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三児の父です。 子供たちが成長して、ようやく多少の余裕ができたので、しばらくはリハビリ…

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三児の父です。 子供たちが成長して、ようやく多少の余裕ができたので、しばらくはリハビリがてら、気楽さを忘れずにつらつら綴っていきたいです。

マガジン

  • amanatzの毎週ショートショートnote

    #毎週ショートショートnote参加作品のまとめです。

  • amanatzの他サイト・コンテスト応募作品

    あちらこちらのコンテストに応募した創作を保管しています。

  • 自作曲(MIDI)

    若かりし頃に作った曲たち。

最近の記事

三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

「はい、もちろんご希望通りに」 「後は俺がやっておくよ」 「いいよ、全然怒ってないからさ」 いつもニコニコ笑顔を絶やさず、どんな要求も理不尽も笑って受け入れていれば、誰からも好かれるし頼られる。 三日月のように口角を上げてさえいれば、人間関係なんてすぐに構築できる。 「……でも、そんなファストパスみたいな方法でいいの?」 「急にどうしたの? 大丈夫だよ、好きでやってるんだし」 「本当に?」 「だって、笑顔でいれば、みんなも自分もハッピーで」 「違う。私にはわかるよ」 「…

    • 蒸し返しダンサーに【毎週ショートショートnote】

      「ぼく、ダンサーになりたいんだ!」 「また何を言い出すのかと思ったら。この前は漫才師になりたいって言ってたのに」 「母さん、そんなこと蒸し返さないでよ。今度こそ本気なんだ」 「厳しい世界だぞ? お前じゃせいぜい、宴会芸の裸踊りくらいが関の山だろ、はっはっは」 「父さんまで馬鹿にして……いいよ、勝手に一人で目指すから!」 「――なんてことがあったよね」 「おいおい、相当昔のことを蒸し返してくるじゃないか」 「だってまさか、お前が本当にこうして世界的なダンサーになるなんて、思わ

      • お返し断捨離【毎週ショートショートnote】

        「幸せになりたいのなら、断捨離するのです。不要なものに囲まれていると、あれが無くなったこれが足りないと、不足や不満が生まれる。本当に必要なもの以外すべて捨て去ることが、満たされた人生を送る近道なのです」 もっともらしい言葉をさも自信たっぷりに説くと、面白いように人は釣れた。 「最低限の所持品以外は処分しましょう。……我々への寄附としてね」 信者はどんどん増え続けた。 もはや何もせずとも、断捨離されたお金や資産が集まってくる。 豪遊に豪遊を重ねても、まるで遣い切れない。そ

        • 据え膳の猫ビーム【毎週ショートショートnote】

          甘夏ワイルドキャッツ。 連敗続きで、優勝争いの灯はもう風前の猫チーム。 最下位転落目前の猫ホームゲームで、左翼手の根古屋は、じっと機をうかがっていた。 彼は、その実力と公然の猫ネームから、ワイルドキャッツの将来を担う選手として活躍を期待されていた。 しかし、入団後すぐに大怪我。以降はずっと二軍、安全な猫ファームで調整してばかりだ、猫に小判だなどと揶揄された。 この日、数年ぶりに一軍に復帰した根古屋の元に、大きな当たりが飛ぶ。 根古屋は球をキャッチし、猛然と猫ホームに向けて

        三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

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          117本
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          5本

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          突然の猫ミーム【毎週ショートショートnote】

          かわいらしい猫の動きや耳に残る音楽を切り貼りした「猫ミーム」動画が、ある日突然トレンドを席巻し始めた。 しかし、まさか自分の娘までハマるとは。 「そんなに面白い?」 「なんか楽しいし、つい観ちゃうんだよね」 「でも、きみは『猫』がどんな生き物なのか知らないだろ?」 猫はもう百年ほど昔に絶滅した。 娘はもちろん、盛り上がっている誰も、生身の猫を見たことはない。 「別にいいじゃん、かわいいしさ。でも、なんで絶滅しちゃったの?」 「どうも、火星の環境に適応できなかったようだな

