あっきん

Web制作会社勤務。平日はハードワーカー(やや社畜気味)、週末は自由気ままな趣味人。 …

あっきん

Web制作会社勤務。平日はハードワーカー(やや社畜気味)、週末は自由気ままな趣味人。 【好きなこと】音楽/観劇/映画/ドラマ/読書/旅/スポーツ観戦/写真/パン作りなど。

最近の記事

ふたりの選択の先に希望はあるのか――生きづらさを抱える彼らの幸せをただただ祈った「流浪の月」

エンドロールが終わっても座席から立ち上がれなくなるという経験を初めてしたのは、2010年に公開された「悪人」を観た時だ。当時は舞台鑑賞に比重を置いていて映画は年に10本も観れば多い方だったわたしが、初めて「映画を観て打ちのめされる」という経験をしたのでよく憶えている。以来、そんな貴重な経験をさせてくれた李相日監督は注目の存在になった。 その李監督が、前作「怒り」以来6年ぶりにメガホンを取った長編映画「流浪の月」が公開された。本屋大賞を受賞した凪良ゆうの原作小説も非常に印象深

    • 激動の2020年、わたしの生きる糧となってくれた映画10選

      コロナという未知のウィルスが蔓延し、世界中が混乱に陥った2020年。わたしたちの生活が激変すると共に、映画界にも大きな影響をもたらした。4~5月の緊急事態宣言に伴い全国の映画館がクローズし、予定していた公開を延期せざるを得なくなった作品も多数。特にミニシアターは大きな打撃を受けた。 そんな中でも深田晃司監督・濱口竜介監督が発起人となった”ミニシアター・エイド”をはじめとするクラウドファンディングがいくつも立ち上がるなど、映画という文化の火を消さないための活動も多数行われた。

      • 過去は変えられない――「きみの瞳が問いかけている」が描く贖罪の先に辿り着いた場所

        人は過去を抱えながら今を生きている。たとえ平凡な人生でも、昨日までの人生は過去であり、決して変えることはできない。 映画「きみの瞳が問いかけている」は、抱えてきた過去と未来が交錯する贖罪の物語だ。 監督を務めるのはラブストーリーの名手・三木孝浩監督。これまで多くの小説・漫画原作の映画化を手掛けてきた三木監督にとって、今作は初の韓国映画のリメイク。主演には「僕等がいた」以来二度目のタッグとなる吉高由里子と、三木組初参加の横浜流星をキャスティング。ふたりの丁寧で確かな芝居と三木

        • ”好き”が溢れて止まらない――恋の彩りを丁寧に描いた「mellow」

          いくつになっても、自分の気持ちを素直に伝えるのは難しい。それが恋愛感情となると尚更だ。しかし1本の映画に、そんな固定観念を打ち崩された。今泉力哉監督の新作「mellow」である。 今泉監督と言えば、昨年公開された「愛がなんだ」「アイネクライネナハトムジーク」という2本の作品で大きな話題を集めた注目の監督。恋愛模様をリアルに描く名手として、これまで多くの恋愛映画を手掛けている。その今泉監督が新たに挑んだのは、街で一番おしゃれな花屋を営む夏目誠一を中心に、彼に関わる人々のあらゆ

        ふたりの選択の先に希望はあるのか――生きづらさを抱える彼らの幸せをただただ祈った「流浪の月」

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          2019年、わたしの心を揺さぶった映画10選

          ここ数年映画熱が高まり、映画館で観る本数が年々増えてきた。と言っても昨年までは年間で3~40本程度だったのだが、今年は映画館での鑑賞本数84本、作品数60本と過去最多本数を記録。これは純粋に「観たい!」と思う作品が増えたことと、わたし自身の映画の見方・関わり方が変わってきたことが大きな理由だと思う。 ということで、わたしにとって映画がより身近になった2019年を振り返るべく、今年わたしの心を深く揺さぶってくれた映画を10本選んでみた。 いなくなれ、群青 今年、最も心を揺

