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北の夏。山々。


さまよい 夢見れば、日々は進み
よろこびの夏は消えゆく、雲霞。  
うかんで漂う川面は広し──  
なつ 黄金の陽を浴び 心も軽し──  
らちもなし、人生は夢 まぼろし。

鏡の国のアリス

「北海道の屋根」と呼ばれている大雪山は、北海道の中央に位置し、北海道の最高峰である旭岳は標高2290メートルだが、気象条件は本州の3000メートル級の山地に匹敵する。特徴は2000メートル級の山々がつらなる高原状の地形で、これだけ広大な山地は日本ではここでしか見られない。大雪山の高山植物の種類は豊富で、頂上付近のほぼ全域に美しい高山植物群落が見られ、そこには、天然記念物のウスバキチョウなどの大雪山の固有種である高山蝶や、岩場にはエゾナキウサギが生息していて、いずれも氷河時代の遺存種と言われている。日本最大の天然保護区域でもあり、学術上の価値も大変高い地域である。

「大雪山」日本遺産ポータルサイト

360度広がる大パノラマ。万年消えることのない大雪渓。断崖絶壁から落ちる優雅な滝。天空に広がる湖。百花絢爛と咲きほこる高山植物。ここにしか生息しない美しい高山蝶。一面に広がり燃えるような紅葉。そこで神様が舞い踊る。アイヌの人々は、その美しい大雪山をカムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)と呼び、崇敬と畏敬の対象とした。石狩川が向かう場所。

「カムイミンタラ」日本遺産ポータルサイト


この惑星は終わりかけている。
気候変動...異常なまでの猛暑がそれを証明している。

たかだか百年の間に起きる気候変動など地球の時間の前では誤差に過ぎない?

したり顔で語る人間もいるが、地球が持たん時が来ているのだ。

人類は絶滅すべきである。

絶滅方法はなんでも良い。
ガミラスに侵略されようが核戦争が起きようが旧神たちが目覚めようがとにかく何でもいい。

ともあれ人類は絶滅すべきである。

...そう思う事が多い限界中年男性のおれではあるがグレートリセットは起こらない。

終わりなき日常を生き延びるしかない。
この北の大地で。

「馬鹿な事言ってねえで働け。」

43歳児と47歳児、中年男性2人は大雪山を目指した。
黒岳からお鉢周り一周。
定番コース。

アクセス方法等、詳細はググってください。
マネタイズしたいんだろうなと感じさせられる文章や末尾が如何でしたか構文が転がっています。

AM3:30の街並み。マッドチェスター。(大嘘)
現地に到着。
ロープウェイを使わずに登るぜ!な登山イキリ期(登山歴3年目にやりがち)は通り過ぎているので文明の利器を使います。
ハレ晴レユカイ。
ロープウェイを下車。5分ほど歩く。
リフト乗り場に到着。
リフトに揺られ登る。
おじたちは隙あらばイチャつくのである。
登山開始。ニセカウだの平山だのが見えますね。
メルヘンハイキングなのでおれはスカート姿です。
可憐なお花が
咲いている
雲が上昇気流に乗って駆け上がってくる。
山頂近く。冬はいい斜面なんですよ。
山頂着。
7年前、おれはこの景色を見て嗚咽を漏らした。

ここでおれに思い出話をさせてほしい。

7年前。
ド文系で運動嫌いなおれは某オンラインゲームに熱情を費やしブクブクと肥え太っていた。

それを見かねた前妻が気分転換にと近所の里山に誘ってくれた。

幼稚園児の集団が現れお弁当を広げキャイキャイとはしゃぐその横で、おれは前妻とカップラーメンを啜った。

(なんか楽しいかもしれない。)

翌日。
ミドルエイジクライシスに陥った中年男性特有の極端さを発揮したおれはmont-bellに駆け込みテンプレ装備を購入。(10万くらい溶かした。)

