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日々の食事で忘れちゃいけないこと

ガチャーン。

背中でいきなり何かが床に叩きつけられる音がした。振り返ると台所から鬼の形相でこちらを睨む母。
床に転がっていたのは、菜箸だった。

リビングのテーブルには父と、妹と、そして高校生の頃の僕。
テーブルには何品もの夕食が並んでいた。TVを見ながら夕食をとっているところだった。音に反応して、僕ら3人は一斉に台所の方に振り返る。

「食べたらなんか言いなさいよっ!!あんたたち私が作った料理になんもコメントないわけ!!?いい加減にしなさいよ!!」

母、激昂。

まあ、それもそのはず。
まだお味噌汁をよそっている母に脇目も振らず3人して黙って食べ始めた上にTV見てるし、そしてなにより作ってもらった料理に誰一人コメントのひとつもしない。おいしいのか、しょっぱいのか、味付けが物足りないのか、そんなことも一切言わなかったから。作ってもらってるのが当たり前になりすぎて、食事をとることが流れ作業になりすぎた末路だった。

この時からだ、僕が料理を作ってもらったときに必ず何かコメントを一言でもいいから残そうと思うようになったのは。「おいしい」その一言がどれほど感謝を伝えられるかをその時まで知らなかった。今思うとこの母の教育(激昂)は本当に大切なことだったと思う。

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僕の友達はよく家で料理をするらしい。自分が料理をするのが好きだからやっているらしいのだけど、一緒に暮らしている人がいるとどうしてもその人の分も作ることになる。それ自体はすごく楽しくて、おいしいごはんを食べてほしいからついつい手のこんだものを作ってしまうらしい。
だけど、あんまり自分の作った料理へのレスポンスがない、そう言って少し寂しそうだった。

やっぱり一生懸命だれかのために作ったからには、その人に喜んでもらいたいのが人間心理だと思う。喜んでレスポンスしてくれるかどうかは相手次第だと頭ではわかっていても、ついつい期待してしまう。それが裏切られたらちょっとつらい。当たり前だ。僕もレストランのキッチンでバイトしてたからよく分かる。おいしそうに食べてくれる姿を見れるのは本当に嬉しかったから。

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作る側が過度に期待しない、だとか、料理はインスタにあげて別の人から褒めてもらう、とか、色々と改善方法はあるみたい。毎日作っている限りそうやって工夫しないとあまり反応もくれない相手に料理を作りつづけられないらしい。

だけど僕はやっぱりこれ、食べる側のマナーの問題だと思う。

一度、うちの母みたいにブチギレて教育(説教)してあげた方が良いと思うくらい。食事に興味ない人がいるのはわかっているけど、これは食事に興味あるかとか、おいしいものが食べたいかとか、そういう次元の問題ではなくて、コミュニケーションの問題だと思うから。

料理する側は最大限コミュニケーションしようとしている。応えなきゃいけないのは料理を作ってもらった方だ。

「おいしいよ」その一言にきちんと感謝を込めて伝える。そういう小さなことが本当に大事。当たり前のように毎日食事をとるからこそ、絶対に忘れちゃいけないことだと思う。

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まあとはいえ、中々ブチギレてギクシャクするのも嫌かもしれないからね、交代でつくればいいんじゃない?とかも思う。友達は、相手にキッチン任せられない、とか言ってたけど。難儀だ。笑

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最近忙しいことを言い訳に、きちんと感謝の気持ちを持ってごはんをいただけていなかった自分への自戒も込めて。

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