          2019年、わたしの心を揺さぶった映画10選

          新時代に旋風を巻き起こした“グリーンボーイズ“の軌跡

          令和という新時代を迎えた2019年、エンタメ業界では新時代の幕開けにふさわしい多くの作品やスターが生まれた。 わたしも多くの作品を楽しませていただいたが、改めてこの1年で話題になった作品やニュースを振り返る中で過去に観たある1本の映画を思い出した。「キセキーあの日のソビトー」である。 ボーカルグループ・GReeeeNの結成と「キセキ」という楽曲が誕生するまでの実話を元に作られたこの作品は、松坂桃李と菅田将暉をW主演に起用し2017年1月に公開された。主演のふたりは出演作品を

          新時代に旋風を巻き起こした“グリーンボーイズ“の軌跡

          小さな幸せが連鎖する――「アイネクライネナハトムジーク」で描かれた、人が出会う奇跡と必然

          今年上半期に大きな話題を集めた映画「愛がなんだ」で監督を務めた今泉力哉監督の最新作「アイネクライネナハトムジーク」が9月末に公開され、再び各所でロングラン上映が続いている。 原作は伊坂幸太郎の同名小説。この中に収録された「アイネクライネ」が親交のあったアーティスト・斉藤和義の楽曲「ベリーベリーストロング~アイネクライネ~」の元になったという縁で、主題歌と劇中音楽を斉藤和義が提供するということでも注目された作品だ。原作は連作短編集なので、映画でもそれを生かした”恋愛群像劇”と

          小さな幸せが連鎖する――「アイネクライネナハトムジーク」で描かれた、人が出会う奇跡と必然

          欠点を切り捨てて大人になることは正しいのか?――「いなくなれ、群青」が問う自分との向き合い方

          人は誰でも異なる人格を持っている。 それは生まれ育ってきた過程で形成されるもので、その人の考え方や行動に大きく影響を与える。そのため成長するにつれ、持ち合わせた人格が時に社会で生きる上で邪魔になったり、選択を阻害したりすることがある。 それでも人は日々生きていかなければならない……よって自分の人格と折り合いをつけて、生き抜くために最良の道を選ぶ。それが「大人になること」だと信じて。 河野裕原作でこのほど映画化された「いなくなれ、群青」は、そんな人間の人格と大人になる過程に

          欠点を切り捨てて大人になることは正しいのか?――「いなくなれ、群青」が問う自分との向き合い方

          人生の節目で何度でも見返したくなる…わたしにとっての「青の帰り道」

          5月11日からアップリンク渋谷で異例のロングラン再上映されていた映画「青の帰り道」が、とうとう8月14日をもって終映を迎えた。 再上映初日から何度も足を運んだので、終映は寂しくもあり感慨深くもあり……そんな想いを胸に、この日の最終回を見届けさせていただいた。しかも8月14日という日は「青の帰り道」にとって特別な日――2016年のクランクインの日であり、2017年のクランクアップの日であり、藤井道人監督の誕生日でもあった。そんな特別な日にこの場所で「青の帰り道」を観ることがで

          人生の節目で何度でも見返したくなる…わたしにとっての「青の帰り道」

          「もうひとつの顔」が露わになった時、人はどう生きるべきか

          主人公が無言で車を飛ばすラストシーン、無音のエンドロール… 最後まで見終わった時、背筋がひやりとした。 もしかしたら、この主人公と同じ状況に自分も追い込まれるかもしれない。そうなったら果たして自分はどうなるだろう…? 映画「よこがお」は、そんな恐怖を身近に感じさせる作品だった。 主人公の市子は、患者やその家族にも慕われる優秀な訪問看護師。医師である恋人・戸塚との結婚を控え、連れ子との関係も良好。担当患者の孫である基子やサキとも仕事を超えて友人のような関係を築き、順風満帆な毎

          「もうひとつの顔」が露わになった時、人はどう生きるべきか

          夏を彩るわたしの鉄板プレイリスト

          7月も終わりに近づいているというのに、今年はまだ梅雨が明けない。しかしここ数日、ようやく夏の気配を感じるようになってきた。 それと共に、プレイリストを夏バージョンにした。 夏になると、必ず聴きたくなる音楽がある。 それは夏に限らず、季節ごとに自分にとっての思い出の曲がいくつかあるのだが、8月生まれのわたしにとって夏はちょっと特別だったりする。 青春時代に聴いた曲、特別な出来事と共に記憶に残る曲、大切な人と聴いた曲…新たに自分のプレイリストに加わる曲もあれば、昔から変わらな