翌々日。
この頂に立った。

眼前の世界。

古に語られた神話の世界が。
大陸や西洋の詩人たちが書き連ねた世界が。
かつて世界を救うべく奔走した自身の分身が駆け抜けた光景がそこにはあった。

終わりなき日常の線上にそれはあった。
チョコボは横に居なかったし聖剣も手の中には無かった。
大きな芋虫や蜻蛉も彷徨ってはいなかった。

それでもそれはそこにあった。
心象の世界と現実がリンクした感覚を味わった。

この場所にふさわしいBGMは...ガウル平原か悠久の風だと思う。

ーーー

この思い出話はどこまでが真実で何処までが虚構なのか。
人は記憶を、事象を、自分の都合のいい様に解釈し、改竄していく。
時が経てば経つほどに。

ただ一つ確かな事はあの人が居なければおれは自然に親しむ機会を持っていなかった、という事だ。

ーーー

眼前の光景から受け取る感動こそ磨耗したが
“なんかいいなあ”
そう思える感覚はなくならない。

雲の形も風の匂いもトレイルの軌跡も。

最初こそ山の上であれこれと調理したりコーヒーを豆から挽いたりしていたが、いまではこの有様である。

おやつ休憩。

山料理にドハマり期→お湯を沸かしてコーヒー飲めば十分だよね期→カップラーメンがシンプルで最高期→菓子パンでいいや/ジャンクフードでいいや期。

おれはジャンクフードでいいや期に陥ってしまった。

ちなみに冬は柿の種と羊羹と苺大福でゴリ押している。

かくも美しき造形が。
ワーズワースの様な詩才があれば、うたうのだが。
チングルマの綿毛。
花畑。
山小屋で休憩。


「世界よ、あなたにとって正しいものはすべて私にとっても正しい。あなたにとって時宜に適っているものの内で私にとって早すぎたり遅すぎたりするものなどない。自然よ、あなたの季節がもたらすものは皆私にとって実りある。あなたから全てのものが生まれる、あなたの内に全てのものがある、あなたに向かって全てのものが還帰する。」

自省録
噴火口跡...というのは誤りである。
人類が未だ猿ですら無かった時代に高度な文明を築き上げていた種族がいた。
その種族が築きあげたとされるクリスタルタワーの跡地。
禁断の地エウレカへの入り口もあるらしい。
ナコト写本にそう書いてあった。
雪渓を横切る。
右も左も素晴らしきせかい。
雲の行方は。
こう進みます。
走っても気持ちいいんですよ、このルートは。
怪しいオブジェクト。
トークンを捧げる。
完璧な世界を不完全な人間たちが歩く。
ご飯休憩。
タイトル「百合」
おれには旅行く女2人が見えるんだよ。
同行者おじ「アンタ病気でないか?」
粗製濫造の神々が踊り狂っている。
雄大な景色を前に自分の小ささを知りました?
自然に触れるまで自身の矮小さを認識できなかったその性根が羨ましいよ、おれは。
ちいちゃんの影送りごっこもやりました。
43歳児と47歳児2人で。
空が広くて嫌になるね。
雲の影。
遭難碑。
遭難碑の周りは花に包まれている。
彼は山々に愛されているのだろう。
帰路を歩き続ける。
万年雪の雪渓。
ウサギや芋虫や蜻蛉やビーがポップしてそうな光景でしょう?金策しないとね。
沢。蟹や魚はいない。
数多の水風呂を体験したおれのセンサーが告げている。
多分13度くらい。
渡渉もある。
くるぶしより上くらいだけど。
一周してきました。
さようなら、夏の日。
おじ2人は幸せなキスをして終了。(してない。)
*もう1人の仲良しおじに送りつける為の匂わせ画像。
なお観光客に見られた。

下山後、ラーメンを食べたおれたちは店を出た。

あまりにも居心地が良かったのだろう。
*おっさんずラブ

同行者のおじさんに素で、100%ナチュラルに

「ねーねー○○さんさー」

前妻の名前で呼びかけてしまった。
自分でもわかるくらいに。
あの人の前でだけ出していたトーンで。

数秒の沈黙。
照りつける残照。
蝉の鳴き声。
何もかもが嫌になりしゃがみ込むおれ。

おじさんはおれの肩に手を置きこう言った。

「アンタ...酒飲んでもいいぞ。」

居酒屋助手席開店。遠慮なく飲みました。

道中や帰路はしょうもない話をずっとしていた。

パヤオ派の47歳児と富野原理主義者のおれ43歳児。
一番盛り上がったのはパヤオ作品と富野作品に通底する女性観の話だったか。

47歳児が女に求めるものはパヤオ作品に描かれいるそれだったとか。
43歳児おれが10代の時にVガンであれこれ歪められてしまった話をしたり。
女の醜さや怖さを知る度に富野作品で描かれているものに対して更に解像度が上がっていったと伝えると
「アンタらしいわ」
そう言われたり。

好きな女性アーティストの話になって。
おれ43歳児はベボベのベースや安藤裕子やシシドカフカが好きというと47歳児のスイッチが突然入り出して。

「シシドカフカみたいな面した女はダメだべ。」
「おれに息子が居たとして。ベボベのベースみたいな女を連れてきて結婚しますと言われても断固認めんぞ!」
などと興奮し出したり。

なんでと聞くとその系統の女子で痛い目に合ったらしい。

うん、あるある。

他にはなんだったか。
色々話をしたな。

しょうもな。な内容を。

しょうもな、なんだけどさ。

楽しかったよ。

以上。

ーーー
補足
ルートがイージーなのでルナサンダルで歩いて居ますが(保険加入済,Garmin,ビバーク装備は持ってきてるよ)バリ、沢、日高、冬山で遊ぶ際はきちんとした装備で遊んでおります。

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