不登校になるとは“宇宙に放り出されること”なんだと思う〜元不登校生から見た不登校の世界〜
想像してみてほしい。
目が覚めたら暗闇の世界にいることを。
体が自由には動かせない、宙に浮いているように軽いのに進みたい方向に進むことはできず、ただ、漂っている。
ふと、遠くに視点を向けてみる。
“地球”にいた頃では想像できないほどの星々が見える。
そう、ここで僕は宇宙に放り出されてしまったことを知る。
後ろを振り返ると昨日まで僕が存在していた地球が目に映る。
なぜ僕は息ができているのだろうと疑問を持つ。
口に手を近づけるとどうやらノズルが付いている。
ノズルの先には酸素ボンベが備わっていた。
ボンベにはラベルが付いていて、
「酸素量:大人になるまでの量」
と書いてある。
途端に僕は息が苦しくなった。
どれくらいの時が経ったのだろう。僕はか細い星明かりが照らす、この昏い世界で一人、息を殺して生きている。
帰ることは叶わない、誰ともつながれないこの世界で、「大人になる」その時までの命を、少しでも永らえさせようと息を殺して生きている。
死にたくなるくらいに孤独だった。
時たまに、宇宙を漂う人とすれ違うことがある。
すれ違う人によってその様相は大きく異なる。宇宙服を着ることができている人、カプセルに入っている人、帰るため・どこかに行くためのミニロケットを持っている人。酸素ボンベ以外、何も持たない僕にはすごく羨ましく感じた。
宇宙ステーションはフリースクールなのだと思う。
ごく稀にやってくるそれに乗っている人々は僕に向かって手招きしてくる。
「今まで大変だったね。でも大丈夫、この場所があるから。一緒に暮らそう。」
そうやって暖かな声をかけてくれる。
けど僕が帰りたいのは“地球”であって“宇宙ステーション”ではないのだ。
どれだけそこが暖かろうが、どれだけそこが楽しかろうが、どれだけそこが幸せだろうが、そこはどうしようもなく地球ではないのだ。
だから僕はそこに“居る”ことはあっても決っして“暮らす”ことはできない。
最近地球や他の惑星から声が聞こえて来る。
「宇宙にいてもいいじゃないか」「地球は閉塞感があるから宇宙で自由に過ごすのって素敵じゃん」「宇宙?いいじゃん、星綺麗に見られるし」
そういう話ではないんだ。
広大なこの宇宙で、独りでいることの孤独を。
いつ息ができなくなるかわからなくなる恐怖を。
同じ宇宙空間にいる人でも異なる“実力”を持っていることを垣間見る嫉妬を。
地球にいるあなたはわかるのでしょうか。
他の惑星にたどり着いて自由な生活を送っているあなたに何がわかるのでしょうか。
一体全体、僕に届くその声を話すあなたは誰なんだ??何をしてくれるっていうんだ。
そうやって叫ぶけどきっと誰にも届かない。だって宇宙には声を伝える空気がないのだから。僕は息を殺して残り少ない酸素ボンベを吸い続けるしかないのだから。
だから僕は切に願う。宇宙でも息ができることを、宇宙でも人と繋がれることを、宇宙でも声を上げることができることを。
そして願わくば、宇宙ではなく地球でも生きることができることを。
そんな世界がいつか叶うことを願って、僕は行動し続けたいと思う。
だから僕は”かつて宇宙にいた僕”としてこう叫びたい。
「今は宇宙に逃げたっていい。そうやって叫んだ責任を果たせるよう、地球でも生きることができる世界をきっとつくるから。」
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