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”成長出来ないと不安" 会社辞める若者たち

2023年1月24日の朝のニュース番組で、標記の特集が組まれていました。

大企業を辞めた若手社員のストーリーが印象的かつ個人的に共感度が高かったです。

一行で要約するなら「本業以外の間接業務や雑務が無駄に重たすぎて、ここで自分が正しく成長できるのか不安に感じた。だから辞めた」。

この番組では、社内会議の準備のために毎回片道2時間かけて会場に移動~会場の事前セットアップ・リハーサルなどに追われて疲弊する、その方のエピソードが紹介されていました。

たまのイベントやセレモニーならさておき、しょっちゅうそのようのな仕事で時間とカロリーを奪われるのはさすがにつらいでしょう。
(それを本業にしている職種ならさておき)

この若手社員のモヤモヤと危機感、僕はものすごくよく分かります

「面倒だから、やりたくない」ではないのです。「若手社員のわがままだろう」で片付けてはなりません。わがままなんかではありません!

「やらなくても良い仕事」「やめられる仕事」で貴重な時間と労力を溶かされ、自分がスポイルされてしまう(プロとしての成長機会が奪われる)ことに大きな危機感を覚えるのです。

たとえばその社内会議、オンラインMTGにすれば準備の稼働は格段に減るでしょう。準備そのものを社外の専門会社にアウトソースする方法もあります(大企業なら資金の余力もあるでしょうから)。

ところがその組織のネイティブ(原住民)の人たちは、その仕事をなくそうとしない。「いままでそうしてきたから」「新人がやる仕事だから」で思考停止している。

このように、やめられる間接業務や雑務に時間を溶かされている間に、スピード感のある他の企業、身軽なスタートアップ企業などに就職(または転職)した知人は、ぐんぐんと本来業務の経験を積み重ね、プロとして成長していく。それに較べて自分は……

その焦燥感と危機感が、「いままでの慣習重視」の過去ベクトルな企業に対する若手のエンゲージメントを下げるのです。

僕も新入社員の頃、当時所属していた部門に同様なモヤモヤを感じました。

男性社員だけ深夜残業あたりまえ、サービス残業当たり前。年長者が帰らないと、若手は先に帰りにくい雰囲気(僕は、付き合いきれないと思い割り切って先に帰っていましたが)。明らかに労基法違反なのですが、当時は悪い意味で緩かったものですから。

その残業の様子ときたら……スペックの古いパソコンに、人差し指で一字一字ピコピコとキータッチしてメール文章を書いている主任。効率や生産性の発想は一切なく、ブラインドタッチも習得しようとせず(会社による研修なども一切おこなわれず)……。

やる気を見せるために、毎晩夜遅くまで非効率な仕事で消化試合を繰り広げる人たち

「ここでは正しく成長できない」
「ここの文化に染まったらヤバイ」

そう思い、僕はExitしました。1㎜も後悔していません。

さて、皆さんの勤める組織は大丈夫でしょうか?
自組織(自社)は大丈夫でも、相手(関連部署、お取引先、顧客など)を重厚長大な間接業務や雑務でスポイルしていませんか? 無駄な仕事を転嫁し、相手の本来価値創出機会、プロとしての成長機会を奪っていませんか?

人生100年時代、時代遅れの仕事のやり方しかできない人になってしまう、プロとして「自分がなにものか」を説明できない人になってしまうのは、いわば自分経営リスクです。
定年後、会社に買いたたかれ、良い条件で雇用延長されない人になってしまう。好条件での転職も出来ない人になってしまう。

ビジネスパーソン1人1人の死活問題です。

ほんとうに、なくせる間接業務や雑務や雅な慣習でつぶし合っている場合ではないのです!ビジネスパーソン個々の生きる力と、国力低下につながる由々しき問題です。

次の絵(健全な組織のバリューサイクル)をご覧ください。僕が経営者向け、部門長向けの講演などで繰り返し主張しているスライドです。

健全な組織のバリューサイクル

注目して欲しいのは、中央の「本来価値創出」の箱。

あらゆる企業、あらゆる職種、あらゆる部門やチームが「自分たちの本来価値は何か?」を問う。

・自分たちの期待役割(経営からの、社内他部署からの、顧客からの、お取引先からの、メンバーからの……etc.)は何だろう?
・自分たちは誰にどんな価値を提供する人たちだろう?
・そのために、どんな能力や経験、および変化が必要だろう?
・他業界や他社や他地域の同じ職種の人たちは、どんなやり方をしているだろう?

