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新婚早々、住んでるマンションに立ち退き依頼がきた

夫とは、出会って1年で結婚を決めた。

だから一緒に住み始めて「こんな一面があったんだな」とびっくりすることが多い。

夫は一見するとのほほんとした人物だが、とんだ切れ者だ。それはこの事件をきっかけに知ることになる……。

・・・・・

結婚を決めて暮らし始めた新居。といっても賃貸マンションなのだが、見晴らしがよく、天気の良い日は富士山が見えるので気に入っていた。

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ある日、管理会社から夫のスマホに連絡がきた。

管理「マンションの大家さんの息子夫婦が今度そちらに住むそうで、来月までに退去していただけませんか?」

横から漏れてくる管理会社さんからの声。

夫「ハィ。あーそうなんですね。なるほど」

管理「つきましては、退去手続きを…」

夫「すぐの退去は難しいですね。引っ越し先も見つけないといけませんし、引っ越し費用もかかりますので」

夫はやんわりとだが、管理会社さんの言葉を遮った。「なぜ冷静でいられるのだろう?」と感心してしまう。

電話を切った夫は言った。

夫「これから交渉で忙しくなるから、キミは引っ越し先をネットで探して」

あ「う、うん。でも大丈夫なの?来月に退去しろって聞こえたけど。引っ越し資なんて捻出できないよ」

夫「だから、交渉するんだよ」

あ「え…交渉って何を?」

夫「引っ越し資金を。」

あ「え、そんなんできんの?」

夫「ちょっと調べることがあるから忙しい。黙ってて」

あ「あ、はい……」

ネットで「立ち退き マンション」と検索すると、借地借家法というのを見つけた。解約には貸主と入居者の双方の合意がなければ立ち退きできないことを知った。

大家さん都合の立ち退き依頼なので、わたしたちは立ち退き料と引っ越し料を求めることができるのだ。夫はそれを知っていて、あのように冷静に対応できたのだろう。

けど、その値段は?交渉ってどうやって?

夫は以下を書面にまとめた。

・引っ越し先を探す時間的負担について
・引っ越しにかかる費用について
・引っ越し先が見つかるまでの期間、賃料は無料にすること

とうとう大家代理人と会うことになった。相手の出方次第では訴訟になるかもしれない。どう乗り越えるか?

夫「じゃ、大家の代理人と会ってくる」

あ「わ、わたしもついていこうか?」

夫「いや、邪魔だから来ないで」

あ「わかりました……。」

夫は書類を片手に、待ち合わせ場所の駅前のミスドへ向かった。

・・・・・

結果、夫はすべての交渉を優位にやり遂げた。必要な資金を得ることができたのだ。

彼は交渉の内容を細かく教えてくれなかった。けどわたしったら心配で仕方なくて、ミスドの窓から彼の姿を少しだけのぞいていたのだ。シャンとした背筋で話している彼のうしろ姿がまぶしかった。

わたしたちの日常を守るために、この問題に立ち向かってくれた夫に感謝した。彼が夫で良かったナ。

新婚早々、新居を引っ越すことになったけれど、夫の頼もしさを知る出来事だった。

結婚して6年。いつもありがとう。

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池田 アユリ@インタビューライター
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