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外部教育が一切ない会社に嫌気がさして、大企業に転職した話

あまり公にしてはいないのですが、僕のキャリアのスタートは実は(今でいうところの)ベンチャー企業 or スタートアップ企業でした。
書籍や講演のプロフィールでは大企業名だけを出していますけれども。
とはいえ、僕が入社した時点でその会社の社員数は200名を越えており、拡大期にあるスタートアップと呼ぶのが適切かもしれません。

入社3年目、20代中盤の頃に僕は大企業に転職し、そこからはいわゆるJTCと呼ばれる企業を渡り歩いてきたのですが、今回は大企業に転職した背景の一つを語ります。


1.この記事を綴ろうと思ったきっかけ

ところで、今回この記事を綴ろうと思ったきっかけに触れます。
まずは、以下の僕のSNSの投稿記事をご覧ください。

沢渡のSNS投稿より

これは僕が先日、東京・五反田で開催した五反田バレー×組織開発のワークショップで、あるスタートアップ企業(とはいえ社員数は200名越えている)に勤務する社員から聞いたお悩みの声を受けての発信です。

彼女いわく、専門能力は高く仕事はデキるのだが、チームワークを乱す若手社員がいる。彼は未経験者や自分と考えが異なる人に対し攻撃的な言動や行動を繰り返し、彼女を含む周りの人のメンタルをゴリゴリと削り、モチベーションやパフォーマンスを下げるとのこと。マネージャーも彼に行動を改めるよう指導しようとしない。

「今後、彼のような人が会社から評価されるとしたら私は辞めます……」

ため息交じりにつぶやく彼女。
(実際、この手の組織クラッシャーな人物が育成されずに野放しかつ管理職登用でもされようものなら、組織のモラルが崩壊し始めます)

彼女のこの悩みを聞き、僕は自分が彼女と同規模のスタートアップ企業に勤務していた時に感じたモヤモヤ、および大企業に転職した動機(の一つ)を思い出しました。

2.「お願いだから、管理職や先輩社員を教育してください! 僕たち若手にも研修受けさせてください!」

翻って、僕がかつて勤務した拡大期スタートアップ(200名規模)での話。
その会社は目先の売上至上主義で、若いうちからさまざまな仕事での経験はできた良さはあったものの、気合・根性・長時間労働の3拍子揃った昭和型組織カルチャーが色濃かった会社

管理職も、気合・根性・長時間労働と野生の勘だけで数字を出してきた人が登用される有様。

そんな管理職が、目先の成果を出すのには長けているが、中長期戦略など考えられる訳がない。組織・チームや人のマネジメントなんてできる訳がないのです。
なぜなら、まともにマネジメントを経験したことも、マネジメントの教育を受けたこともないのですから。

残念ながら、僕が最初に勤めたスタートアップ企業では、管理職も先輩社員も基本的な仕事のマネジメント(優先度付け、タスク管理、任せ方ほか)さえおぼつかず、人の育成はおろか、基本的なITスキルなどもない。あ、その悲惨な有様は以下の過去記事でも綴りました。

業務改善など仕事を効率良く進めるための取り組みもしようとしないし、やっても評価されない

非効率な仕事のやり方と、「言った」「言わない」のトラブルで無駄な長時間労働が常態化しメンタルもフィジカルも削られる。そんな状態でした。

「お願いだから、管理職や先輩社員にマネジメント研修受けさせてください!」
「僕たち若手にも、外部研修を受けさせてください!」

僕は強くこう思いました。

駆け出しのスタートアップはさておき、100名を越えるような大きな企業かつ健全な組織であれば、管理職登用時および管理職登用後も定期的にマネージャー研修のようなものが施されて然るべきでしょう。

外部の専門家による、世の中のトレンドも交えた汎用的かつ体系的なマネジメント教育を受け、試験などをクリアした人が管理職に登用される

また「ダイバーシティ」「コンプライアンス」「ブランドマネジメント」「ネガティブ•ケイパビリティ」などの新しい社会通念や概念はもちろん、「コーチング」「チームワーキング」「ファシリテーション能力」「プロジェクトマネジメント」「リスぺクティング行動」「問題解決能力」「対話力」などのコミュニケーションスキルや思考スキルをインプット(およびアップデート)する外部研修も施したほうがいい。
これらの知識やスキルは、いわばビジネスパーソンとしての基礎であり、組織を運営する立場の人間として、およびビジネスパーソンとして知らないでは済まされないものもあります。

かつ誰か他者から言われないと学ばない、存在や必要性にさえ気づかないものも多々あります。
(たとえばダイバーシティマネジメントや、コンプライアンスについて自ら必要性に気づいて学ぶ人がどれだけいるでしょうか。会社から言われて知った人が多いのでは?)

