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昨夜のラブレター

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連載小説です。 突然に鐘がカンカン鳴らされて書きはじめました。鐘の音が教会のカンパネラなのか、踏切の遮断機なのか、或いは単なるアドレナリンなのかはわかりません。それを懸命に探るよ… もっと読む
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昨夜のラブレター %5

中年の運転手は自身の置かれた不可思議な状況に首をひねりながらも、眼の穴の奥へと続く細道を進んでいた。

眼の細道は割合に平坦で歩きやすかった。その代わりに狭い天井や壁からじんわりと水が染み出しているらしく、微かな音が絶えず鼓膜に響いている。進めないほどには暗くないが、運転手はぬかるみに足を滑らせないために胸ポケットからジッポライターを取り出して火を点けた。辺りを仄白く照らす光が周囲の肉壁や水滴をき

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昨夜のラブレター %4

頭頂の禿げた中年のタクシーの運転手は、ルームミラー越しに後部座席の女の裸体を見つめる。ふくよかとは違う、スレンダーとも違う、セクシュアルな魅惑を持った肉感を、黄色の女の流線形に誘われるままに、運転手は淫らな目で追っていく。視線のはじまりは決まってへそだ。わずかにくぼんだ穴の内には複雑な文様をつくった小さな肉の丘陵。

「もしもエアーズロックを上空から見下ろしたならば、おれはこの女のへそを思い返すか

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昨夜のラブレター %3

ソーコと名乗ったベージュコートの露出狂の女は、目の前で膝をついて涙を流す男の肩へそっと手を置き、抱擁すると、男の耳を覆うハイソックスの上から言葉をささやいた。ソーコの喉が振るわせた言葉は、小麦粉を振るいにかけるようにして、編み込まれた綿地の僅かな隙間の数々へと這入りこみ、粒の細かく滑らかな音となってマシューの鼓膜に触れていった。

「一緒に逃げましょう」

泣き崩れて赤い目のマシューは女の声に顔を

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昨夜のラブレター %2

「胡蝶の夢かしらん」

マシューは目前の若い娘の乳房を眺めながら頭へ載せた人面蝶を一往復半ほど撫でてみた。

「夢でございます。怠けた神の夢でございます」

人面蝶はそう言うと絡みつくマシューの色の薄い髪の毛を振りほどいてビルディングの隙間のせまっ苦しい空へ羽ばたいて行った。羽ばたいた先の向こうに重なった陽気な日の光の中で、人面蝶はディビッドバーンに似た顔でマシューと娘とにウインクしてみせた。

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昨夜のラブレター

を破って千切って紙吹雪に舞わせたならば、チープな蛍光灯をきらきら反射して、おっとなんだコぉレ。まさしくバロウズのカットアップ、もしくはブルトンのデペイズマン。私の目前に開けるは、不思議な物語のトンネルをくぐった先の雪国でござんした。

あるいは秋の純情詩?

*** *** ***

男はマシューと言う者だが、どうにも見た目から妙ちくりんである。

頭に載せた帽子はプッチンプリンほどの大きさのカワ

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