          突然の猫ミーム【毎週ショートショートnote】

          レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

          「あたしのこと、どう思ってる?」 「大事に思ってるよ。気の合う友達として」 それ全然嬉しくないから! このままじゃあたし、負けヒロイン確定だから! ここは『レトルト三角関係』を使おう。 即席で手軽に恋のライバルを作り出し、急展開で危機感を煽れば、きっと彼の心も固まるはず! そうと決めたら、あたしは即『王子様系男子味』を購入した。 「今日は転校生を紹介する」 「初めまして……あっ、先生。席はあの子の隣がいいな」 いかにもな美青年が、教室に入るなりあたしを見初めてきた。

          レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

          洞窟の奥はお子様ランチ【毎週ショートショートnote】

          暗くて狭い洞窟を深く深く潜っていくと、突然、視界が開けた。 広い空間になっているその最深部には荘厳な様式の神殿が建っており、中には一人の老いた神官がいた。 「よくぞたどり着きました、この『オコサマランチ神殿』に――」 ……はるか昔、異世界から転生してきた「勇者」が魔王を倒し、世界を救った。その勇者は、かつてこう話したと伝えられている。 「私だって、もう二度と手に入れられないものはあるよ。例えば……『お子様ランチ』とか、ね」 それ以来、「オコサマランチ」という言葉は『入

          洞窟の奥はお子様ランチ【毎週ショートショートnote】

          デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】

          「課長には先日の業務でとてもお世話になったから、予算千円くらいで、感謝が伝わるものを」 『甘いものは好まれない方なので、ビターというよりは高カカオ系が良いのでは。また、爽やかな香りがお好きですので、オレンジピールをふんだんに入れましょう』 「なるほどね。それと、同期の男子たちの分にはあんまりお金かけたくないんだけど。勘違いされても困るしね」 『ならば、粒チョコを一人数点ずつで。ラッピングは少し派手めにしつつ、アーモンド入りにすれば貧相にはなりませんし、手軽につまめるから

          デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】

          行列のできるリモコン②【毎週ショートショートnote】

          二人の頭上には、満天の星空が広がっている。 「あっ、流れ星」 あなたの声のトーンが一段上がった。 「ほら見て、次から次へと流れていくよ」 私は思わず微笑む。 付き合って間もない頃、初めてのデートの帰り道で、偶然遭遇した流星群。 ぎこちなく繋いでいた手を、急にぶんぶん振ってはしゃぎ出したあの夜と、全く一緒だったから。 「願い事しなきゃ」 「何をお願いするの?」 「『これからも、きみとずっと一緒にいられますように』だね」 「あら。……じゃあ、私もそれで」 「おっ、嬉しい

          行列のできるリモコン②【毎週ショートショートnote】

          行列のできるリモコン【毎週ショートショートnote】

          「ついに完成したぞ、『人間操縦リモコン』が」 僕たちは、超・科学部。 天才発明家である部長が、物騒な試作品を理科室の机に置いた。 「操作者が頭で思い描いたとおりに他人を動かせる。製品化すれば欲しがる客で行列間違いなしだ」 「部長、その性能が本物なら、ヤバすぎて売れないと思います」 「そうか? それでも視察や取材は殺到して、理科室の前には行列ができるだろうさ。よし、早速実験だ。そのリモコンで私を操ってみたまえ」 「えっ、……いや、実験台は僕が」 「何を言う。全ての発明は自ら

          行列のできるリモコン【毎週ショートショートnote】

          ツノがある東館②【毎週ショートショートnote】

          「桃太郎の館には鬼が棲んでいる」と、ここいらの者はみな噂しとる。 鬼が島で鬼どもを退治した桃太郎は、持ち帰った金銀財宝で、あのとおり鬼が島の見える海沿いに立派な御殿を立てての。 東西南北に別館があり、北館は犬、西館は猿、南館は雉にそれぞれ与え――そして海側には、ひときわ豪華な東館を建てた。そこには、鬼退治から戻る道中で出逢ったという妻を住まわせとるそうじゃ。 当初は愛ゆえと思っとったが、あの東館は地形的に外部から隔絶されとって、まるで牢獄のようでの。 そして桃太郎は、本殿

