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小学校受験する?しない? まずは"金銭面"から冷静に

【カズキチ】私立学校法人勤務の32歳/三度の飯より車のタイヤが好きな3歳児の父/息子に最適な"学校キャリア"(子供が社会人になるまでの進学プロセス)を考えるため、保護者+本業目線で都内の学校情報を収集中

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(2024.3.1更新)

突然ですが、皆さんは「両学長 リベラルアーツ大学」というYouTubeチャンネルをご存知ですか?

一般庶民が身につけたい「お金の基礎」をとてもわかりやすく体系的に教えてくれます。金融知識が全くなかった私も大変お世話になりました。

ということで、今回は小学校受験にまつわる"お金"の話です。

2年前になりますが、「リベ大」が子供の教育費に関する動画を投稿しました。

この動画、これから私たちが子供に教育費をかけていく上でとても大事な教育費に対する考え方を解説してくれています。この動画のお陰で、いま私は子供の受験について冷静に検討できているといっても過言ではありません。

今回はこの動画で解説されている教育費に対する考え方を引用しながら、「小学校受験は本当に対価に見合っているのか?」という少しセンシティブな問題に、私見を交えながら切り込んでいこうと思います。


「価格と価値」という視点

皆さんは普段の生活の中で「価格」と「価値」を意識していますか?

私は「リベ大」を見るようになってから少しずつ意識するようになりました。

ちょうどこの前、動物園に2回も遊びに行く機会があったので、動物園の入園料を例に「価格」と「価値」について考えてみたいと思います。

1回目に行ったのは上野動物園です。

上野動物園には貴重なゴリラがいます。都内でゴリラが見られるのは実は上野動物園だけなんです。

ニシゴリラ

その他にも、ゾウやキリン、そして大人気のパンダ。私の好きな猛禽類も数種類いました。

上野動物園の入園料は、大人1人あたり600円です。
つまり私は、ゴリラ、ゾウ、キリン、パンダ、猛禽類を見るために600円払った。そう考えてみます。

この600円は、私の中ではとても価値のある600円です。
貴重な動物を含めたくさんの種類を見れたので、これが600円なら大満足です。上野に行くまでは少し大変ですが、それでもまた行きたいと思える動物園です。

もう1か所は、青梅線の羽村にあるヒノトントンZOO(羽村市動物公園)です。

入園料は大人400円です。上野動物園より200円安いので、単純比較ならこちらの方がお得です。

ですが、ここにはゴリラ、ゾウ、パンダはいません。一般的な見どころとしては、キリン、シマウマ、あとはネコ科のサーバルあたりでしょうか。

実はわが家がここを訪れた目的は、オオカミでした。
私が子供の頃、実際にここでオオカミを見たことがあり、最近息子も『あかずきんちゃん』でオオカミに興味が湧いていたので、本物を見せてあげたいと思い、遊びに行きました。

しかし残念ながらオオカミは少し前に死んでしまったようで、もう展示はなくなっていました。

このままでは、キリンとシマウマとサーバルに400円払うことになってしまいます。この内容では、正直そこまでの価値は感じられません。

しかし後半で挽回がありました。
意外や意外、この動物園は私の好きな猛禽類が充実していたのです。フクロウ、ミミズク、タカ、ワシ、そして最も圧巻だったのはコンドルです。

こういうやつ

ポイントは、上野動物園よりも檻が近いことです。
上野動物園の場合は、檻との間に柵と茂みがあり、少し距離感があります。おそらく子供が誤って指を入れたりしないための対策なのでしょう。
一方のヒノトントンZOOはゆるいので、檻の目の前までぐいぐい近寄ることができます。

至近距離で見るコンドルは本当に大きく、翼を広げるとかなりの迫力が感じられます。
わが家が見に行った時は機嫌がよかったのか、奥から手前に向かって力強く羽ばたいてくれ、圧巻でした。

このコンドルがポイントを稼ぎ、結果的に400円分の価値を感じることができました

その商品に価値はあるか

上野動物園の入園料は600円なので、上野動物園は来場者に600円分の価値を提供していることになります。わが家にとって上野動物園は600円以上の満足感(価値)がありましたので、仮に入園料が700円だったとしても、また行くかもしれません。
一方、ヒノトントンZOOは入園料が400円なので、400円分の価値を提供していることになります。金額的には上野動物園よりもお得ですが、動物園としての充実度も踏まえると、わが家にとって400円は「妥当な金額」という評価でした。駅からはバス代もかかるので、もしあのコンドルがいなければ、400円分の価値は感じられなかったかもしれません。

お金を使うとは、その対価に見合うだけの価値を得ることに他なりません。

金額以上の価値を得ることができれば上手な買い物をしたと言えますし、反対に、金額より少ない価値しか得ることができなければ、あまり良い買い物ではなかったということになります。

金額に見合うだけの価値が、そこにはあるのか。

多くの人はこうした価値判断を無意識のうちに行っていますが、これをもう少し意識的に行うようにすると、レジャーや買い物だけでなく子供の教育費に対しても冷静な評価ができるようになります。

1150万円分の価値

チャイルドアイズによれば、小学校受験は受験前の準備や対策に200万円程度の費用がかかると言います。

さらにりそなグループによれば、私立小学校の学費平均額は6年間で959万2,145円です。

つまりざっくりと言えば、私立小学校への進学には1150万円分の価値が感じられなければならないことになります。

数値化すると、なかなか高いハードルに感じられますね。

もしあなたがすでに小学校受験を決めているなら、これから目指す志望校に1150万円分の価値を感じられますか。ぜひ一度考えてみてください。

「人的資本への投資」という視点

動物園を例に「価格」と「価値」について考えてきましたが、子供の教育費には、もう一つ考慮しなければならない重要な要素があります。
それは、「人的資本への投資」です。