          夏を彩るわたしの鉄板プレイリスト

          「正義とは何か?」攻め続ける松坂桃李が覚悟を持って示してくれたこと

          若い世代の「政治離れ」が顕著となって久しい日本では、「政治」をテーマにした映画が作られることは少ない。そんな中、現在進行形の日本政府やその周辺で起きたいくつかの事件を想起させるエピソードが盛り込まれた映画「新聞記者」が全国公開された。 わたしも政治に疎い世代だが、現政権で起きたことであればリアルタイムで見ているし、記憶もある。「新聞記者」のモチーフになったであろう女性フリージャーナリストの事件や新設校建設計画に伴う問題については、連日ニュースなどで目にしていた。だからそれか

          「正義とは何か?」攻め続ける松坂桃李が覚悟を持って示してくれたこと

          ひたむきさが胸を打つ、青春ど真ん中を描いた「チア男子!!」

          ※2019/5/14にアップした記事の再掲です。 実在する早稲田大学男子チアリーディング部「SHOCKERS」をモデルに、同大出身の朝井リョウさんが書いた小説を実写化した映画「チア男子!!」が公開された。 「チアリーディング」という難易度の高いスポーツが題材のため、これまで何度も実写化の話が出ては頓挫してきたという作品を、今回横浜流星くんと中尾暢樹くんのW主演で実現。共演の浅香航大くん、瀬戸利樹くん、岩谷翔吾くん、菅原健くん、小平大智くんと共に男子チアチーム「BREAKE

          ひたむきさが胸を打つ、青春ど真ん中を描いた「チア男子!!」

          ろくでなし男で新境地を切り開いた香取慎吾の"役者力"

          初めて予告映像を観た時、「見たことがない慎吾くんがいた…」と衝撃を受けた。その瞬間、この映画は何が何でも観なければと思ったのを憶えている。白石和彌監督の最新作「凪待ち」である。 この作品は東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市を舞台に、一人の男が大きな絶望を味わい、やがて再生していこうとする物語だ。 主人公・郁男を演じたのは、香取慎吾くん。郁男は根っからのギャンブラーで、大した仕事もせず毎日ふらふらと生きている男。しかし恋人を無残に殺され、自暴自棄になって更に人生が転

          ろくでなし男で新境地を切り開いた香取慎吾の"役者力"

          映画「青の帰り道」に見る、ムーブオーバーの新たな可能性

          以前レビューを書いた映画「青の帰り道」が、異例の盛り上がりを見せている。 昨年12月の公開時にはわずか2週間程度で上映が終了してしまったが、その後「この作品をもっと多くの人に届けたい」という強い想いの元、藤井監督や伊藤プロデューサーをはじめとする関係者のみなさんの尽力により、5月11日からアップリンク渋谷での再上映が決定。メインキャストとして出演していた横浜流星くんのブレイクも重なり、連日チケット完売の満席――当初予定していた2週間の上映期間が無期限延長となったのだ。 再

          映画「青の帰り道」に見る、ムーブオーバーの新たな可能性

          異常な愛かと思いきや、珠玉の恋愛映画だった

          元号が令和に変わった5月1日。 特別な予定もなかったので映画を観に行った。 令和の映画はじめに選んだのは、角田光代さんの小説を映画化した「愛がなんだ」 公開館数が少なく都内では連日満席が続いていると聞いていたが、噂通りの盛況ぶり。有楽町スバル座は、上映時間の1時間前から100人超えの行列ができていた。ここまでとは思っていなかったので、正直びっくり。この作品の何がここまで多くの人を惹きつけるのか…とても興味深くなった。 知人の結婚パーティーで出逢ったマモルに恋したテルコ。愛

          異常な愛かと思いきや、珠玉の恋愛映画だった