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花のお江戸の新喜劇【23/03東京旅行記①】
夜通し働いた寝ぼけまなこで旅の支度をして、電車に乗りこんでから、ポケットにイヤホンがないことに気づいた。
取りに戻るか無しで過ごすか逡巡した結果、ヨドバシ梅田に立ち寄って新品のワイヤレスイヤホンを購入。音にこだわりなんてないから安いもので良かったのに、案外お値段するのね。
手痛い出費やなあ、と新大阪に移動しながらペアリングを済ませ、新幹線のなかで製品保証書を放り込もうとキャリーバッグを開いたら、
手が喋りかけてくる【23/03東京旅行記②】
何の気なしに東京で過ごすことにした4日間。2日目は散歩がてら、行きたいと思っていた展示をめぐる。
新国立美術館の『ルーヴル美術館展 愛を描く』にはじまり、21_21 DESIGN SIGHT『The Original』、森美術館『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』に東京都立美術館『エゴン・シーレ展』とハシゴ。
ルーヴル展はいずれ京都に来ると知っていて我慢できなかった。わたしは常々デ
遠くの隣人、となりの異邦人【23/03東京旅行記③】
2日目の、つづきのはなし。
宿に帰ったらヤマちゃんがいて、娘の名前が決まったのだと教えてくれた。お嫁さんが入れたがっていた字と、ヤマちゃんがうんと悩みながら選んだ思いを詰め込んだ、いい名前だった。
その日はヤマちゃんの横に、朝きりりと描いたんだろう眉毛をふにゃふにゃにした50代くらいのお姉さんがいた。カナさん、と呼ばれていたから、なんとかカナさんか、カナなんとかなんとかさんなのだろうと思う。
ダイブ・イントゥ・ザ・タノシム【23/03東京旅行記④】
東京で過ごす休日の最後の日。江戸っ子のおいちゃんたちに教わったおすすめの銭湯をひとつでも多く制覇して帰ろうと、朝いちばんから寝起きのまちを歩いていく。
午後から雨が降り出す予報で、東の太陽も目覚め悪そうに薄雲をまとう。夜のかがやきとはうってかわって曖昧な色をした634mが、幽霊みたいに空に突っ立っている。鉄橋の端でおしゃべりしているふくよかな鳩たちの羽は、みごとに朝露をはじいていた。
15分ほど
直島ひとり旅、ぐるりをなぞる
「オレンジピッキング、グレープピッキング、あとはアスパラパッキング。」
閉店間際に滑り込んだ小さなレストランのカウンター越しに、彼女は指折り数えてみせる。おまじないみたいな語感が楽しくて、わたしもつい声を出して、口の中でことばを転がす。
オレンジピッキング、グレープピッキング、アスパラパッキング。
「そうそう。とりあえず動けたらいいんですよね、最初は」
彼女が頷くと、ハイライトカラーの入っ