私はどこ。

私は小さい頃からたくさんの経験をさせてもらってきた。だから小学校に入った時も周りの子に比べたら多くを見たり経験してきていたと思う。基礎をしっかり作ってくれた両親がいるから、目の前に出された課題や運動も、そつなくこなすことができた。その時から私は自分を過信し始めたと思う。 
何をするにしても普通より少しくできるくらいで飽きてしまって、習い事も長くは続けられなかったし、いちばんになることもなかった。いつも少し本気でやって5番くらい。だから本気を出せば3本の指に入れると思っていた。でもそれは違う。

中略:今の私の夢はオリンピックで金メダルを取ること。()

小学校のリレーで走った時、私は前の人を抜かすことができなかった。そして泣いた。号泣した。抜かされたわけでも転んだわけでもないのに泣いた。本気で走った。でもそこには叶わないものがあった。精一杯の努力無しに一定以上の成功など決してないことをここで知るべきだった。

それは中学生になっても高校生になっても付き纏うことになる。雰囲気だけはなぜか勉強ができそう。勉強なんて嫌いなのに。テストも平均点しか取ってないのに。イメージだけが先行して、そこに私はおろか誰もいない。挙句の果てに一年の最後クラスの投票では、総理大臣になりそうな人第一位の称号を与えられた。非常に不名誉である。こんな周りに勘違いされて素直な人間が育つわけもなく、周りのイメージとのギャップに一人で悩む。


追い打ちをかけるようにある事件が起こった。私は国語の中間テストで36点を取った。私だけで完結するには別にどうでもよかった。けど、クラス全員の前で30点台の人が呼ばれた。みんなが勝手に私を勘違いしていただけなのに、奇異的な目で見られるのを感じた。教室に戻ってくると、他に呼ばれた子たちは、『やばいじゃん!』と友達に言ってもらっていたが、私は誰からも一言も話しかけられなかった。今までずっと恐怖だった。本当の自分が世界にバレることの恐怖。みんなの思う私が私の表面で形成できている状態でいることが今まで心地よかった。私がバレたことなんて今まで一度もなかった。なのにバレた。孤独で、苦しくて、この時は今まで以上に逃げ出したかった。逃げた先でもう一度新しい性格を作り上げてリセットしてやっていきたいと思った。

でもまだ残念だけどそれはできない。周りを捨てられるほど私は重厚じゃない。だから周りの子に自分を曝け出してみようと努力することにした。        『私30点代とって、先生に呼ばれたんだよね、やばくない?』私が仲良いと思っていた子たちは、それも私らしいと笑ってくれた。その時は孤独から解放された。それで治ればよかった。丸い人間になれればよかった。でもやっぱり18年毎日塗り続けてきた外壁は想像を絶する分厚さだった。厚い皮を一枚ずつ剥がしていけばいくほど私が誰なのかわからなくなった。

だからもうやめた
髪をオレンジにした
全力で私を出すことにした
怖いかもしれない色のサングラスをかけて
着たい服を着る
どう、この私と話したい?
私遅刻するし
勉強とか、興味ないことに不真面目だよ
思ってないこと言いたくないし
空気読むの得意だけど
そんなの知らないよ


なぜオレンジにした。
人の頭の中に落ちている微かな気持ちも踏んでしまわないようにつま先で歩いているのに。
なぜオレンジにした。
言われてもいない言葉に悲しくなりながら必要以上に元気に笑って見せるのに。
なぜオレンジにした。
私が空虚な笑顔を見せてたのはオレンジに優しくない社会で生きている人たち。彼らに鼻から諦めてもらえることがじわじわと本当に嬉しかった。私が会いたいのは髪色の奥が気になるあなただし、髪型の奥に寄り添いたいあなた。人はあなたを守る。守り方はたくさんある。ツンケンな態度もそうだし、たくさんのピアスも、異様なリップも、真実は、何かを守るためにはそれしかなかったのかも知れない。

オレンジにした。


ずっと可愛いと思ってたの、よかったらインスタ交換してくれる?


だよね。





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