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三児の父です。 子供たちが成長して、ようやく多少の余裕ができたので、しばらくはリハビリ…

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三児の父です。 子供たちが成長して、ようやく多少の余裕ができたので、しばらくはリハビリがてら、気楽さを忘れずにつらつら綴っていきたいです。

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  • amanatzの毎週ショートショートnote

    #毎週ショートショートnote参加作品のまとめです。

  • amanatzの他サイト・コンテスト応募作品

    あちらこちらのコンテストに応募した創作を保管しています。

  • 自作曲(MIDI)

    若かりし頃に作った曲たち。

最近の記事

残り物には懺悔がある【毎週ショートショートnote】

「どうしてそんな悲しい瞳をして謝るの?」 「申し訳なくて。私なんて、美人でもないし、取り柄もないし――」 私はただ、残っていただけ。 誰からも狙われなかっただけの、大した価値なんてない、残り物の女だ。 「そんなことないさ。君が残っていてくれて、僕は嬉しかったよ。二人で助け合って生きていきたいんだ」 彼は私を優しく気遣ってくれた。 ありがとうと笑おうとした、そのとき―― 「いたぞ、生き残りだ!」 「一人も逃がすな!」 敵軍の声と発砲音が響いた。 「くっ……僕はもうダ

    • ときめきビザ【毎週ショートショートnote】

      一流のアンドロイドは、人間の感情を人間以上に理解しなければならない。 だから先進国で安定した雇用を望むメイド志望アンドロイドは、豊かな感情を備えているか、入国前に厳しく審査される。感情適正試験、通称「ときめきビザ試験」に合格する必要があるのだ。 しかし、私はアンドロイド教育のプロフェッショナル。私の教え子たちは、高い合格率を誇る。 何も難しいことをしているわけではない。 ただ、この私という一人の完成された人間の姿を見せ、そこから大いに学んでもらう、というだけのことだ。 合

      • モンブラン失言【毎週ショートショート】

        「ほら、お前の好きなモンブランだぞ」 私が凹んでいるとき、一緒に暮らす恋人は、いつもモンブランを買ってくる。 「……わざわざ買ってこなくていいのに」 あ、この言い方はよくなかった。 そう気づいたところで、一度放たれた言葉は戻せない。 「なんだよ。元気出してほしいから、好物がいいと思ったのに」 途端に不機嫌になる彼。 仕方ない。ちゃんと説明しないと。 「あのさ、私が前に好きだって言ったのは、さ。市販のじゃなくて、……あの日、あなたが作ってくれたモンブランなんだよ?」

        • 今週のお題の「黒幕甲子園」、過去にほぼそのまんまのものを書いてます。 自分の書いてきたコメディの中でもお気に入りの一本なので、よろしければご覧ください。 https://monogatary.com/episode/320576

        残り物には懺悔がある【毎週ショートショートnote】

        • ときめきビザ【毎週ショートショートnote】

        • モンブラン失言【毎週ショートショート】

        • 今週のお題の「黒幕甲子園」、過去にほぼそのまんまのものを書いてます。 自分の書いてきたコメディの中でもお気に入りの一本なので、よろしければご覧ください。 https://monogatary.com/episode/320576

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          124本
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          3本
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          5本

        記事

          見たことがないスポーツ:おべっカバディ【毎週ショートショートnote】

          「いいですね、その表情! 負けないぞ、という気迫に溢れていて、真剣さ力強さが伝わってきますよ」 陣地へ攻め入ってきた相手チームの選手が、ぺらぺらと絶え間なくこちらを褒めたててくる。 『おべっカバディ』 なんという変わった競技なのだろう。 「すごいな、隙がない。足を止めざるを得ないですよ――」 競う相手をとにかく褒め続けつつ攻めるなんて、頭が混乱しそうだな……などと考えていたら、急に素早く切り込まれ、鮮やかにタッチされてしまった。 「素晴らしいひとときでした、またお手合

