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疲れてひたすら活字を追いたい木曜日には雑誌を読む。

木曜日っていちばんしんどい。
週の後半だから疲れもたまっているし、「あと1日頑張れば休みじゃん☆」と言われてもその1日が長いしましてや木曜日含めるとあと2日もあるし、心身ともにわりとギリ。
そんな木曜日を何とか生き抜き疲れ果てたので、何も考えずに雑誌を読むことにしました。『文學界』4月号、買ってきたよ~!

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今月の特集は「アナキズム・ナウ」。
アナキズム・・・?はて。

正直よくわからないのですが、とりあえず今日は何も考えず最初から読んでみようと思い、ページを開く。今回は特集が巻頭にあったよ~

「アナキズムは、権力による強制なしに人間がたがいに助けあって生きてゆくことを理想とする思想」(鶴見俊輔さん)…だそうです。

冒頭から、哲学や政治学、文化人類学を専門にされている方々3名の鼎談があり、そこで結構挑戦的な、というか名指し批判みたいなすこし尖った話の展開にお、おう、てなりながらも引き込まれる。国家無能!緊急事態に国家は介入しきれない!!自発的な相互扶助の精神を!という風に読み取った。

その後、短いエッセイがあり、6名の作家さんの短編小説が入る。
このリズム感がまたうまくて、テーマは割とわたしには難しいのであまり自分の感情を挟まず受け身でふんふん聞いている感じなのだけど、突如挟まる「文学」が面白くて仕方ない。ちょっと頭が固めになってきたところで急に挟まれる吉村萬壱さんの短編が本当に面白かった。国家と戦い、逃げてきた主人公とその妹が、理想郷のようなコミュニティで暮らしていこうとする話。ちょっとこわくて面白かった。他5名の作家さんの創作もどれも面白くて、さてアナキズムを理解したかと言われると、ちょっと自身はないのですが、肌で感じられる感が文学の面白さだと思った。


ところでアナキズム→相互扶助の文脈で、「例えば隣の席の人がペンを落としたとき、とっさに拾ってあげるのには何の見返りもない」みたいな例が出たのですが、見返り求めず助けあう、は一体どこまで出来るんだろうか。ペンは拾ってあげる。教科書忘れたら見せてあげる。階段を踏み外しそうだったら咄嗟に手を掴むかも。じゃあ子供が川で溺れていたら飛び込めるか?ここは想像がつかない。なったことないから分からないけど。とか境界を考えていたら思考がどっかいきそうだったので活字に戻す。

その後、インタビューなどが挟まれるのだけど、中に現役山伏の方へのインタビューがあって、これがものすごく面白かった。今まで生きてきて「山伏」って意識したことがなかったかもしれない。アナキズムとのつながりを紐解けていない気がするのですが(私の理解力の問題)、単純な興味として山伏へのインタビューが面白かったです。魔女狩りを彷彿させる山伏とか。キノコとる話とか。

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そんなこんなで120ページくらいの特集を読みきり、ここまで2時間くらい。

そこから短くて気の抜けるエッセイと、楳図かずお先生のインタビュー、そして田中慎弥さんが当てた西村賢太さんへの追悼文を読み、4月号は今日はこの辺で。(この、田中慎弥さんの追悼文がとてもよかった。「胸を打たれた」という表現がすごくしっくりくる。少し泣きそうになった。)
他にも三島由紀夫について語った鼎談とかも気になるので後日また読みます。

その後、お風呂に入ろうと思って、お風呂には前月号を連れて行きました。

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そう。まだ3月号ほとんど読んでいなかったのよね。
お目当ては完全に砂川文次さんの新作。芥川賞受賞作『ブラックボックス』面白かったです。鬱屈したどうしようもない今を反映した精神が整然と描かれているイメージでした。
砂川さんの最新作、読もう読もうと思って、でも200枚越えか、これは腰を据えて読みたいぞ、と思って先延ばしにしていた。4月号を楽しく読んだので、3月号も読もうと思ってお風呂へ。

でもいきなり砂川さんを読めるか?
よし、まずは芸人のAマッソ加納さんの『黄色いか黄色くないか』を読もう、と。

加納さんの文章は短いエッセイしか拝読したことがなかったのですが、この短編(中編?)、すごく面白く拝読しました。
さすが芸人さん、主人公は芸人ではないのですが劇場に携わる女性。
これはねー、とにかく芸人さんの描き方が素晴らしい!舞台ってかっこいい!動き出したらめちゃくちゃ輝いて、目の色とか息遣いとか感じるくらい、素敵だった。途中の、あの舞台のシーンでスパッと終わっても良かったくらい、興奮した。
だから、その後も物語が続き、かつ、主人公の家族のこと、友達のこと、同僚のことなど色んな要素が出てくるのはちょっとお腹いっぱいかも?と途中で思った。けど、段々各要素が混ざり合って、加納さんの筆がいちばん活き活きして見えるのはやっぱり舞台のシーンなのだけど、そこにうまく色んなものが調和していくのが心地よかったです。

たまたま今日、帰りの電車の中で、「純文学ってしんどい気持ちを描写するの多いしそこに惹かれているのも確かなのだけど、逆の「陽」な気持ちを、しんどさと同じくらいありありとした描写で描いた作品が読みたい」と思っていました。
苦しかったりちょっと引っかかったり、よくその感情を見つけてくれました!という繊細なところを拾うのが純文学の好きなところではありますが、同じくらいの繊細さで「陽」方向の感情に触れたいと思った。これはわたしがホッコリしたいとか笑いたいとかとはまた違って、ひたすら陽な気持ちの描写に触れたい、というだけ。

加納さんの描く舞台のシーンは、そんなわたしの気持ちに少しカチッとハマって、気持ちよかったです。
大分満足してしまったのでお風呂を出ました。結局。笑
砂川文二さんの新作は近いうちに必ず読みます。

わたしは毎月文芸誌を購読しているわけではないけれど、文學界は少し薄めだし(と言っても内容ぎっしり)特集も緩急も面白いし、手にとりがちです。

雑誌てついつい積んでしまうことも多いけど、今日は帰ってきてから4時間くらい、ずーっと活字を追い続けて、目は疲れたのですがなんか回復しました。ひとつの物語を追いかけるのも良いけれど、疲れている日はいろんな要素の詰まっている雑誌の活字を追いかけるのとても楽しいな、と思いました。

金曜日、頑張りましょー。

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