ショートショート|オバケレインコート
玄関。屈んで靴を履いていると、ちょいちょいと肩をつつかれた。
誰が……何がつついたかはわかっている。
オバケレインコートだ。
祖母が経営する中古ショップの骨董品に混じっていた。いわゆる付喪神みたいなものだと思っている。
どうしてオバケか?
見た目は普通のレインコートなのに、着るとソレは見えなくなるから。側から見ると、傘をさしてないのに濡れない不思議なレインコートってわけ。着た人は人から見えるままだ。雨の中手ぶらで散歩するにはすごく便利。
コートを被り外に出る。すぐにソレはすうっと見えなくなった。
可愛いやつで、雨の日には自分を着て出かけるよう催促してくる。オバケのくせにおでかけが好きらしい。
――まあでも、ちょっと注意が必要で。
バウッ!
道ゆく犬に大きく吠えられた途端、肩と頭が濡れ始めた。
謝りながら犬をつれていく飼い主さんに会釈して、額を拭う。
控え目に再びレインコートがかぶさってきた。
可愛いやつなんだけど、犬が大の苦手らしいのは困りごとなんだよね。
(了)422文字
今週もたらはかにさんの企画に参加させていただきました。
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