下川太郎 | あまね設計

「普通で特別なもの」をつくる設計事務所、合同会社あまね設計代表 一級建築士 二児の父。…

下川太郎 | あまね設計

「普通で特別なもの」をつくる設計事務所、合同会社あまね設計代表 一級建築士 二児の父。 趣味は料理と日曜大工と裁縫。 何か不便を感じたときにモノを買うよりも、今あるものの組み合わせで何か作れないかと考えることが好きなひねくれ者。

マガジン

  • 家づくりの方法

    家を建てる方法の違いを偏見たっぷりに解説します。

  • コロナ後の住まいを考える

    「Withコロナ」という新しい時代に適した生活スタイルが生まれるだろうという前提で考えています。安心・安全で気持ちよく生活が出来る家をどうやったらつくれるか。 その方法を考え発信することが建築家である私たちの今出来ることだと思ったので、この連載を始めてみます。 何回分になるのかは全然分かりませんが、お付き合いいただければ嬉しいです。

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おぎやはぎがちょうど良い

突然ですが、おぎやはぎが建築デザイン的にちょうど良いということに気づいてしまいました。 尖りすぎず野暮ったすぎず、親しみを覚え愛されるデザインとは何ぞやということを日々考えています。その日々の研究から、格好良さと親しみやすさをグラフにすると、このようになることが分かりました。 ※下川独断と偏見調べ 線形は右肩上がりではなく、ある所から放物線状に急降下します。つまり、ある程度を超えた格好良さは急に親しみにくくなっていくのです。 格好良すぎる空間 これはフランスの建築家ジ

    • 何が自分に合っているかを知るのは簡単ではない

      不適切な比較例えば今日はラーメンが食べたいなと思って、お店を探すとします。 麺は細いか太いか、あっさりかコッテリかなどを考え、口コミ見たり写真を見たりして幾つかのラーメン屋を比較して決めます。 この場合の比較は、適切な比較だと言えると思います。 じゃあ、その横にあった洋食屋を選ばなかったのは何故か?といえば単にその時はラーメンの口になっていただけです。 あるいは、ラーメンが食べたいと思って探したのだけど、ハンバーグの写真を見たらやっぱりそっちが良いと思うこともあります。 そ

      • 木配りという気配り

        大工さんの加工場へ。 工場検査という名の社会科見学。 設計の意図は大工さんに伝わってるので、それを踏まえてどういった木配りをしたかを聞きました。 「木配り」というのは構造材を化粧として現しで使う場合に、どの木を使ってどの面をどちらにみせるかなどを決めること。 それは節が有るか無いかなどの見た目だけでなく、どちら側に反り易いかなども考えて決めるのです。 柱や梁は元々生えていた状態に近い状態で使うというのがセオリー。 つまり根っこに近い部分は下に、天に近い先の部分は上にす

        • 再生

          四季を感じるマンションリノベーション

          これは建築家の自邸です。 そう言うと、さぞかし特異な変わった家なのだろうと思われがちですが、これは良くある普通のマンションのリノベーションです。 ゼロから土地を探して新築することで自分の建築を存分に表現したいという思いはありますが、都内では中々その思いを完遂できそうな土地に出会うことも少ないものです。建築の魅力の大半は敷地によるものだからです。 リノベーションの場合、魅力の大半はその住戸がどこに向いているかによると思っています。 この物件は東西南の3 面に窓とバルコニーをもつマンションの角部屋。 風が良く通り、どの窓を開けても目の前に建物が無いのが最大の魅力です。 住み慣れた町で試しに探してみたら見つけてしまいました。職業柄、図面を見れば大体のことがわかります。これは良いはずだと思い内見し即決しました。 そろそろ家が欲しいねと言い始めてから1 カ月程度のことでした。 土地であっても建物であっても、不動産には二つとして同じものがありません。だから、出会ったらその時が買い時なのだと思っています。 その時のその物件の状態、その居住者の状況はいつも唯一無二です。与条件の中から理性的な工夫を沢山考えて選択することが設計の作業です。 ここでは広く住むということ、風が抜け太陽の動きを十二分に感じられるこの住戸のポテンシャルを活かし、可能な限り家族が集いやすい広いリビングをつくることに注力しました。 小さな住宅ですが、それゆえに随所に工夫を凝らすことも出来ました。 今までいくつかの住宅を設計してきましたが、自分で設計した家に住んだのは初めてのことです。 細部までちゃんと考えられた住宅に住むということがこんなに楽で楽しいものなのかと実感できています。(自画自賛ですね) そんな思いをお伝えしてみようと動画を作りました。 ご意見いただけるととても嬉しいです。