健全な組織は外部研修などの仕組みを活用し、マネージャーを登用およびアップデートし続けているのです。
管理職登用時の研修だけでは不十分。その後のアップデートも重要です。たとえば10年前に管理職登用された部長がいたとして、管理職登用時点での知識や常識でマネジメントし続けると、悪気なく時代遅れかつ的外れに。結果周りも本人も不幸になります)

3.全社員講演/階層別研修には、コミュニケーションコスト・リスクを現場(当事者)に押し付けない意義も

とはいえ、若手だった僕が管理職や先輩社員に進言できる訳がありません。

「お願いですから、マネジメントを勉強してもらえませんか?」
「コミュニケーション能力のトレーニング受けてください」

こんなことを相手に面と向かって言える人がどれだけいるでしょうか。

繰り返されるすれ違いや、ギクシャク。当事者同士で指摘し合い、解決しようとするのもストレスフル。要は、育成されない管理職や社員を放置することは、コミュニケーションコストやリスク(関係がギクシャクしたり、どちらか一方がストレスを抱える)を現場に押し付けていることに他ならないのです。この見えないコストとリスクが、組織をじわじわ蝕むのです。

問題がある人に対して「あなたは間違っている!」「行動変えてくれ!」とはたとえマネージャーであってもメンバーに言いにくいでしょう(一歩間違えると、ハラスメント扱いされるリスクもありますから)。

そうではなく、「こんな行動は良くない」「こんな行動をココロがけましょう」と組織および第三者が本人を含む全員に伝えて振り返りと改善を促すほうが悪者を作らず、角も立たない
外部研修や階層別研修には、その意義もあるのです(と言うより、この意義が極めて大きいです)。

会社が育成に投資し、全社員講演や階層別研修などで最新のマネジメントのトレンドや考え方、能力をインストールする。そうして全体の意識や行動の底上げをする。自らの問題に気づいてもらい、行動や言動を改めてもらう
(それでもダメなら個別指導する)

残念ながら、この手のマネジメントのトレンドや仕事の進め方、コミュニケーションの仕方などの汎用スキルやリテラシーは、自助努力では限界があります。

「会社は学校ではない。甘えるな」
「勉強は自分でするものだ」
とかそんなレベルの話ではない
のです。

自助努力任せでは人によって、学んだ/学んでいないのバラツキが生まれます。基本的なコミュニケーションの仕方、仕事の優先度のつけ方などは、全員が同じ認識やスキルを持っていないと足並みが揃わない。そうすると、チームワーキングやチームとしてのパフォーマンスに影響が出ます。
我流の乱立による、社内対立(または「管理職によって言うことが違う」などが発生することも)を生むことも。これまた無駄なストレスやコミュニケーションコスト

そもそも自助努力任せ、自己研鑽任せでは、各自が必要性を感じたり関心をもったスキルや知識しか身につかない。誰かに言われないと気づかない(かつチーム内外での共創や、社会と健全に共生するために必要な)スキルや知識は、やはり組織が全員に強制インストールするべきなのです。

過去に目先の成果を出し続けて管理職登用された人たちが、何のマネジメント教育も受けず、アップデートもされずじわじわと組織を壊す。
組織にとっても、周りの人たちにとっても、本人にとっても不幸です。三方悪し!

全員が同じ認識でものごとを進められるよう、インフラ整備の意味もこめて会社が全社員に育成の投資をしましょう。

でないと組織としての成長も頭うちになります。
人の能力も考え方もアップデートされないのだから当然ですね。
(僕が勤務していたスタートアップも、その後業績ガタガタになりました)

4.大企業に就職し、外部研修を受けられる同級生が羨ましかった

僕はスタートアップ企業に勤務していた当時(かつ、上記のモヤモヤとストレスを抱えていた当時)、大企業に就職した同級生を羨ましく思いました。

大企業に就職したかつての仲間は、会社の投資で(かつ業務時間内で)新入社員の頃から数々の外部研修を受けて専門スキルはもちろん、ものの考え方や仕事の仕方の汎用(一生モノの)能力をグングンと高めている。なかには10万近くするものもあり、当時の僕のような薄給の若手が自己負担で受講するハードルは高い。

一方で、僕は通勤時間や週末に自助努力で本でも読んだり、資格の勉強でもするのが関の山。

「ヤバい、このままではビジネスパーソンとしての能力に大きく差がつく」

僕は怖くなりさえしました。

会社は成果を出す場、とはいえ日々の仕事で学べることには限界があります。この会社でマネージャーになっても、気合・根性・野生の勘のやり方しか身につかないこの会社の管理職のようになりたくない

