸ばしてはみるけれど
心のどこかで だまされまいとする僕がいる

風はこんなに胸を打つのに
雲は優しく胸を突くのに

  
「わたしたち、遠くまで来たよね」
いつか君は言ったけど

まだ 泣けないんだ
いまだに 泣けないんだ

  

もっとみる
『川のほとり』

『川のほとり』

心の中の
ずっと深い深いところへ落ちていく
その奥にある川面めがけて 落ちていく
 
 
明日のことがわからない
明日がくるのか わからない
 
必要とされなかった私に
それでも時は流れているのか
 
つなぎとめておきたかった私に
それでもまとわりつく解放感
 
かき集めた言葉で
あなたを意地悪だと言ったこと
どうか 静かに見逃して
 
空回りする思い出を胸に刻んで
いっそ 清らかに 落ちていく

もっとみる
『心象』

『心象』

贈りもののように思える風景がある
なにかの力で ぽん、と それは渡されたよう
そんな風景に ふと気づく自分がいる

目に見えるものと見えないもので 世界ができているとしたら
きっと どちらも大切にしたいと思う

見えているものの中に 見えないものがふくまれているのに
私が見ているものを あなたがそのまま感じているとは限らない
それをさみしいとは もう 思わないけれど

今日もまた 私はあなたを抱き

もっとみる