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いずれ行く世界をのぞく

こんにちは、天音です。

今日は読書感想記事。
筧裕介さんの『認知症世界の歩き方』(ライツ社)を読みました。

この本はタイトルから分かる通り、認知症に関する本です。
でも従来の認知症関連書籍とは違います。
医療従事者や介護関係者などの専門的な視点ではなく、認知症のある方々の視点で認知症を知ることができる本なのです。

この本を開くと、わたしたちはたちまち「認知症世界」へと迷い込み、認知症がある人たちが感じたり考えたりしていることを、「本人視点」で知ることができます。

「認知症世界」には、村や崖、温泉にトンネル、宮殿まで、たくさんのエリアがあるのです。

どのようなエリアがあるか、いくつか例をお話ししましょう。

例えば、乗るとだんだん記憶をなくす“ミステリーバス”
このバスに乗ると、自分がどこで降りるのか、どうして乗っていたのかわからなくなります。

人の顔がわから無くなる“顔無し族の村”
この村では、人の顔が判別できなくなります。
馴染みの客だと言われた人すら誰かわからないのです。

言葉や記号が消える、“創作ダイニングやばゐ亭”なんていうレストランもあります。
認知機能の低下により、感じたことや考えたことを言葉にできなくなるお店です。

他にも“サッカク砂漠”や“パレイドリアの森”など、認知症のある人が日常で困ることを独特なエリアに例えてわかりやすく説明されていました。

この本をわたしが手に取ったのは、今年83歳になった祖母が心配だったからです。
今はまだ元気で一人暮らしですが、生協で餃子が3袋もきて冷凍庫がパンパンだとか、お出かけの約束ができないとか、少しずつ困ったことが増えてきています。
祖母側の理屈が分かれば、摩擦が少なくなってサポートしやすくなるのではないかと考えました。

祖母のために読み始めた本。

しかし、読み終わって少しした今、わたしはわたし自身のためにこの本を読んで良かったと思っています。

信長によると人間50年らしく、それならわたしももう折り返し地点を通過。

この本を読んだ直後、実はとても「老い」が怖くなったんです。

『認知症世界の歩き方』には、「本人目線」を謳っている通り、多くの認知症体験談が書かれています。

いろんな感覚が曖昧になって、今までとは違う自分が露出することがとても怖く感じました。

その中には、もちろんご本人の戸惑いも語られています。

しかしその戸惑いや驚きの後に、「こうすればできる・分かる」と、自分で解決策を考えて生活を楽にし、楽しもうとしていることも十分にわかったのです。

祖母のために読んだ本でしたが、いずれ迷い込むであろう世界のことを垣間見て、わたし自身の未来のことを落ち着いて考えることのできるようになる本だったと思います。

認知症のある人、その人の側にいる人。
そして歳をとることについて考えている人。

もしかしたら、もやもやを解決するきっかけになるかもしれません。

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