          ツノがある東館②【毎週ショートショートnote】

          ツノがある東館【毎週ショートショートnote】

          「ここがあの未解決事件『十一角館の殺人』の舞台になった東館です」 「不可解な謎が多すぎて迷宮入りになったという、あの事件か」 「ええ、そうです」 「十一角館というから十一角形なのかと思ったが、違うんだな」 「ええ、十一ツノ館ですからね」 「海側で見えにくい東側の屋根に、ツノみたいな突起が十一個あるのか。なんでこんなデザインに」 「この館を建てた主人が、事件の被害者で――」 「真相は闇の中、か」 「……」 「現場の海側の部屋は密室だったそうだが、トリックはまだ――」 「未解明で

          ツノがある東館【毎週ショートショートnote】

          アメリカ製保健室③【毎週ショートショートnote】

          「なんだこれは!」 校長が保健室に入ると、床がすべて畳になっていた。 「オー、イカガデスカ? ワビサビデスヨー」 日本が大好きなあまりアメリカからやってきた、新任の養護教諭のジョン先生だ。なお、頭にはちょんまげが結わえられている。 「ジョン先生、畳だったら侘び寂びでは……ちょっと、その恰好は?」 「モチロン、ニンジャデス!」 「本来は白衣なのに、よりによって黒……先生ね、保健室を間違った和のイメージにしてないで、仕事を」 「チャントシテマスヨー、コウヤッテ」

          アメリカ製保健室③【毎週ショートショートnote】

          アメリカ製保健室②【毎週ショートショートnote】

          「ご覧ください。これが自由の国アメリカの魅力を詰め込んだ保健室です!」 「はあ」 「気軽に入りやすい出入口のデザイン。リラックスしくつろげる、自分らしさを出せる空間。子どもたちの人権も尊重するアメリカらしさを見習って、生徒ファーストのオープンな場所にしましょう!」 「あの……アメリカアメリカって、アメリカが自由の象徴だった時代もあったのでしょうけど、今は違いますよね。『憧れるのはやめよう』なんて名言が生まれたのだって、もうだいぶ前のことですよ?」 「で、でも……」

          アメリカ製保健室②【毎週ショートショートnote】

          アメリカ製保健室【毎週ショートショートnote】

          「失礼しま……うわっ」 「何を驚いてるの、ボーイ?」 保健室の扉を開けて、金髪バニーガールのお姉さんがいたら、そりゃ驚くって。 「……あ、あなたは?」 「レッスン以外のシーンでもイングリッシュにタッチしてもらおうってコンセプトでやってきた、ニュー養護ティーチャーよ」 怪しすぎる。説明も、英語も。 「なんでそんな恰好で……?」 「イングリッシュなムードをプロデュースするため、本場ラスベガスのスタイルにしたの」 いやここ学校なんですけど? 「フェイスがレッドッドね、大

          アメリカ製保健室【毎週ショートショートnote】

          ドローンの課長【毎週ショートショートnote】

          「まったく、あの課長ときたら」 「ずいぶん不満そうだね」 「だってよ、あくせく働く俺たちに上から目線で指示だけして、後は暇そうに眺めてるだけじゃないか」 「まあ、管理職ってだいたいそういうものだし……」 「それに『無理に業績を伸ばそうとしなくていい。乱高下せず留まることが最も難しいんです』なんて、やる気を削ぐこと言うし」 「……きっと、実感のこもった言葉なんだろうね」 「お前、あんな浮わついたやつの味方するのかよ」 「確かにふわふわ掴みどころがないけどさ、動くときはきっちり動

          ドローンの課長【毎週ショートショートnote】