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『君はもう大丈夫?』。当時の恋人と別れ数ヶ月後に再会した時にかけられた言葉だ。高校の先輩だった彼とは在学中も何度か話した事があったが卒業後に急に仲が進展し付き合うに至ったのだが2年を共にした後別れた。

久々に再会し、お互いの近況報告をしている時に彼にはほんの少し前まで恋人がいた事を知った。ふと交際当時の事を思い出した。彼は誰にでも思わせぶりな態度を取り最後には相手からその愛想の良さで振られる人だった。その彼女にも同様の理由で別れを切り出されたようだった。なんだか本当にこの人は良くも悪くも変わらないなぁと安心感のようなものを感じた。別れた当時は本当にこの世の終わりのように感じたが2ヶ月もすれば案外、彼の居ない生活も悪くないと思ってしまっていた。そんなものなんだなぁとも思えていたから数ヶ月ぶりの再会は未練もなくただの友達という感覚で会えた。もうお互いに恋愛感情がないから一緒にいて気が楽だねなんて笑っていたが、海まで運転していた彼の横顔はなんだか悲しそうにも見えた。そうだった、この人は自分を好きでいてくれる人が常に近くに居ないと自信を保てない人だった。そんなことすら忘れていたのかと思っていた時、彼が私に向けて冒頭の言葉を放ったのだ。きっと、彼は私が『寂しいよ戻っておいでよ』というのを待っていたのだと思う。確かに彼が隣にいた時はとても幸せだったが別れるに至るほど関係は悪化したという前科があるのだ。私は一度見た映画は相当好きじゃない限り二度目を見ることはない。つまり復縁をあまり好まないのだ。それに彼は放っておいてもすぐに新しい恋人を見つけることが目に見えている。それなら私が出す答えはたった1つだ。

『私はずっと大丈夫だったよ。貴方が私には貴方がいないと駄目だと思わせていただけであって。これからもずっと私は大丈夫だから貴方はもう他の人を大丈夫じゃなくしちゃ駄目だよ。これからのお互いがどうなっていくのか楽しみだね。』。

そう言った時なぜか一刻も早く波の音を聞きながら煙草を吸いたくなった。

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