はじめましての、福岡とゴボ天うどん
東京生まれの東京育ちで、一生このまま地元で暮らして死んでいくんだと思っていた。
2020年、夫の仕事の都合で福岡に移住することになり、私は29年間の人生で初めて地元から出た。
東京から福岡は飛行機で片道2時間。気軽に行き来できる距離ではなく、お正月休みなどの大型連休でしか父や母の顔を見ることはできない、なんて考えてしまう私は、いい歳して精神的には親離れできていなかったのだろう。
母も子離れできていなかったのか、引越しの日に、引越しの手伝いをするという名目で私と一緒に福岡を訪れた。(夫は、2年前から福岡に住んでいたが、私が仕事の都合で東京を離れられず、2年間の通い婚を経て、夫の福岡のマンションに引っ越すことになった)
福岡空港に着いたのがお昼の14時前で、空腹だった私と母は、空港内にあるうどん屋の暖簾を潜った。
「福岡で有名なのは、ゴボ天だよね」と、母。
ゴボウはあんまり好きではないけれど、母に合わせて券売機でゴボ天うどん2人前のチケットを購入した。
生まれて初めて食べたゴボ天うどんは、麺もゴボウも柔らかく、でも衣はサクサク、汁を啜るとゴボウの優しい香りが口内に広がって、すごく美味しかった。母に「福岡のうどん、おいしいね」と何度も話しかけた。
福岡は食べ物も美味しいし、きっと、楽しく暮らせるよ、と、暗に母を安心させたくて、ちょっと大げさなくらい美味しそうに平らげた。
あれから1年。福岡で就職した会社はみんないい人ばかりだし、駅近物件に住んでいるが東京と違って家賃が安いから貯蓄は増えるし、買い物やレジャーに困らないくらい栄えていて、夫とはたまに喧嘩をするけれど、思いの外楽しく暮らしている。
もつ鍋、豚骨ラーメン、屋台などいろいろ福岡グルメも試したけど、1番食べているのはゴボ天うどんで、外食するときは大抵うどん屋に足が向く。
コロナが落ち着いて、母が福岡に来れるようになったら、ゴボ天うどんを食べに、今度は地元民で賑わっているうどん屋に連れて行ってあげたいと思う。
私がよく行くうどん屋
・資さんうどん
・二〇加屋 長介
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