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#ショートショート

『誰も持っていないキーホルダーの作り方』

 まず油揚げを買ってきます。がんもどきでもいいです
 机の上に置きます。椅子の上でも構いません。
 後は認識するだけです。

「これはキーホルダーなんだ」と

 
 自由の女神?エッフェル塔?ちっぽけな作り物なんて要りません。実物そのものをキーホルダーにしましょう。なんならヨーロッパやアメリカ大陸をキーホルダーにする事だって可能です。
 この制作方法の素晴らしいところは、質量を持たない物もキーホル

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散文詩『言葉を段ボールに入れる』

散文詩『言葉を段ボールに入れる』

 引っ越しの前に言葉を整理しようと思う。
 美しい言葉は右の段ボールに、汚い言葉は左の段ボールに、時間が無い、さくさく入れていこう。その前に段ボールに書いておこう。「美しい」「汚い」。こうしておいて「汚い」に入れた言葉は、ごみの日に棄てればいい。ん?言葉って可燃ごみだっけ?ま、いい後で調べよう。
 
 ”愛していた”を右の段ボールに、”笑顔”もそして”口づけ”も。
 ”悲しみを手に取って迷う。中原

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散文詩『合金とアルミ』

散文詩『合金とアルミ』

 透明な箱に緑の文字が張り付けられているそのすぐ横で、僕は千円札を店員に渡しコンビニの喧騒に耳を傾けていたのだが、ふと、透明な箱の中で小山を築いている惨めなジャックポットに視線を取られ、そこに一枚の異質な硬貨を認め息を飲み、鼠のような笑みを口端に浮かべ「誰だこんなところにスロットのメダルをいれたのは?」と辺りを見渡しこそはしなかったが、X氏の後姿を脳裏に描いて、このメダルが――その見たような見ない

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散文詩『wash me away』

散文詩『wash me away』

 河原に腰掛け、集めた小石、端の方から一つ取っては、スナップ効かせて川面に投げる。
 失った友。
 去った恋人。
 亡くした親のことなどを想い。
 秘蔵の平べったい石コレクションを、夕陽で味付けされた赤スープに向かって、ひたむきに投げ続けていると僕は――

 石一つ投げるたびに僕は――自分の体積が少し失われていくかのような感覚になって――つまり僕は、石一個投げると、石一個分の僕が、川面を跳ねて跳ね

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(株)猫

(株)猫

「すべての猫は個人事業主である」

 社員を雇わず、一人すべてを担い会社を経営している。
 猫の経営姿勢から学ぶべきことは多い。一挙手一投足に無駄が無く、すべての行動が理に適っている。
 以前、猫の損益計算書を見た某大手商社の社長が、その利益構造の余りの素晴らしさに、腰を抜かし、以来猫背になってしまったというのは有名な話だ。

 誰です?「縁側でボンヤリして、あれはサボっているんじゃないか?」です

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『明日僕はザクに乗る』

『明日僕はザクに乗る』

「怒りは情熱に悲しみは優しさに変えろ」
 父が遺した言葉だ。母を亡くし男手で僕と妹を育てた父。働き詰め、体を心を壊し、作業中の事故で命を失った。アースノイドだった父は差別され続け、それは僕らにも及んだ。
 明日僕はザクに乗る。
  怒りを情熱に、悲しみを悲しみのまま抱いて。

 探るように掌を押し当てる。深緑の装甲冷たい。宇宙の温度が染み着いている。俺と同じだ。なぁお前、家族はいるか?俺はいる。

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落語詩『萼』

落語詩『萼』

えー毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席
紫陽花に一粒の露がありましてぇ
そいつが朝日を浴びてきらきらと輝いております
光沢のある透明とでもいいましょうか
空の色まねをしている紫陽花の萼をお座布に
落語家のように座っておりますとそこへ
一寸ばかりはあろうかという蝗がやってまいりました
だいぶ歳古い蝗のようで
気門からしゅーしゅーと息を漏らしながら
命からがらといった様子でよじ登ってきて
露のおります萼の上

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散文詩『筆影山』

 暗いアスファルトに目を凝らす。心が水筒の闇に同化してゆく、もはや2cm、遠足の目的地まで足りるはずもない麦茶。帰り路もあるのだ。笑いながら薄ら返事。異変に気付いた友が顔を覗き込む。
「お茶もう無いの?」
 水色の水筒を掴みシェイクするとちゃぷと弱弱しい音が一度したきり。
「まだ着いてもなぁのに、お茶がこんだけしかないど」
「飲みすぎじゃ」
 皆が笑った。僕にはそれが嘲笑に聞こえ――
「朝飯に塩昆

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散文詩『臨時ニュース―100年後の人類はジョン・レノンを聴いていない模様です』

散文詩『臨時ニュース―100年後の人類はジョン・レノンを聴いていない模様です』

 南アフリカで確認された新型コロナウイルスの変異種、ついに国内でも初めて感染が確認されました。

 じわりと皆既日食のようにじわりと、国内でも感染者が増えている新型コロナの変異種。それは正常であることを担保するギャンブラーの戯言。
 厚生労働省の発表によりますと、28日だけで明らかとなった変異種に、雲母の原石を砕けば飛び散るであろう色彩に憧れつ感染した人数は、曇天に映写(図2)。
 そのうちの1人

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