マガジンのカバー画像

鉱物備忘録

77
今まで集めてきた鉱物についてただ語るだけのエッセイ。
運営しているクリエイター

記事一覧

No.76 パイライト

No.76 パイライト



十二面体や六面体の小さなパイライトの結晶がボール状の塊になっている標本だ。芸術作品であれば傑作と称賛されるであろう見事な一品である。
今回のようなボール状のパイライトはなんとなく欲しいなぁと思っていた。しかし情報を得る頃には売り切れてしまうぐらい人気が高く、なかなか手に入れる機会がなかったのだ。
2019年の6月。私は初めて「ミネラルマーケット」という鉱物イベントへ足を運んだ。このイベントでは

もっとみる
No.75 ヘミモルファイト

No.75 ヘミモルファイト



ヘミモルファイト。
通常は霜のような無色の鉱物なのだが、今回の個体のような水色で丸々としたものもあり人気が高い。宝石としても水色のものがメジャーなようだ。
2019年の東京ミネラルショー。
私は水色で丸々としたヘミモルファイトを探していた。
この年の東京ミネラルショーはお買い得品が多かったものの、目新しいものは少ないと感じていた。その証拠にヘミモルファイトを含むお目当ての鉱物のほとんどが見つか

もっとみる
No.74 ヘリオトロープ

No.74 ヘリオトロープ



ヘリオトロープ。
通称「ブラッドストーン」
濃いグリーンのカルセドニーの中に赤いジャスパーが斑点状に混ざったもので、人類が初めてお守りとして使用した石の一つである。赤いジャスパーが血飛沫の跡に見えるため「ブラッドストーン」という通称がついたのだが、この個体は血の感じがなんか薄い。
一緒にくっついていたタグには「水に濡らすと血の色らしさが増す」と書いてあったので試してみたが、色が鮮やかになっただ

もっとみる
No.73 ベニトアイト

No.73 ベニトアイト



高級感のあるロイヤル・ブルーと品のある輝きが印象深いベニトアイトのルースだ。大きさは米粒ほどしかないが大きさ以上の存在感があり、凛とした強さがある。
ベニトアイト。
この鉱物はダイアモンドを凌ぐ希少石として有名だ。
市場に出回ればダイアモンドよりも高額で取引されることが多い。
このルースも小粒であるにも関わらず1万円以上の値段がついていた。
何故底まで希少なのか?
ベニトアイトは大粒で産出しに

もっとみる
No.72 セレスタイト

No.72 セレスタイト



和名は「天青石」。その名の通り澄んだ青が清々しいセレスタイトだ。
セレスタイトは硬度が低く割れやすい上に、日光で退色しやすい性質がある。そのため結晶は綺麗なのだが宝石としてカットされることはほとんどない。だがやはり結晶が美しいので鉱物標本として高い人気を誇っており、鉱物イベントでは99%確実にセレスタイトの原石を見かける。
そんな美しい薄青が特徴的なセレスタイトだが、これを炎の中にぶち込むと炎

もっとみる
No.71 スペサルティンガーネット

No.71 スペサルティンガーネット



小麦色に輝く美しきスペサルティン・ガーネットだ。中に入っている気泡のようなインクルージョンもなかなか味があって良い。
スペサルティン・ガーネット。実はこの宝石を取引する際「Fanta or Cola ?(ファンタとコーラ、どちらがいいですか?)」と聞かれるらしい。明るめのオレンジなスペサルティン・ガーネットがほしければ「ファンタ」で、その逆に暗めのオレンジブラウンであれば「コーラ」なのだそう。

もっとみる
No.70 アポフィライト&プレナイト

No.70 アポフィライト&プレナイト



この標本はとある鉱物店のくじ引きにて、最下賞の景品にされていたものだ。当時くじ引きで見事に外した私は最下賞の景品を物色し、偶然にもこの標本を発見した。
標本のタグには「プレナイト」と表示されている。
だがどう見てもプレナイトではない。明らかにアポフィライトだ。
しかし、タグは「プレナイト」と主張している。
おかしい。
考えてもキリがないので店員さんに「これ、アポフィライトですよね?」と聞いてみ

もっとみる
No.69 ペリドット

No.69 ペリドット



インクルージョンはあるが透明度が高く明るい若葉色の高品質なペリドットの原石だ。品質だけ見れば十分宝石になりうるレベルの原石である。
しかし、どうやら小さいペリドットは採掘されてもそのまま捨てられてることが多いようだ。アメリカのとある場所ではペリドットの原石が小石のようにゴロゴロと採れるのだが、品質の良し悪しにかかわらず1センチに満たない原石はその場で捨てられるらしい。
これをツイッターで知った

もっとみる
No.68 アクシナイト

No.68 アクシナイト



透明度が高く質の良いアクシナイトだ。色が濃くてわかりにくいが光に当てるとブラウンの中にイエローの色味が出て、多色性を持っていることが確認できる。クラックから輝きがこぼれ、美しい。
個人的に、アクシナイトは鉱物界で一番カッコいいと思う。
まず、結晶の形がカッコいい。アクシナイトは結晶の形がカチッとした刃のようになりやすい。鋭く尖った結晶の形はシンプルでありながらも洗練されており、凛と澄んだ印象が

もっとみる
No.67 ダイアスポア

No.67 ダイアスポア



V字型が可愛い結晶だ。カラーチェンジ効果も持っておりLED灯では薄い青、白熱灯では可愛らしいベリーピンクになる。
ダイアスポアは「ズルタナイト」という名で流通することもあるが、個人的には「ダイアスポア」の方がカッコいいと思う。なのでここではダイアスポアという名称で扱うことにする。
ところで「ダイアスポア」という名称、何だか「ダイアモンド」と似てる気がする。
そこで関連性を調べてみたのだが、結論

もっとみる
No.66 ハイアライト

No.66 ハイアライト



ハイアライト。和名は「玉滴石」という。
その名の通り水滴をそのまま固めたような見た目をしている石で、今回の個体も水のようにうるうるしている。ものによっては流水がそのまま固まったかのような見事な標本もあり、鉱物コレクターとしては憧れの品である。
これは2019年の東京ミネラルショーで買ったものなのだが、商品名としては「エレクトリックオパール」という名で売られていた。調べてみるとハイアライトはオパ

もっとみる
No.65 グロッシュラー・ガーネット

No.65 グロッシュラー・ガーネット



キラキラバチバチに輝くグリーンのルース。
少しインクルージョンはあるがそれを打ち消すほどの輝きがある。
実はこれ「グロッシュラー」という種類のガーネットなのだ。
「え?ガーネットって赤色じゃないの?」
と思う方も多いと思うが、実はガーネットは意外とカラーバリエーションが豊富で、緑だけでなくオレンジやイエロー、変わり種だとピンクや無色もある。最近ではアレキサンドライトのようにカラーチェンジをする

もっとみる
No.64 スファレライト

No.64 スファレライト



少しインクルージョンはあるが見事なスファレライトのルースだ。太陽のような力強さがありつつ艶やかな怪しい魅力もある。
スファレライトは屈折率が2.4とダイアモンド並みに高く、その上分散光はダイアモンドやスフェーンを凌ぐ強さがある。そのため僅かな光でも豪華絢爛な輝きを味わうことができるのだ。
しかし、硬度は3.5〜4とかなり低くへき開も強い。そのためデニム地でこすると削れてしまうくらい脆い。その脆

もっとみる