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        記事

          ミスをゼロにすることは出来ない

          人間はミスをするものだし、忘れるものです。 仕事における能力とは、 1.ミスを減らす工夫をし続けること。 2.ミスをした時にそのリカバリーが出来ること。 だと僕は思っています。 ミスをゼロにすることを目標にしてしまうと、 →ミスすることが怖くなる。 →怒られるから言わない。 →初動が遅れてリカバリー出来ない。 となりがち。 悪い知らせは、早く知らされなければならない。 ビルゲイツの名言だそうですが、その前にコルレオーネ家のルールだったと思います。(ゴッドファーザーpa

          ミスをゼロにすることは出来ない

          モノの値段のしくみ

          モノの値段の中には、そのモノを生み出すための直接的な費用と販売をするためにかかった間接的な費用があります。 建築工事で言えば、設計や施工に必要な材料費や直接人件費が前者。後者は広告宣伝費、間接部門の人件費や経費、企業全体の管理費です。 その割合は、会社の規模形態によってマチマチです。 言い換えれば、同じ金額を払っても、直接的にその建物に費やされるお金は違うのです。 正直に言えば、設計と施工そのものにかかる直接的な費用が多い建物の方が質の高い建物です。 ※豪邸が良い建物と

          モノの値段のしくみ

          同じ顔で良いですか?

          同じような部屋、同じような家、同じような街。 初めて訪れた街なのに、どこかで見たような家が建ち並んでいて、どこかで見たような風景に出くわすことがあります。 その街には歴史とか名産とかの独自の文化があるはずなのに、ほかの街と同じ雰囲気。 住宅も同じです。 住んでいる人はみんな違うのに同じ家。同じ雰囲気。 もっと面白そうとか、楽しそうとか、そんな家が増えたほうが良いなと思っています。 ◇ ◇ ◇ 家づくりの方法第2章は、ハウスメーカーの営業があまり言わないことを中心に、

          同じ顔で良いですか?

          住宅を手に入れる方法

          家を手に入れる方法は何通りもあります。  ・すでに建っているものを買う方法  ・決まった形のものを買う方法  ・一から好きなように作る方法 などなど。 沢山の方法があるにも関わらず、家はハウスメーカーで買うものだと思っている方が多くいらっしゃいます。設計事務所の仕事がどんなことなのかもあまり知られていません。 家を建てるのであれば、あなたにとって一番良い方法で建てるべきです。 ハウスメーカーに頼むことが誰にとっても良い訳ではなく、また、設計事務所に頼むことが誰にとっても

          住宅を手に入れる方法

          男の人生は父親がいなくなってから始まる

          父の葬儀が終わってひと月ぐらい経った頃、Oさんに言われた。「男の人生は父親がいなくなってから始まるものだ。」と。 「自分もあなたぐらいの歳に父親を亡くし、ある先輩にこの言葉をもらった。その当時は理解出来なかったけど、今は本当にその通りだと思う。自分はこの言葉にずいぶん助けられた。だから今のうちに伝えておきます。」と。 以来ふとした時にこの言葉が頭をよぎり、光を与えてくれている気がする。 世の中の理をすべて解き明かすとまではいかないけれど、それに近い感覚を与えてくれる不思

          男の人生は父親がいなくなってから始まる

          いつかまたあの国で紅茶を飲みたい

          写真を整理していたら昔の旅行の写真を見つけました。 それらを見ていたら記憶がどんどん蘇ってきたので旅行記のようなものを書いてみました。 約8500字あるので15分~20分ぐらいかかると思います。 お暇なときにどうぞ。 ぬめりとした汗鉄格子の中には窮屈そうに6.7人の男が立っていた。暗くて表情が読めない。 ドルを渡す。餌付けではない。両替だ。 タカが返ってくる。当然足りてない。 これ足りてないんだけど。と突き返す。 すると数人で話し合った後、面倒くさそうに紙幣を自分の胸ポ

