ドローンの課長【毎週ショートショートnote】

「まったく、あの課長ときたら」
「ずいぶん不満そうだね」
「だってよ、あくせく働く俺たちに上から目線で指示だけして、後は暇そうに眺めてるだけじゃないか」
「まあ、管理職ってだいたいそういうものだし……」
「それに『無理に業績を伸ばそうとしなくていい。乱高下せず留まることが最も難しいんです』なんて、やる気を削ぐこと言うし」
「……きっと、実感のこもった言葉なんだろうね」
「お前、あんな浮わついたやつの味方するのかよ」
「確かにふわふわ掴みどころがないけどさ、動くときはきっちり動くし。それに、入社前は相当な修羅場を潜ってきたって話でさ」
「そうなのか？」
「何でも、軍隊上がり、それも敵地へ特攻する部隊にいたとか」
「えっ」
「『世の中、平穏が一番だ。誰かが使い捨ての駒になるのはもう御免さ』って言ってたな」
「……なら、一日中地べたを這いずり回る、俺たちの労働環境も改善してもらいたいね」
「そりゃ難しいだろ。何しろ俺たち、ルンバだからなあ」