Akio Hirata

50代の男性が、会社だけでなく地域にどう関わってきたか、を解読していく試み。 「男性学…

Akio Hirata

50代の男性が、会社だけでなく地域にどう関わってきたか、を解読していく試み。 「男性学」という視点を採用することで、今まで繋がらなかった点と点が繋がる予感がしています。

最近の記事

読んだ、面白かった! -3-

堅苦しいことは抜きにして、読んで面白かった本を紹介するコーナー 言いたいことはただ一言。 面白いから読んで!  随分間が空いてしまったが、三冊目は、『憲法の無意識』(柄谷行人)。 もちろん、今日が憲法記念日だからこの本を選択したのである。  あとがきにあるように、この本は2006年〜2015年までに著者が行った講演をもとに再構成されている。  中でも特に、最も古い2006年の「Ⅲ カントの平和論」を推したい。カントと日本国憲法という、一見無関係に思える二つが、実は深層で

    • 読んだ、面白かった! -2-

      堅苦しいことは抜きにして、読んで面白かった本を紹介するコーナー 言いたいことはただ一言。 面白いから読んで!  二冊目は、『ネット右翼になった父』(鈴木大介)。  このタイトルには少々違和感がある。というのはネタバレになるけれど、読んでみれば実は著者の父はネット右翼になってはいなかったからだ。  この本の主題はむしろ、1970年代生まれの僕らの世代が、父親との距離感をどうにも埋められないまま、父親を看取る年代になってしまい、結局モヤモヤを抱えたまま、ということへの半鐘

      • 来し方(6) – 92年バングラデシュ訪問記

         この稿「来し方行く末」の目的は、ワークキャンプ記録を残すことではない。先を急ごう。  今回は、バングラディシュでの話。カルカッタからダッカへと飛行機で飛び、四日ほど滞在していくつかの施設を見学した。そして、旅の洗礼もうけた、というお話。  先を急ごう。ダッカへの移動は8月15日だった。8月15日は日本では敗戦記念日だが、インドでは独立記念日。インドが英国から独立したのは1947年だから、この日は独立45周年の日だった。午前中、その式典に参加した後、空港に移動。記録を見る

        • 行く末(5) - 男性学を紐解く-5-

           LGBTQを筆頭に、性の多様性が認められるようになってきたこの時代に、何故男性学なのか、と思われるかもしれない。そんなの時代遅れじゃね?と。  いや、待って。一番変わらなきゃならないのは、男性学が対象としている「普通の男性」だから。そういう人たちがマジョリティを占めている現状へのオルタナティブとして、男性の気負わない生き方考えているのだ。  そして、それが全人類の生きやすさに繋がると信じているのだ。  なぜ、男性自身が変わる必要があるのか。理由は明白だ。既得権益に一番

        読んだ、面白かった! -3-

          来し方(5) - 死を待つ人の家訪問記

           マザー・テレサが設立した修道会が運営する「死を待つ人々の家」を訪問したのは1992年8月6日のことだった。  Wikipediaを見ると、家の名称が「 Home for the Dying 」となっているが、僕の日記には「House for the dying(死を待つ人の家)」と書かれていた。単なる書き間違いだろうか。昔は相当怪しい英語力だったから。  HouseとHomeじゃ、えらい違いだ。家と家庭くらい違う。  Wikipediaの写真は、外観も、内部も、僕が訪問し

          来し方(5) - 死を待つ人の家訪問記

          行く末(4) - 番外編(「男がつらい社会」、日本は本当にこれでいいのか)

           タイムリーな記事を見つけたので、今回はそれを紹介したい。 「男がつらい社会」、日本は本当にこれでいいのか 東洋経済ONLINEに掲載された、木村隆志の記事だ。  世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数報告書」で、日本は146カ国中125位となったことを上げ、男女格差を減らすには、むしろ男性の意識が変わらなければならないよね、という話だ。  ちなみに、125位というのは、116位だった去年よりも大幅にランクダウンしており、つまり日本は後退している、とも言え

          行く末(4) - 番外編(「男がつらい社会」、日本は本当にこれでいいのか)

          来し方 (4) – 92年・カルカッタ -1-

           92年に参加した、JIFH主催のワークキャンプから、カルカッタでの体験について。  ワークキャンプは8月4日〜21日まで。  4日に成田からバンコクに飛び、バンコク泊。翌日にカルカッタに入り、15日まで滞在。そこからバングラデシュの首都ダッカへ移動して18日まで滞在。ダッカから再びバンコクへと戻る。20日夜にバンコクを飛び立ち日が変わって21日に帰国、というスケジュールだった。  現在では、コルコタと言う呼び方が一般的だが、当時はカルカッタという名称だったのでここでは

