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灰汁詰めのナヴォー

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2019年7月の記事一覧

PPSLGR読書会 #PPSLGR

PPSLGR読書会 #PPSLGR

 エメラルド色のビルの間に挟まれているウェスタン風の2階建て木造建築、Bar『MEXICO』。ここは暴力、胡乱、軽率人死を愛するnote創作者、通称パルプスリンガーどもの溜まり場。30分ごとに死体がドアや窓から放り出される物騒な場所だが、今の雰囲気はなんか違う。

 今夜はここで読書会が開催され、貸し切り状態にある。

 店内ではに居る男女スーツ、ドレス、軍服、着物、、ローマ風ローブなど、思い思い

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恐怖のチューイングガムお姉ちゃん

恐怖のチューイングガムお姉ちゃん

「七月、高温と高湿度、満員電車の中でマチェーテで二本持ち無双乱舞したい季節!クソ熱いせいで軽率暴力思考が抑えられねえ!でも懲役が嫌!死刑がもっと嫌!アクズメさん、なんとかして!」という幻聴が聞こえた。暑さのせいかな。

 おっしゃー任せろ。脊髄が凍るほどのこわい話を教えてやろうじゃないの。おれの実体験だぜ。

 僕がまだ幼稚園児だった頃の話だ。

 熱心のクリスチャンだった両親は僕を教会ゆかりの幼

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樹薯粉可汗

樹薯粉可汗

 夜、大雨、埼玉県、秩父市近郊の山道。

 稲妻は夜空をよぎり、道路を僅かな間照らした。そのど真ん中に抜刀状態でモンゴルナイトメア跨がるタピオ・カーン。転倒し、ひしゃげた二台のトラック、斬殺死体、そしてあたり一面に散らばったタピオカ、タピオカ、タピオカ!何が起こっていたというのか、聡明なる読者諸君は既にお気づきであろう。タピオカブームが去り、大量在庫に悩んだ悪徳業者はタピオカを、夜に紛れて山野に不

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MEXICOは決して無法地帯ではない

MEXICOは決して無法地帯ではない

 ゴオオオオ……室外機が咆哮する路地を見たおれはこれ以上進むべきか一瞬躊躇した。ひんやりとした快適表通りと違い、壁沿いに室外機がびっしり並んで熱気を絶え間なく吐き出す幅7フィートの狭い道はまさに焦熱地獄。おれは腹を決めて、一歩あゆみだした。左右からの熱風がおれをイカジャーキー生産ライン上のイカみたいに炙る。汗は吹き出しては乾く。

 更に狭い路地裏に曲がり、少し進むと、急に空間が開放的になった。ビ

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ダピオ・カーン TEA END

ダピオ・カーン TEA END

「こないね」

 黒糖タピオカミルク専門点「枕牡丹」、15時。ティータイムにちょうどいい時間だが客人は一人もいない。一時間まえにUber EATSからの注文を消化してからずっとこの状態だ。一ヶ月前に行列がブロックを一周できた盛況はウソのようだ。

「あちぃー……」

 東京の夏、悪辣な太陽、湿度、温暖化、ヒートアイランド現象、昼過ぎても39℃の気温の中で出歩く者はあまりない。店の天井から伸ばした日

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タピオ・カーン TAPIOCA KNIGHT

タピオ・カーン TAPIOCA KNIGHT

「店長はん、売上が上々やな」

「ハイ、リンさんのおかげで」

 渋谷、ティーショップ「リットルフィニックス」、二階のオフィス。店長の児内(こない)とソファにもたれた男がローテーブルを挟んで対面している。男の名前は林玄聖(リン シュエン スン)、母体会社から派遣されたお目付け役……つまり台湾マフィア『凰門』の幹部だということだ。はたけた黒い唐装(中華風のシャツ)の中に覗かせる関羽と関勝の刺青、オイ

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