将来より良い仕事をするためにも教育を受けたい、受けさせてほしい。そう思い、僕は危機感を募らせました。

(いまや人的資本経営の文脈で、上場企業の中には人の育成にさらに投資している企業もあります。育成機会の差はますます広がる一方。非上場企業だから人材育成に投資しないは通用しないのです)

そんな思いが募り(理由はそれだけではないですが)、僕は大企業に転職しました。

そこから良質な外部研修をたくさん受けることもでき、マネジメントの素養も身につけつつ、大きな仕事も任されるようになり成果も出しました。
育成に投資してくれた会社にいまでも大変感謝しています。

5.汎用的な能力は若いうちに身につけておかないと、後で苦労する

ところで、僕は大企業に転職した当初ものすごく苦労しました

前職(スタートアップ)ではそれなりに成果を出し、会社は評価していてくれたものの、それで調子に乗ってしまっていたのでしょうか。自分のやり方が転職先でも通用すると思った。

ところが、そもそも仕事の組み立て方、コミュニケーションの仕方などの基本がなっていない。野生の勘やセンスと管理職の感覚による評価だけの世界で生きてきたのだから、そりゃそうなります。

管理職や先輩からめちゃくちゃ言われ、初年度の僕の評価は最低。軽いメンタル不調にさえ陥りました。
(その後きちんと教育を受け、なんとかリカバリーできました(成果を出せるようになりました)が)

僕は声を大にして言います。
大企業/スタートアップに関わらず、仕事の基本的な進め方、コミュニケーションの仕方、マネジメントの仕方など汎用的な知識やスキルをなるべくキャリアステージの早い(若い)うちに身につけておきましょう

そうしないと、キャリアの中盤以降で僕のように要らぬ苦労をすることになります。

汎用的な基礎能力こそ早いうちから身につけておくべし‼️
大きくなって(組織が大きくなって、の意味も含みます)から、マジで大変な思いをするから。

これは僕の大きな学びであり、若手の皆さんに、そしてすべての企業経営者に伝えたいです。

人材育成に投資してください。研修受けさせてあげてください(日々の仕事で学べ。自分で学べだけではダメなんです)。人的資本経営です‼️

でないと組織としてどこかでガタが来るのはもちろん、あなたの会社の社員が後で要らぬ苦労をしますし、それがゆくゆく御社の採用力にも影響を及ぼすでしょう。かつての僕のような理由で、大企業に転職していく人も実際少なくないです。

「あの会社の人はさすがだ」
「あの会社を卒業した人は優秀だ」
と思われるか、
「あの会社の人は、仕事の進め方がちょっとね……」
と残念に思われるか。その差は長い目で見ても大きいです。

スピード感も大事ですが、雑なマネジメントや、雑な仕事の仕方が染み付いてしまうと後でほんとうに苦労しますし、組織外の人との丁寧な共創もできない人たちになります。

せめて社員数が100名を超えたら、定期的な外部研修を全社員や管理職に施すなどしましょう。
個人の自助努力と、たまたまセンスの良い人頼みのマネジメントでは脆弱です。
人事組織も立ち上げ、機能させていきたいところです。組織を正しくアップデートしていくためにも。

6.会社に「外部研修を受けさせてくれ」と進言しよう

もし、あなたがかつての僕のようなモヤモヤや危機感を持っていたら。それを解決したいとしたら、道は2つです。

(1)「外部研修を受けさせてくれ」と進言する
上長との1on1や、社員意識調査などの機会で「外部研修を受けさせてくれ」「外部研修を管理職や社員に実施してくれ」と伝えてみましょう。
きちんとした説明をすれば会社(経営)も必要性や合理性を理解し、人材育成に投資するようになるかもしれません

(2)大企業に転職する
それでもダメなら、外部研修など人材育成に投資してくれる大企業に転職しましょう。前述のとおり後になればなるほど、要らぬ苦労をしますから。たとえあなただけが自助努力でスキルやリテラシーを身につけても、周り(管理職含む)の意識が低ければ良い仕事はできないですし、良質な実績も身に付きません。なぜなら仕事とは、あなた一人でするものではなく、チームでするものだからです。良質な仕事の体験を増やすためにも、育成に投資しない近視眼的な組織にはとっとと見切りをつけましょう。

そういえば最近、人材育成を含む従業員体験(EX)の体系図をリリースしました。EXジャーニーマップ。宜しければ「良い組織づくり」にご活用ください。講演もします。

以下は、僕たちの紹介です。