寺井暁子

作家。遠い場所や人との境界が消える瞬間を求めて旅をする。 「10年後、ともに会いに」「…

寺井暁子

作家。遠い場所や人との境界が消える瞬間を求めて旅をする。 「10年後、ともに会いに」「草原からの手紙」(クルミド出版)。新作が英治出版より近日発売予定。 2017年夏に娘を出産し、一軒家のシェアハウスで娘と5人メンバーとともに暮らしています。

マガジン

  • 夫婦ラジオ(パートナーシップについて)

  • ・日々スペイン語・

    暮らし(メキシコとチリ)や旅の中でハッとした言葉を題材にしたエッセイ集です。#スペイン語 #日常会話 の参考にもどうぞ。

  • 母と子のあいだ

    日記のような、エッセイのような、ポエムのような、つぶやきのような。とにかくごちゃまぜで日々を綴ることにしました。母と娘の間を揺れながら生きています。

  • 「言葉の個展」を開いてみる

    普段は本や雑誌に文章を書いている文筆家が 言葉の展示会をつくってみて気づいたこと、 現在進行中の展示の記録です。 ーーー The first year 「海とマグマとシャボン玉」 母になって最初の1年の散文 ・娘のこと、母のこと ・シェアハウスで暮らす日々のこと ・人の中で子どもを育てる試み ・旅の形が変わって、気づいたこと https://www.facebook.com/events/191930781702858/ ーーー

  • 暮らしと旅のエッセイ

最近の記事

孤独な散歩者の夢想(ルソーの本を譲り受けて)

少し前に、ご近所さんから大量の蔵書をいただいた。その家は、私たちが引っ越してきた時にはもう空き家になっていて、時々、私と同年代と思われる親戚の男性が黙々と中を片付けにきていた。ほとんど繋がりのなかった家の主人は、伴侶や子どもと死別し、施設に入っていると、別のご近所さんか聞いたことがあった。 ある時、紙ごみとして雪に濡れていく本たちをどうしても放っておけず、我が家で引き取れないか相談した。好きなだけ持って行っていいんですよと、男性は穏やかに言った。 回収車が来るまでほとんど

    • 浅葱色の時間

      庭で育てていた藍を刈り取って、藍染めに挑戦してみた。 綺麗な浅葱色が嬉しくて、春先に小さな芽をいっしょに見つけてくれた近所の友達に写真を送ったところ、はっとするコメントが返ってきた。 「家族の色だね!」 藍は刈り取ってから空気に触れる時間が長いほど緑がかった発色になり、素早く染められるほどインディゴブルーに近くなるらしい。 たしかにこれは、いまの私たちの色。 たたき染めは、葉っぱの置き方で食い違ったが最後、なかなか先に進めず。ああでもないこうでもないと 何度もやり直

      • 響き合う遊びがしたい

        私の好きな旅先の街には、ほぼ例外なく広場がある。



 そこでは、なんとなく人が集まっていて、
作品見せ合ったり、売っている人もいれば、時たまに
議論ふっかけあっている人もいる。

誰かがギターを出してきて歌ったり、

もっと夜が吹けると、そこに詩人の輪ができる
 もちろん友達同士が、そこで待ち合わせしてどこかに出かけたりもする。

直接お店で集合じゃなくて、わざわざそこで集まるということに意味があるんじゃないかと思っている。 

知り合いを見かければ、元気?って声を

        • 作品にとっての、良い親でありたい

          年末の日記にこんな走り書きがある。 ふと気づく瞬間があった。 作品は、自分ではない。自分の子供だ。 作品には作品の命と意思があって、それを私が まだダメダメだから、なんて言って、止めてはいけない。 作品が望んでいること、 たとえばこの話を誰かに聞きたい たとえばこの疑問をクリアにしたい  この問いにもっと向き合ってみたい。 作品が結ぼうとしている関係性を、 それは最終的に使わないかもしれないから、 なんて理由で親がとめてはいけない。 作品も成長している。 それを認め

        孤独な散歩者の夢想(ルソーの本を譲り受けて)

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          夫婦ラジオ、最初の試み

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          夫婦ラジオ、最初の試み

          夫婦ラジオ、最初の試み

          色々と原稿が溜まってしまっていて、本当は新しい文章なんて書いている場合ではないのだけれどもう書かないと潰れそうなので、書くことにした。

          色々と原稿が溜まってしまっていて、本当は新しい文章なんて書いている場合ではないのだけれどもう書かないと潰れそうなので、書くことにした。

          5. 言葉から生まれる

          展示の開始からopeningまで https://www.facebook.com/events/191930781702858/ Opening partyやったら?と提案してくれたのは13階を一緒に借りているアリス(別のお部屋)。 ギャラリーのopeningというのには密かに憧れがあったのだけれど、要領が良い方ではないことは自覚しているので、企画するのは難しいだろうなと諦めていた。しかし女優としているアリスが、朗読と即興のダンスをプレゼントしてあげると言ってくれて一気

