読書感想No.36『複眼人』
こんにちは、天音です。
今回の読書感想は呉明益さんの『複眼人』(KADOKAWA)です。
●あらすじ(裏帯)
次男が生きられぬ神話の島から追放された少年。自殺寸前の大学教員の女性と、山に消えた夫と息子。母を、あるいは妻を失った先住民の女と男。事故で山の“心”に触れた技術者と、環境保護を訴える海洋生態学者。傷を負い愛を求める人間たちの運命が、巨大な「ゴミの島」を前に重なり合い、驚嘆と感動の結末へ向かう──。人間と生物、自然と超自然的存在が交差する世界を、圧倒的スケールと多元的視点で描く未曾有の物語。
五十音順作家巡り「こ」。
ずっと読みたかった本です。
表紙の美しさと、帯の煽り文句。全てに惹かれて手に取りました。
初めて読むジャンルだったので、読めるかどうか不安でAmazonなんかで少しだけレビューを覗いてみました。しかし、レビュー数が少なくてどんな本なのかはあまりわからなかったんです。
どんな本か把握せずに読書開始。
とにかく、「台湾」「神話」「SF」というのが鍵だということだけは理解しました。
正直にお話しすると、この本は面白い面白くないの前にとても読みにくいと感じる方がいると思います。
私は台湾の文化にあまり明るくないために、人物なんかの理解に時間がかかりました。
一応注釈は入りますが、それ以上に知らないことだらけだったんです。
例えば檳榔(ビンロウ)。
台湾ではよくある(?)噛みタバコのようなものらしいのですが、話の途中でぽんと出てきたので何か知らない私は立ち止まって調べました。
台湾の先住民の神話や、言葉、境遇も多く書かれているために人名や神話、ものの名前が混ざることもしばしば。
しかし、この恐ろしくリアルな台湾文化の描写と、ファンタジーチックなSF要素が、虚構と現実の境界をいとも容易く曖昧にするのです。
初めの章は架空の南の島であるワヨワヨ島から始まります。
人々が原始的な生活を送っているワヨワヨ島から死の旅に出たアトレと、現実よりも少し未来の台湾。
話の主題は、人が海に流したゴミが、島となって元の場所に戻ってくるというものです。
コロナ禍でマスクの使用とポイ捨てが増えた昨今、海への流出が話題になりました。昨年からレジ袋が有料化されました。
とてもタイムリーな本と言えるのではないでしょうか。
自然界のバランスが崩れ、増え続ける災害。
土砂崩れ。地震。高波、津波。洪水。気候変動。
自然は冷酷である。
感情がない故に、これは復讐などではなく、ただ機械的な因果応報の結果なのです。
日本だって例にもれません。
タイトルにもなっている「複眼人」。
これは、その通り複眼を持った人ならざる人、精霊のような立ち位置の存在です。
制御しきれていると慢心していた人間に対して、許容の限界を超えて牙を剥く巨大な自然。
「複眼人」はそれをただ記録するだけ。
しかし、“どうにかして生きていくのが人間”です。
死に至るまで、それでも存在し続けていくのが人間。
環境問題改善が叫ばれるようになってから、どれだけたったでしょうか。
どれだけの人間が、どれだけ真剣に考えてきたでしょうか。
きっとこのままの状況が続けば、いつか日本にもゴミの島は流れ着くでしょう。
人が流し続けたゴミが島になったように、“塵も積もれば山となる“では、山となった塵しか見ることはできません。積もる前に払うことができた塵の成果は目には見えないけれど、積もれば山になっていたはずだと信じて払い続けるしかない。
そう考えれば、レジ袋有料化も、ストローも、理にかなった対処なのかもしれないと、ちまちまエコバッグをたたみながら考えました。
今回追うので精一杯だったところがあるので、二週目から本気で噛み締めることのできる本なのかなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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