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大人の絵本の読み語り会での素晴らしい出会いと時間

僕は現在、「おはなし ひまわり」という読み聞かせグループに所属し、毎月第四土曜日に図書館で読み聞かせボランティアをしています。

一方で、コロナ禍中の2020年から、不定期開催ではありますが、自分で企画して「大人の絵本の読み語り会」をやっています。
きっかけは、元保育士・現在キャリアコンサルタントをしている方が開いた、大人を対象とした絵本の読み聞かせイベント。
最初は一緒にやりたい!という想いでしたが、ちょっとしたことからなんとなくその方に嫌われてしまった‥ような感じで、誘ってもらえなくなりました。

「だったら自分で企画してやればいいじゃないか!」と思ったのです。

それは、ただ絵本を読み手が読んでハイ終わり、ではなく、人の意見を否定しない「安心安全の場」で、絵本を通じて感じたことをアウトプット・インプットできる催し。
大人も子どもも自分の想いや希望などを、自信をもって・自分の言葉で語れて、人の意見を丁寧に傾聴できる人が増える世の中にしていくことが大切だし、「絵本を通じた生涯教育の場」って素敵じゃないか、と思ったのです。

そして、「大人の絵本の読み語り会」に、“ガーベラ”の名を冠することも決めました。
幼児が中心のお話し会グループの名前が誰でも知っている「ひまわり」なら、同じキク科の花のガーベラはどうだろう?と。
ガーベラの花言葉は「神秘」「崇高美」「常に前進」「希望」など、悪い意味の花言葉が一つもなく、花屋さんにもたいていある親しみやすい花だから。


第1回はドラッグストア内の休憩スペースを借りて。
頑張って宣伝したので、たくさんの人が来てくれました。でもコロナ禍だったので、両親にこっぴどく叱られました。
「頼まれたボランティアでもないのに。あんたが感染源になったらどう責任取るつもりなの!?」と。

第2回は引きこもりや発達障害のお子さんを持つ保護者の方の自助会で。
お客さんは3人。

第3回は今年の3月、お世話になっているフリースクールの空きスペースを借りて。
お客さんはたった1人。

それでも、開催したそれぞれみんな楽しかったです。
「すごくよかった」と言ってもらえて。


そして僕は、自分の町の図書館に勤める一つ上の先輩に、
「全国の他の図書館でも開催されている『大人が絵本に触れる機会』を是非やりませんか?」と打診し、
「じゃあお試しでやってみましょう」
とようやくOKが出ました。
町の広報誌にも載り、コロナウィルス感染対策を万全にして、先着10名として参加を待ちました。
でも‥お客さまはなかなか集まりませんでした。
当日のキャンセルも出て、来る予定と言ってくれた方が減りました。

実は先日同じ会場で、地元ラジオ局に出演している絵本専門士の方が来られたイベントでは20人以上の人が集まりました。
僕が活動を始めるきっかけとなった元保育士の方のイベントは、Facebookだけの告知なのに、毎回10人以上の人が集まります。

やっぱりダメか‥
資格やネームバリューや実力がまだまだ足りないんだ‥。
会場の会議室でお客さんを待っている間、泣きそうでした。
逃げ出したくなりました。


でも事前に申し込んでくれた一人のお客さまは、時間通りに来てくださいました。
元小学校の先生という、80代の女性でした。
その方こそが最高のお客さまだったのです。

「最初に電話で話したあなたとは全然違うわね。こんなににこやかに生き生きしていて」と。
自閉症スペクトラム障害があり、初めての方と‥それも電話で話すとなると、吃りがちでスムーズに話せない僕。
最初、とても緊張しながらしゃべっていましたが、次第に安心感が生まれ、一冊読み終えるごとに、その方が本を手に取ってじっくり味わい、絵本や自分の人生にまつわることをたくさんお話ししてくれたことが本当に嬉しかったのです。


図書館に通うこともしていないし、孫もいないけれど、絵本というものにもう一度触れたくなったこと‥
小学校教諭時代、レオ=レオニの『スイミー』の単元をお勉強していた時の子どもたちの様々な想いのこと‥
今の世の中じっくりお勉強したり何かを丁寧に学ぶよりも、「即戦力」や「すぐに役立つもの」ばかりが求められることに違和感や危惧を感じていること‥
心の豊かさが大事なのだということ‥
自分にとっての幸せは「平穏な日常が続くことと知らない自分を発見できる喜び」だということ‥


しまいには僕も、自分に関することや悩みのあれこれ‥をその方にお話していました。

教員免許を取得していて、学童保育指導員やデイサービススタッフの経験があること
紙芝居のいろはは「のまりん」こと野間成之さんに叩き込んでもらったこと
うまくいかないことだらけだった人生だけど、発達障害の診断を通じて人生が前向きになっていったこと
絵本専門士や読み聞かせマイスターなどの資格はないけれど、絵本に対する気持ちと読み聞かせのテクニックはそんじょそこらの人には負けない!という自信があること

「すごくわかりやすくて上手な読み聞かせ」
「いい本を選んでおられますね」
とたくさん褒めていただけました。
まるで、久しく会っていない小学校時代の恩師の先生と話をしているかのように、あたたかな時間が過ぎて行きました。


とても楽しんでいただけたようで、
「本当に2時間があっという間だった、来てよかった、また次があったらよろしくお願いしますね」
とにこやかに笑って帰られました。
本当に感謝しかありません。


次回以降どのように続くかは分かりませんが、大人が絵本を楽しめるこのイベントは、自分のペースで大切に続けていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ラインナップは以下の通り。

◯『しろいうさぎとくろいうさぎ』
作:ガース・ウィリアムズ 訳:松岡享子

◯『もぐらのバイオリン』
作:ディヴィッド・マクフェイル 訳:野中ともそ

◯『雨ニモ負ケズ』
作:宮沢賢治 絵:柚木沙弥郎

◯声にだすことばえほん『初恋』
文:島崎藤村 絵:かわかみたかこ

◯ 『しあわせをさがしているきみへ』
作:エヴァ・イーランド 訳:いとうひろみ

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