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無職日記#12 60歳の母に腕相撲で完敗し、生命の危機を感じて筋トレを始めた適応障害の30歳

母と腕相撲をした。
夕食前、ご飯を食べようと意気揚々と腕まくりをした私の手首を見て、母が「ちょっと、細すぎない?」と心配してきたのだ。それならば、と。腕相撲することになったのだ。

我が家では、何年かに一度「よっしゃ、腕相撲しようぜ」という謎の流れが生まれることがある(大抵は急に言い出した私に家族が乗ってくれているだけである)。少し面倒くさそうにしながらも、いざ勝負となると本気でやってくれる家族が好きで、絶対に負ける勝負でもなぜか楽しくて、子供の頃は父や母、姉たちによく勝負を挑んでいた。
手を握り合い、傾きがないように両者共に姿勢を正す。一瞬の緊張が走った後、審判役の「レディーゴッ!」の合図とともに全力で相手の腕を倒しにかかる。両者の力が拮抗した末に、少しずつ相手の腕を倒していく感覚や、逆にどんどん倒されていって「やばいやばい!」と焦る感覚も面白い。個人的にはやるとつい燃えてしまう競技第一位である。

腕相撲なんて存在すら忘れていたが、母の一言で、急にやりたくなった。夕食前だというのに、リビングのカーペットの上で右肘を立てながら、「ほい!やろうやろう!」とワクワクする30歳。今は父も姉たちもいないけれど、久しぶりの腕相撲にテンションが上がった。母は渋々ながらも、結構楽しそうに付き合ってくれた。
相手は30歳以上も年上の母親である。私より元気でパワフルだが、鍛えているわけでも筋肉隆々というわけでもない。身長も私より少し低い。正直、勝てる自信しかなかった。

結果、2戦2敗。完敗である。
母の腕はびくともしなかった。5秒も経たないうちにいとも簡単に倒されてしまった。
母からは「ちょっと〜本気出してよ〜」と言われる始末。ちょっと本気で悔しかった。

唖然とした。
こんなにも筋肉が衰えていたとは。
たしかに、今年5月から休職に入ってからの半年間、大半を布団の上で過ごしてきたので運動不足の自覚はあった。体力もだいぶ落ちただろう。だが、それまでは週5日で働いていたし、基本的にリモートワークだが片道1時間半かけて通勤もできていたし、毎週土日に出張していた時期もある。

いやいや、そんなはずは…!

筋肉の衰えを認めたくない私は、試しに腕立て伏せをしてみた。

2回で限界がきた。

全く自分の体重を支えられないのである。腕が笑っちゃってブルブル。生まれたての子鹿か?20代の頃は、30回はできていた記憶が…
半年間、ほとんど布団の上で過ごしていた私の体は、筋肉も体力もない貧弱な体になってしまっていた。

これはやばい。やばいぞ。このままじゃ死ぬ…!

本気で生命の危機を覚えた。

筋肉が落ちると体力が落ちる。体力が落ちると免疫力も落ちる。免疫力が落ちると、菌への抵抗力が下がり風邪を引きやすくなり、病気にもなりやすい。
思い返すと、心当たりはいくつもある。
ちょっと外に出ただけですぐに疲れるし、ちょっと疲れただけですぐに扁桃腺が腫れて声が出なくなる。一度体調を崩すと回復までに時間がかかって、ひたすら寝る日々。
そういえば、かかりつけの内科医に「筋肉つけてね〜」と言われていたっけ…
医者に言われても響かなかった言葉が、母との腕相撲に負けたことによって一気に危機感に変わった。

そこで私は、3日前から筋トレを始めた。
体力をつけるための運動をする体力もないので、まずは10分ほどの筋トレをすることにしたのである。
そもそも、なぜ筋トレをするのかというと、