          いつかまたあの国で紅茶を飲みたい

          白痴化の先の未来は明るいか。

          『未来少年コナン』(宮崎駿の初期のアニメーション。工藤真一ではない)において、超磁力兵器が最終戦争にて用いられ大地殻変動が起きて多くの都市が海中に没したのは2008年。もう12年前。 今、日曜深夜にNHKで再放送しています。 オススメです。 『2001年宇宙の旅』では原子力ロケットディスカバリー号の人工知能HAL9000が反乱を起こしている。それももう19年前のこと。 もしかしたらコロナ禍というものは、20世紀のSF作家が想像しきれなかった新たな形の苦難なのかも知れない

          白痴化の先の未来は明るいか。

          コロナ後の住まいを考える 第5回

          だいぶ間が空いてしまいました。 コロナ後(withコロナ)の住まいを考える。 忘れていませんよ。続けますよ。また増えてますし。 第5回は玄関編のつづき 靴の脱ぎ履きと土間についてです。 玄関には靴を履いたままの下足ゾーンと靴を脱いだ後の上足ゾーンがあります。では下駄箱はどこに置くのが良いでしょうか? 下足ゾーン(例えば土間)に下駄箱がある場合 ◎靴は常に土間内にあるので上足ゾーンに汚れを持ち込まない。 ×下駄箱に靴を取りに行くために靴を履く必要がある。→スノコを敷くこ

          コロナ後の住まいを考える 第5回

          緑のロッコールで写らないものを撮りたい

          建築の設計をしたら竣工時に写真を撮ります。写真家さんにお願いすることもあるし、自分で撮ることもあります。 ポスター印刷するような品質でなければ、素人でもそこそこの機材があればそこそこの写真は撮れてしまいます。 でも違うんだよなーと思い続けて十数年。 綺麗に写すことと雰囲気を伝えることは同じ写真では出来ないのだろうなと感じています。 minolta AUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4 通称「緑のロッコール」 柔らかい写真が撮れる不思議なレンズ。 このレンズを

          緑のロッコールで写らないものを撮りたい

          【免許皆伝?】広い空間をつくるための極意を解説します。

          建物の設計をするうえで、空間をつくるうえで目指すこと、 それは「広い空間」です。 え、そんなこと?と思われるかもしれませんが、実はそれが一番大事なのです。 広い空間とは、正確に言えば「広く感じる空間」のこと。 単純に大きな面積を用意すれば当然大きな空間は作れます。しかし大きい空間と広い空間は必ずしも同じではありません。 「大きい」というのは、面積や体積が物理的に大きいこと。「広い」というのは拡がりを感じることです。 限りあるスペースを有効利用し、出来るだけ「空間を広く感

          【免許皆伝?】広い空間をつくるための極意を解説します。

          あるコガネムシの数奇な一生

          拙宅の長男は現在5歳。男の5歳児といえばもう底抜けにアホでサルでどうしようもない。 基本的に余計なことしかしない。興味を惹かれれば何かの途中であろうと一目散に突っ走る。協調性ゼロ。 お友達の女の子に叱られてシュンとなるけど、すぐ忘れて同じことを繰り返す。学習能力ゼロ。 訳の分からない言葉を叫んで常に何かと戦っている。みんなを守っているらしいが、むしろジャマ。 そんな何の役にも立たない小さなヨッパライみたいなもんが我が家に棲み着いているのですが、彼には幼虫アンテナが付いてい

          あるコガネムシの数奇な一生

          自分の肩書を自信をもって答えたい

          建築家?建築士?設計者?設計士?設計家? これらすべて建築設計の職業の言い方です。なぜこんなに沢山あるのか。 今まで僕は自分のことを「建築士」や「設計者」と名乗ってきました。でも今は思いなおして「建築家」と言っています。 大多数の方にとってはどうでもよいハナシ。 でも自分が何と名乗るのかを決めることで見えてくることがあるかもしれないと思い書いてみます。 ※2020/7/25改訂:TOP画像に色付け 「建築家」はキライだった。 「建築家」という言葉の響きってなんだか偉

          自分の肩書を自信をもって答えたい