          見たことがないスポーツ:おべっカバディ【毎週ショートショートnote】

          復習Tシャツ【毎週ショートショートnote】

          「はじめは、どうするんだっけ? ……そうそう、おそでを折り返すんだよね」 私が笑顔で促すと、しおりは無言無表情のまま、ウサギの絵が描かれたお気に入りのTシャツを折り始めた。 「じょうず、じょうず。そしたら、首のほうから……ほら、ウサギさんバイバーイって」 あとはもう一度たたむだけというところで、しおりは急にふいっと隣の部屋へ行ってしまった。 あらら。 この前はできそうだったんだけど、まだ早かったかな。 いや、ウサギがいなくなっちゃうような言い方がよくなかったのかも。

          復習Tシャツ【毎週ショートショートnote】

          友情の総重量【毎週ショートショートnote】

          急に高熱が出て部屋で苦しんでいたら、死神が現れた。 「お前への恨みの声が呪いとなって降りかかっているのだ」 何だよ。そんな恨まれる覚えはないぞ。 「いいや、大量の声が届いているぞ。聞くがよい」 死神の手にした水晶玉に、良く見知った友人らの姿が代わる代わる映される。 (……あいつ、いつも生徒会長の隣を独占しやがって) (幼馴染だからって、学校一の美人と仲良くしすぎだろ) (万死に値する!) ことごとく逆恨みじゃねえか! あいつとはただの幼馴染でしかないのに。 しかも

          友情の総重量【毎週ショートショートnote】

          てるてる坊主のラブレター【毎週ショートショートnote】

          「この傘、使いなよ」 そう言って自分の傘を私に持たせ、昇降口からどしゃ降りの雨の中へと走り去っていった先輩に、心を奪われたんです。 口下手だから、感謝の気持ちは手紙にして傘と一緒に渡そうと思って、書き始めました。 でも、どんどん気持ちが溢れ出してきて――最終的にはほとんど好意を告げるような文章になってしまって。 こんなの、とても渡せない。書き直さなきゃ。 でも、いっそ、勇気を出してみようか…… 迷っているうちに、また雨の日がやってきてしまいました。 傘がないからきっと困っ

          てるてる坊主のラブレター【毎週ショートショートnote】

          三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

          「はい、もちろんご希望通りに」 「後は俺がやっておくよ」 「いいよ、全然怒ってないからさ」 いつもニコニコ笑顔を絶やさず、どんな要求も理不尽も笑って受け入れていれば、誰からも好かれるし頼られる。 三日月のように口角を上げてさえいれば、人間関係なんてすぐに構築できる。 「……でも、そんなファストパスみたいな方法でいいの?」 「急にどうしたの? 大丈夫だよ、好きでやってるんだし」 「本当に?」 「だって、笑顔でいれば、みんなも自分もハッピーで」 「違う。私にはわかるよ」 「…

          三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

          蒸し返しダンサーに【毎週ショートショートnote】

          「ぼく、ダンサーになりたいんだ!」 「また何を言い出すのかと思ったら。この前は漫才師になりたいって言ってたのに」 「母さん、そんなこと蒸し返さないでよ。今度こそ本気なんだ」 「厳しい世界だぞ? お前じゃせいぜい、宴会芸の裸踊りくらいが関の山だろ、はっはっは」 「父さんまで馬鹿にして……いいよ、勝手に一人で目指すから!」 「――なんてことがあったよね」 「おいおい、相当昔のことを蒸し返してくるじゃないか」 「だってまさか、お前が本当にこうして世界的なダンサーになるなんて、思わ