          来し方 (4) – 92年・カルカッタ -1-

          行く末(3) - 男性学を紐解く-3-

           もう少し、田中の著作から引用していきたい。『男がつらいよ』は男性学というよりは、男性の生きづらさに焦点が当たっているから、男性学を紐解く、というタイトルとの若干の齟齬はご了承いただきたい。  男性学=男性の生きづらさ研究、というだけではないと思うのだが、まずはそこからということか。  同じタイミングで田中俊之の別の著作『<40男>はなぜ嫌われるのか』も読んでいた。  この本も、男性学とは…と大上段に構えた内容ではなく、『男がつらいよ』と相互補完するような内容になっている

          行く末(3) - 男性学を紐解く-3-

          読んだ、面白かった! -1-

           堅苦しいことは抜きにして、読んで面白かった本を紹介するコーナー。  言いたいことはただ一言。  面白いから読んで!  栄えある第一回は、田中兆子の『懲産制』。  文庫本に収められている小谷真理の解説から、本書の設定を紹介しよう。  それゆえ、十八歳以上三十一歳未満の男性に、二年間女性になる義務を課す「懲産制」が導入される。  驚いたのは、この小説が書かれたのが、2018年ということだ。なんと、コロナパンデミックの前ではないか。ものすごい先駆的な小説だ。作者自身が

          読んだ、面白かった! -1-

          来し方 (3) - インド・バングラディシュ・タイ -序-

           1992年、インド・バングラディシュ・タイの三ヶ国を訪問するワークキャンプに参加した。これは国際飢餓対策機構(JIFH)というNGOが主催するワークキャンプだった。  その前年、アジア学院でのワークキャンプに衝撃を受け、もっとアジアのことを知りたい、現地に行ってみたいという気持ちが高まり、すかさず参加。行く前からワクワクしていた。  92年の8月4日から8月21日までの18日間。うちカルカッタ(インド)が約2週間、ダッカ(バングラディシュ)が3日間、残りがバンコク(タイ

          来し方 (3) - インド・バングラディシュ・タイ -序-

          行く末(2) - 男性学を紐解く -2-

           『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(田中俊之)を読み進めながら、男性学とはなんぞや、を考えていこうと思ったら、思いの外あっさり読み終わってしまった。 題名からして大上段に構えた内容でないことは明らかだし、学術的な本でもないから当たり前と言えば当たり前か。  個人的には、男性学とは「男性であること」、ではなく「男性でいること」を考えるよすがである、と今の段階では定義したい。  ちなみに、ウィキペディアにはこうある。 [男性学(だんせいがく、en:Men's s

          行く末(2) - 男性学を紐解く -2-

          来し方(2) - アジア学院の話

           アジア学院の話をもう少し続けたい。やはり、ここが原点の一つとして脳裏に深く刻まれているから。アジア学院のワークキャンプなくして、今の僕はなかった。  ワークキャンプを主催したのはSCF(学生キリスト教友愛会)という組織。その名の通り、クリスチャンの学生をメインターゲットに活動している団体で、そこには都内近郊の様々な教会に連なる若者が集まって、ワークキャンプ以外にも色々なことをやっていた。  キャンプでは、色々な農作業を体験する。例えば、鶏の首を絞めたり、堆肥の切り替えし

          来し方(2) - アジア学院の話

          行く末(1) - 男性学を紐解く -1-

          来し方行く末を考察していく、とのがこれから試みようとしていることで、その道標として『男性学」を据えてみようということを、「まえがきのような…」で書いた。  そこで、ここでは男性学とは何か、について考察していきたい。  ジェーン・スーの対談集『私がオバさんになったよ』で田中俊之という男性学の研究者を知ったことが、興味を持つきっかけだった。そこで、田中の著作である『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』を読み進めながら、男性学とはなんぞや、とか、男の生き方のアレコレをみてい

          行く末(1) - 男性学を紐解く -1-

          来し方(1) - ルーツを探す旅

           目的は、これまでを振り返り、これからを考えること。来し方行く末ということで、きっかけがどこにあったのか、を考えてみる。  来し方、つまり今までどんなことを実践してきたか、という側面と、行く末、つまりそれが自分をどこへと導くのか。 イメージとして思い浮かんだのは、男性学というキーワードを軸とし、そこをめぐるらせん階段としての個人的履歴。 そして、今回は「来し方」の1回目。  出発点はどこだろうと改めて考えてみると、まず思い浮かぶのはアジア学院のワークキャンプに参加した

          来し方(1) - ルーツを探す旅

          まえがきのような…

           50年以上生きてきた凡人である。どうやら、この世に足跡の一つも残せそうにない。  とはいえ、今までやってきた色々を振り返るのは悪くない。  20歳を過ぎた頃から、会社から得る収入とは違うたつきの道を実践してきた。その諸々を、「男性学」という視点から振り返れば面白い考察ができるのではないか、というのがそもそもの動機である。  なぜ、「男性学」なのか、と問われて確たる理由はない。ある日思いついてしまったのだ。角幡唯介もエッセイで書いているが、思いついたら最後、もうそれをや

          まえがきのような…