筋肉をつけることで、血液が全身に行き渡るようになる

血液によって栄養が全身に行き渡るようになり疲れが溜まりにくくなる

という仕組みらしい。
たしかに、体を動かした方がストレス発散になるとか、筋トレすると気持ちいいとか、ちょっと何言っているかわからないですねという話を何度か聞いたことがある。
正直、筋トレや運動は自分には関係ないことだと思っていた。というか、体を動かすのが面倒くさくて極力避けて生きてきた。
筋トレというのは、運動している人や体力仕事をしている人、体型をキープしたい人、ボディビルの大会に出る人がやるものだと思っていた。だが、私のような体力気力ナッシング引きこもり人間にこそ必要だそうだ。

調べたところ、体の中でも大きな筋肉である
・大腿四頭筋(太ももの表側の筋肉)
・ハムストリング(太ももの裏側の筋肉)
・大臀筋(お尻の筋肉)
などの下半身の筋肉から鍛え始めるといいらしい。なるほど…

ジムに通うなんてハードルが高すぎるので、ここでもYouTube様様が大活躍である。家で手軽にできるのはとてもありがたい。
下半身の筋肉を重点的に鍛える、初心者向けの動画を見つけた。たったの10分なのだが、ものすご〜くキツイのである。終わった頃には腕も脚もプルプルで、汗もじんわりとかいている。

筋トレを始めて3日。
なんと…早くも心身ともに効果を感じ始めているのだ。運動嫌いのこの私が。正直、期待以上の効果があって驚いている。
私が今のところ感じている効果は5つある。

①筋トレ後の爽快感。ストレスがすーっと溶けていく感覚
②汗をかいたあとの入浴がたまらなく気持ちいい(ちなみに私は大の風呂嫌いである
③10分だけでも「やりきった!」という達成感があり、1日の終わりに満足感がある
④漠然とした不安感が減り、「今」に集中できる
⑤翌朝、目覚めとともにスッキリしている

3日間の筋トレで感じた効果(筆者個人の感想です)

すごい。筋トレ、すごいぞ。
特に、満足感や不安感の減少には驚いた。筋トレというハードなことをすると、否が応でも「今」に集中しなくてはいけない。結果、瞑想と同じような効果が得られるのだろう。
メンタル面にも良い影響があるのを実感したので、これは続けてみようと思った。

だがしかし、筋肉痛がやばい。
今日は背中も脚も腕もありとあらゆるところがバッキバキで、あまりにも痛いし疲れたしでロキソニンを飲んでずっと布団で寝ていた。(あれ…?本末転倒か…?)

筋肉痛は、筋肉の成長のためには避けて通れない道らしい。
痛いことは大の苦手なのでなかなかツラいのだが、不思議なことに少し生きる希望を持ち始めている自分がいることに気がついた。

ふとした瞬間に「あ、死にたいわ」と思いながらも、これからの人生を少しでも快適に、生きやすくするにはどうしたらいいかと考え筋トレを始めている自分。そして、「楽しく生きていきたい」と思っている自分にも気づき始めた。
筋肉をつければ体力がつく。
体力がついたら疲れにくくなるし、疲れにくくなったらどこかへ出かけるのにも抵抗がなくなっていくだろう。そうすれば、出かけるたびに消耗して寝込んでしまうこともなくなるかもしれない。
体力がついてきたら、ちょっと遠出して旅行でもしたいなぁ。風景が綺麗なところへ出かけて、のんびり過ごすのもいいなぁ。そうだ、ずっと行きたかったフランスやイギリスにも行ってみたい。

なんて。思ってもみなかった「未来へのワクワク感」を抱きつつあるのだ。この半年間でなかなか思い描けなかった楽しい未来を、考えられるようになってきたのである。

人間、不思議なもんですな。
6ヶ月前の今頃は、自分が筋トレをするようになるなんて思ってもいなかった。牛歩だけれど、確実に少しずつ、変化していこうとしているのだ。

そんな自分が、結構好きだなと思えている。

4歳頃の私。筋トレがんばれよ!という、
未来の私へのメッセージでしょうか。笑

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