          蒸し返しダンサーに【毎週ショートショートnote】

          お返し断捨離【毎週ショートショートnote】

          「幸せになりたいのなら、断捨離するのです。不要なものに囲まれていると、あれが無くなったこれが足りないと、不足や不満が生まれる。本当に必要なもの以外すべて捨て去ることが、満たされた人生を送る近道なのです」 もっともらしい言葉をさも自信たっぷりに説くと、面白いように人は釣れた。 「最低限の所持品以外は処分しましょう。……我々への寄附としてね」 信者はどんどん増え続けた。 もはや何もせずとも、断捨離されたお金や資産が集まってくる。 豪遊に豪遊を重ねても、まるで遣い切れない。そ

          お返し断捨離【毎週ショートショートnote】

          据え膳の猫ビーム【毎週ショートショートnote】

          甘夏ワイルドキャッツ。 連敗続きで、優勝争いの灯はもう風前の猫チーム。 最下位転落目前の猫ホームゲームで、左翼手の根古屋は、じっと機をうかがっていた。 彼は、その実力と公然の猫ネームから、ワイルドキャッツの将来を担う選手として活躍を期待されていた。 しかし、入団後すぐに大怪我。以降はずっと二軍、安全な猫ファームで調整してばかりだ、猫に小判だなどと揶揄された。 この日、数年ぶりに一軍に復帰した根古屋の元に、大きな当たりが飛ぶ。 根古屋は球をキャッチし、猛然と猫ホームに向けて

          据え膳の猫ビーム【毎週ショートショートnote】

          突然の猫ミーム【毎週ショートショートnote】

          かわいらしい猫の動きや耳に残る音楽を切り貼りした「猫ミーム」動画が、ある日突然トレンドを席巻し始めた。 しかし、まさか自分の娘までハマるとは。 「そんなに面白い?」 「なんか楽しいし、つい観ちゃうんだよね」 「でも、きみは『猫』がどんな生き物なのか知らないだろ?」 猫はもう百年ほど昔に絶滅した。 娘はもちろん、盛り上がっている誰も、生身の猫を見たことはない。 「別にいいじゃん、かわいいしさ。でも、なんで絶滅しちゃったの?」 「どうも、火星の環境に適応できなかったようだな

          突然の猫ミーム【毎週ショートショートnote】

          レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

          「あたしのこと、どう思ってる?」 「大事に思ってるよ。気の合う友達として」 それ全然嬉しくないから! このままじゃあたし、負けヒロイン確定だから! ここは『レトルト三角関係』を使おう。 即席で手軽に恋のライバルを作り出し、急展開で危機感を煽れば、きっと彼の心も固まるはず! そうと決めたら、あたしは即『王子様系男子味』を購入した。 「今日は転校生を紹介する」 「初めまして……あっ、先生。席はあの子の隣がいいな」 いかにもな美青年が、教室に入るなりあたしを見初めてきた。

          レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

          洞窟の奥はお子様ランチ【毎週ショートショートnote】

          暗くて狭い洞窟を深く深く潜っていくと、突然、視界が開けた。 広い空間になっているその最深部には荘厳な様式の神殿が建っており、中には一人の老いた神官がいた。 「よくぞたどり着きました、この『オコサマランチ神殿』に――」 ……はるか昔、異世界から転生してきた「勇者」が魔王を倒し、世界を救った。その勇者は、かつてこう話したと伝えられている。 「私だって、もう二度と手に入れられないものはあるよ。例えば……『お子様ランチ』とか、ね」 それ以来、「オコサマランチ」という言葉は『入

          洞窟の奥はお子様ランチ【毎週ショートショートnote】

          デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】

          「課長には先日の業務でとてもお世話になったから、予算千円くらいで、感謝が伝わるものを」 『甘いものは好まれない方なので、ビターというよりは高カカオ系が良いのでは。また、爽やかな香りがお好きですので、オレンジピールをふんだんに入れましょう』 「なるほどね。それと、同期の男子たちの分にはあんまりお金かけたくないんだけど。勘違いされても困るしね」 『ならば、粒チョコを一人数点ずつで。ラッピングは少し派手めにしつつ、アーモンド入りにすれば貧相にはなりませんし、手軽につまめるから

          デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】