例えば、教育費を極限まで少なく抑えようとするなら、公立小学校と公立中学校で義務教育を受けたのち、すぐに仕事に就くのが正解です。
そうすれば、極めて少ない教育費で子供を独立させることができます。

ですがこのnoteを読んでいる方なら、実際そうはしないと思います。
「そりゃあ高校には当然行くし、大学も普通に行くでしょ」と感覚的に思っている場合もあると思いますが、突き詰めて考えると、多くの家庭が子供を大学まで進学させる大きな理由は「人的資本への投資」です。

大学で高度な教育を4~6年間受けることで人的資本(人の持つ能力や経験)を高めることができます(正確には人的資本が高まったことを証明する「大卒」というステータスが得られます)。その結果、中卒や高卒と比べると仕事の選択肢がぐんと広がり、生涯年収も増える傾向にあります。

特に日本は経歴で人を評価する風潮がありますので、人的資本へ投資する(=教育費をかける)ことは自然と優先されていきます。

金銭的な「リターン」は約束されない

「人的資本への投資」は、文字通り「投資」です。
「投資」である以上、「リターン」のこともきちんと考える必要があります。

先ほど私立小学校に通うには受験準備も含め1150万円かかるという話をしました。「リターン」という観点で見るならば、その子の生涯年収が公立の場合より1150万円高くなれば、たとえ学校生活に1150万円分の価値を感じられなかったとしても、「投資」はきちんと「回収」されたことになります。

しかし「リベ大」の動画では、私立に一生懸命お金をかけても、割に合わないケースが少なくないことが指摘されています。

動画の例をそのまま引用すると、大学卒業後に公立小学校の教員になる場合、大学が私立だろうが公立だろうが、教員免許を取得して就職するプロセスは同じです。そして給与水準も変わりません。
つまりそこでは、私立の優位性は一切はたらいていないということになります。

小学校教員に限らず、私立出身者が給与面で優遇されるような仕事はほとんどありません。したがって、私立に通っても将来金銭的な「リターン」が約束されることはないと言ってよいでしょう。

そうなると、今度は金銭以外の部分で1150万円分の「リターン」を見出さなければなりません。

金銭以外の部分とはすなわち、学校そのものの価値です。具体的には、教育、経験、環境、人間関係、進路などです。これらが1150万円以上の価値をもって初めて、「投資」は成功するのです。

どうやって「価値」を測る?

もちろん、教育や経験などを単純に金額に置き換えることはできません。そこで例えば、公立小学校に行く代わりに習い事に1150万円つぎ込んでよい状況を想像してみましょう。

1150万円を6年間、つまり72ヵ月で割ると、ひと月あたり約16万円となります。
月16万円習い事につぎ込める状況と、習い事を一切せず私立小学校に通う状況を比較してみてください。

後者が前者を上回るなら、迷わず1150万円かけて私立小学校に行くべきです。なぜならそこに1150万円以上の価値があるからです。

中学以降も見通そう

「価格」と「価値」を考える重要性は、小学校のみならず、中学以降にも言うことができます。

「リベ大」の動画によれば、公立に進むか私立に進むかで、中学校3年間で約280万円、高校3年間で約250万、大学4年間で(文系か理系かによりますが)約330万円もの差額が生じると言います。

もし慶應や青学のような大学付きの小学校に入学してそのまま内部進学で大学まで進む場合、公立の小中高から公立(国立)大学へ進む場合と比べて、総額2000万円以上も多く出費が発生する計算になります。
実際にはそこから高校受験、大学受験の塾代を差し引くべきですが、それでも1700万円以上の差はあるでしょう。1700万円あれば、子供をもう1~2人育てられますね。

要するにそのまま大学に進める安心感の裏には、それ相応の対価の支払いがあるということです。

このように教育費を具体的な数値に直していくと、
「うちは子供3人だから高校まで公立かなー」
「うちは一人っ子だから中学から私立でも問題ないかなー」
「うちは子供2人だけど、お金に余裕があるから小学校から私立に入れられるなー」
といった具合に、長期的な視野で良し悪しを判断できるようになります。

冷静にシミュレーションを行いましょう。
間違っても小学校や中学校にお金をかけ過ぎて、大学に入ってから子供に奨学金を背負わせるようなことがないようにしましょうね。

結び

教育というものは、つい「子供のため」と思って、あれもこれもとお金をつぎ込みたくなるものです。私も面白そうな習い事や教材を見つけると、ついつい目が引かれてしまいます。

ですが、目の前の魅力的なものに惑わされず、その教育がもつ「価格」と「価値」の妥当性を見極めること、そして限りあるお金を必要な時に必要な分だけ投下していくこと、これらを意識することができれば、むやみやたらに受験に投資してしまったり、無理して私立に進んだりすることはないでしょう。

そして、お金やモノに対する「価値」の感じ方は、本当に人によってさまざま、千差万別です。
庶民にとっての1150万円は高額ですが、それを"はした金"と感じる人もいます。
上野動物園よりヒノトントンZOOの方が価値があると感じる人もきっといることでしょう。

これが「価値観」というものです。

ですので、「周りが受験するからうちもしなきゃ」とか、「みんなは公立なのに私立に行くっておかしいかな」とか、そんなふうに焦ったり心配したりする必要は全くありません。

価値基準はいつも自分。そこに価値があると思えば買えばいいし、価値を感じなければ買わなければいい。

受験や習い事に対しても、そんなふうに毅然と向き合えるといいですよね。

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