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【ショートストーリー】堕ちていく人間の哀しさに…

不自然な力に引っ張られ、
自分の意思とは反対の方向へ
向かっているような感覚。

もう嫌だと何度も思い、
誘われても逃げ帰ったり、
電話に出なかったり…。

それでも彼の家に行き、
彼の奏でる音楽を聴いたら
一緒にいてもいいと思ってしまった。

怒ってばかりいた自分を反省して、
寝ながらギターを弾く彼の横で
涙が出てきて困った。

その時私は恋をしたのかもしれない。
何も聞かない彼を不思議に思いながら、
このまま一緒にいたいと思った。

今まで自分を守ることばかり考えて
頭で恋愛をしてきたのに、
久しぶりに感情の赴くまま
一緒に眠ってしまった。
何の保証もなくただそうしたかったから。

堕ちていく人間の哀しさを
キミの話を聞いて実感し、
昨日までは人ごとのように思っていたのに、
今はとても切なくなる。

それでもキミは何も気にしていないようで、
飄々と生きている。
何もかもなくしても、笑顔でいる。
私はそこがすごいと思ったんだ。

ほんの何年かでも、
世界中で知られていた頃のキミを
今でも思っているファンもいる。

そんな人たちのファンサイトで見つけた、
人生の絶頂期のキミ。
私の知らないキミ。

頂点からどん底まで堕ちても
何事もなかったようにしていて、
まわりの人が自然にキミを助けたくなる。

落ち目の哀しいミュージシャンだと
決めつけていた自分を恥じた。

私はいつも急ぎ過ぎる。
すぐに結論の出ないこともあるのに…。

その時の自分が満足していればいいって、
やっとわかった。

自分が思っていたより私は、
ずっとキミを好きになっていたんだ、きっと。

©2023 alice hanasaki

※この作品はフィクションであり、
私生活とは関係ありません。

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