見出し画像

“敗者”の物語としての「大河ドラマ」

1963年4月7日、大河ドラマ第一作『花の生涯』がスタートしました。主人公は幕末の大老・井伊直弼。尊王攘夷派らを弾圧した「安政の大獄」で知られ、時代劇などでは悪役として描かれることが多いですが、実像はずいぶん違うようです。

彦根藩主の十四男として生まれた直弼。腐ることなく、禅・和歌・能・国学・居合・茶の湯を学び、その著書『茶湯一会集』を通じて「一期一会」という言葉が浸透したといわれています。兄の死により藩主となってからは、善政を敷き、領民からも慕われていたとか。

「桜田門外の変」によって志半ばで暗殺され、「勝者が歴史を作る」の言葉通り、悪役イメージをつけられた直弼。そんなある種の“敗者”が、大河ドラマの第一作であったという点は、もっと注目されていいのでしょう。というわけで、“敗者”が主人公のおすすめ大河ドラマを挙げていきます。

画像1

まずは、福島県会津出身の新島八重(綾瀬はるかさん)の生涯を描いた『八重の桜』(2013年)。幕末の動乱の中で、幕府への忠誠を貫いたために、賊軍の汚名を着せられた、会津藩の目線で描かれている所が新鮮。鶴ヶ城籠城戦では、八重が男装し、銃を持って新政府軍と戦う姿にグッときます。

「ならぬことはならぬのです」たとえ「悪妻」と呼ばれようが、“不義には生きない”会津の頑固女。維新後、米国帰りの新島襄の妻となった八重は、男尊女卑の世情の中、時代をリードする“ハンサムウーマン”となっていく。

次は、三谷幸喜さんが『新選組!』(2004年)に続いて脚本を担当した『真田丸』(2016年)。大坂夏の陣で、徳川家康の本陣まで攻め込んだ逸話で知られる、名将・真田幸村(堺雅人さん)の半生を描いた作品。幸村以外にも、多くのキャラ立ちした“敗者”が登場しては、黄泉へと去っていき…傑作。

戦国時代最後の名将・真田幸村。天才の父、秀才の兄の背を追いかけながら、故郷に住む家族と共に乱世を生き延びていくために、迷い、悩み、苦しみながら成長していく。大坂の陣で戦国時代最後にして最強の砦「真田丸」を作りあげるまでの人生を描く。

最後は、大河ドラマ史上初の一桁視聴率に終わった『いだてん〜東京オリムピック噺〜』。オリンピック絡みの二人の主人公だけでなく、女子スポーツの先駆者たち、いや日本人全員が“敗者”となりながらも、その想いは次の世代へと繋がれ、最後は1964年の東京五輪に結実する見事な伏線回収。傑作。

“日本で初めてオリンピックに参加した男”金栗四三と“日本にオリンピックを呼んだ男”田畑政治。日本が初めて参加し、大惨敗を喫した1912年のストックホルムオリンピックから、1964年に東京オリンピックが実現するまでの日本人の“泣き笑い”が刻まれた激動の半世紀を豪華キャストで描く!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?