          5. 言葉から生まれる

          4 .日記とこぼれ落ちた言葉たちのこと

          (前日からopening party まで) https://www.facebook.com/events/191930781702858/ アトリエスペース、通称マグマ部屋には 本を意識していたのもあり、 1年の物語の粒度を細かくするために 日記の抜粋を展示する予定だった。 いざ、イラストレーターに打ち込んで 印刷して貼り出してみると壁が忙しくなりすぎてしまった。 1年で4冊に渡った私の日記はだいたい気まぐれで かなり詳細な描写や記録がある日、ひとことしかない日、

          4 .日記とこぼれ落ちた言葉たちのこと

          3. 成長する展示 (期間のこと)

          展示期間を10日と長めにした。 せっかくリアルな場があって、 けっこう自由に使わせてもらえるので 会期中に姿が変わっていく展示にしたい。 この前、私が部屋に いったん言葉を貼ってみたときにやってきた友人が これはプロトタイプにした方が面白いよ。 来てくれた人たちとの出会いから 次の展開につながるかもよ、とアドバイスをくれた。 本や記事は完成形を見せるけれど 未完成からひらいて成長していく場も 面白いかもしれない。 書き換えたり、張り替えたりできる形を また別の仲間がデ

          3. 成長する展示 (期間のこと)

          2.浮遊する言葉 (準備編)

          ページの代わりに 真っ白な部屋 そして大きな窓。 壁や窓に言葉を並べてみると 紙の上では馴染んでいた言葉たちが うまく浮かんでくれなかったりする。 少し削ってみると軽やかになったり、 少し言葉を足してやると 翼が強くなって うまく宙に留まることができる。 普段は旅ものやドキュメンタリー 随筆やインタビューを書いていて 文章を比較的ぎっちり編むのだけれど こういう時は 適度に空気を取り込める  空気を味方につける  ということが大事みたいだ。 本の世界を飛び出してみる

          2.浮遊する言葉 (準備編)

          1. 文章の展示会をしてみる

          文章の展示をしてみようと思う。 娘が生まれて15ヶ月。 母になって初めての1年を綴った散文を外の風に当ててみることにした。 このnoteでは、 文章を「展示」してみたらどうなるのだろう という、小さな実験の記録を綴ってみようと思います。 個展:  The first year 「海とマグマとしゃぼん玉」 ・「母」について感じたこと ・三鷹の森に暮らす日々のこと ・人の中で子どもを育てる試み ・渋谷の共同体でまなんだこと ・旅の形が変わり、気づいたこと ー 散文の展示

          1. 文章の展示会をしてみる

          9.11.2018

          気の重い、夜の電車。 白、黒、茶色、デニム。 ゆったりした鮮やかなピンクのワンピースと、白いコンバースのスニーカー、レモンピンクのバッグをもって、私の向かいの席に座っていた女の人へ。 ありがとう。

          暮らしの始まり サンチアゴ

          メキシコの去ってからなんだかんだと4ヶ月もかかってしまった旅を終えて、ようやく次はチリのサンチアゴで暮らしはじめます。(ちょっとの間ですが) 家族経営のこじんまりしたホステルにベッドを借りて、12年前にお世話になった語学学校に再入学の手続きに行ってきた。初めてここに来た時は全く話せなかったけれど「上級クラスでいいよ」と言われて、ちょっとほっとした。 私のスペイン語は、当時一緒に暮らしていたスペイン語の先生と仲良くなったスラムの男の子、ふたりからの贈り物だから、実用性とサバ

          暮らしの始まり サンチアゴ

          好きな友人の町で暮らす。

          世の中、別れの歌が多い。友人に関してはとくに多い。 “僕らは別々の道を選んで、手を振り合うけれど、続いていく道のどこかできっとまた会いましょう” 卒業シーズンに、リズムを替えメロディーを替え流れるこのメッセージでは、仲のよい友人同士は、涙をこらえて、あるいは流しながらでも離れていくことこそが美しいとされていて同じ場所へと巣立っていくことは想定されていない。 友人とは人生のひと時をともにしても、時が来たらそれぞれに生きる場所を見つけることを求められている。恋人と新しい町で

          好きな友人の町で暮らす。

          図書館讃歌

          日々、この町が好きになっていきます。 好きな所はたくさんあるけれど、ひとつ挙げるとしたら図書館の多さです。 オアハカの町は、歩いて(あるいはバスに10分でも乗れば)どこにでも行けてしまうサイズなのですが、そんな小さな町でこんなにも図書館が多い町を他に知らない。公立、私設含めて、知っている限りでも10つあります。 よく通っているのは4つ。今日はどこにしようかなと、朝から真剣に考えたりします。 図書館で原稿を書いていると背筋が伸びてきます。本棚から古いインクの匂いが香って

          図書館讃歌

          AL SOL 太陽の名前の赤いアパート

          AL SOL 太陽の名前の赤いアパート