組織の本来価値を問うための観点

自分たちの仕事のやり方が、独りよがりになっていないか? 時代遅れになっていないか? を組織(会社単位、部単位、チーム単位など)内省し、正しくアップデートしていく。

これを続けていけば、間違いなくその組織、職種、チームのファン(理解者、共感者、協力者)を創る力、すなわちブランド力が上がり、関わる人たち(メンバー、社内関連部署、お取引先、顧客など)のエンゲージメントも高まります。様々な人たちと、つながって課題解決や価値創造できる組織と人に変わっていきます。

僕はこのバリューサイクルの世界観に共感し、このサイクルを回す組織を増やしていきたい。このサイクルを回す組織が増えていけば、日本はもっと強くなれる。そう思って、日々さまざまな活動をしています。

以下の写真は、大企業のある部門からのご依頼で実施した「部門の本来価値言語化ワークショップ」の様子を撮影したものです(2時間×4回)。

部門の本来価値言語化ワークショップの様子
部門の本来価値言語化ワークショップの様子

管理職とメンバー全員参加で、自分たちの本来価値、取り組むべきこと、やめること、などを話し合い言語化する(僕はファシリテーター役)。その意思決定プロセスにメンバー自らが参画する経験も重要です。議論を通じた、メンバー相互理解(経歴、特性、考え方、思いなど)が進み、チームビルディングの効果も大きいです。

こういう取り組みが、部門単位、チーム単位でも広がっていくといいなと思っています。皆さんがファシリーテータになって、やってみるのも良いですね。

健全な組織のバリューサイクルの詳細は、書籍『バリューサイクル・マネジメント』で説明しています。

また、健全な組織のバリューサイクルを自組織で回していけるようになるためのプログラムとして『組織変革Lab』(企業間オンライン越境学習プログラム)も展開しています。

バリューサイクルの全体像を僕が解説しつつ、個別のテーマ(例:ダイバーシティ、エンゲージメント、ブランドマネジメント、DX、業務改善……)を全12回(12か月)の講義で、バリューサイクルの文脈で意味づけして解説、かつディスカッションと質疑をひたすら繰り返します。

まずは個人レベルで、組織(社内)への影響力、巻き込み力を高めていきたい方は、新刊『話が進む仕切り方』を参考にしてみてください。

 ……と、いろいろ綴りましたが、やり方はどうあれ健全な組織のバリューサイクルを回す組織が1つでも増えて欲しい。僕はそう思っています。

・日本の時間当たり生産性、OECD38カ国中27位(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」)
・仕事に対するエンゲージメント、調査28ヵ国中日本は最下位(KeneXa High Performance Instituteによる調査結果)
雑務にかける時間の割合は、日本の35.5%が調査対象国の中で最大(Adobe社「未来の働き方に関するグローバル調査」2021年)
幸福度ランキング、日本は56位(国連”World Happiness Report 2021”)
⇒日本は調査6項目のうち、「自由度」と「寛容さ」が上位10カ国と比べ低い

日本の惨状

悲しいじゃありませんか、切ないじゃありませんか。

過去ベクトル、内向き(社内向け)の煩雑な間接業務や雑務で、疲弊している場合ではありません。「仲良く苦しむ」を押し付け合っている場合ではありません。自分たちの本来価値は何か? 研ぎ澄ませ、半径5m以内からでも組織の景色、働く景色を変えていきましょう!

立場を超えて、組織を超えて、フラットに議論しアップデートしていきましょう! 過去の同調圧力や抑圧から自由になっていきましょう。キーワードは『解放』。

僕はまだ日本を諦めたくない。