マガジンのカバー画像

愛しき変人達。

9
私が出逢った、愛しき変人達。
運営しているクリエイター

#眠れない夜に

カッコイイ女とは。#2【完結】

カッコイイ女とは。#2【完結】

鍋パーティー当日、私は通りがかりのケーキ屋さんでデザートを買って都と新宿駅で待ち合わせた。

もちろん10センチ以上のヒールを履いて、もちろん最小限の物が入る小さなバッグを持って、待ち合わせ場所である新宿駅西口に到着した私は少し外に出て振り返り、都いるかな、と駅全体を見渡した。


そこに、いたのである。

1週間も旅行が出来そうなほど大きなドラムバッグを斜めの肩掛けにして、今すぐ山にも登れそ

もっとみる
さかもっちゃんの話 #5

さかもっちゃんの話 #5

「池袋、着いたんだけど」

来た!
本当に来た!!
「あ、今迎えに行くから東口の、ユニクロの方向かって歩いて来てて!」
私は大将に「友達来たわ!迎えに行ってくる!」と言って荷物も置きっぱなしで急いで駅方面へ向かった。

人世横丁のアーチを抜けて、煌びやかなサンシャイン通りへと、昭和から平成への時空トンネルを駆け抜ける。更に進んでユニクロの前辺りに、さかもっちゃんらしき人が歩いているのが見えた。

もっとみる

さかもっちゃんの話 #4

褒められていると気付くのに、数秒かかった。

よく見ると、さかもっちゃんもニヤリとしている。
私は嬉しくなりニコニコしながら
「他社製品をお勧めしながら、もし大量購入の機会があったら私の方買って下さいねって冗談言っただけだよ」
と言うと、さかもっちゃんは本当に楽しそうに
「なるほどなぁ!お前、すげぇじゃん!」
と言って自分の持ち場に戻って行った。

一瞬の出来事だった。

しかしこの日を境に、さか

もっとみる
さかもっちゃんの話 #3

さかもっちゃんの話 #3

私は毎回「ありがとうございました!」とお礼を言ってさかもっちゃんの背中を見送りながら、その生態に興味を募らせていた。

それから何度か週末が過ぎその店舗で仕事をし慣れて来た頃、毎回コンビニでお昼ご飯を買って休憩室で食べていた私に社員さんが「最上階にある社員食堂を使っていいんだよ」と教えてくれたので、初めてそこで昼食を食べることにした。

従業員用エレベーターしか止まらない最上階に着くと、お世辞にも

もっとみる

さかもっちゃんの話 #2

「ふっ…ようやく襟を直したのか」

これが、さかもっちゃんが私に放った第一声だった。

さっきの挨拶の時「こいつ襟立ってるな」と思いながら無視をしていたという事だ。
あまりの変人ぶりに唖然としつつも、なるほど、新顔をいびるのが好きなタイプのヤツか。と思った。

時々いるのである。多くの派遣販売員が入れ替わり立ち代わりする中、数年単位で同じメーカーから同じ店に派遣され続けてその店の品揃えや陳列や他社

もっとみる