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共感サークルを体験してみたら、子どもの自分に出会った ~NVCお話会レポート②~

(前回の概要)
新年明けてまもなく、我が家でNonViolenceCommunication
(NVC)を知るための『NVCお話会』をかおりんこと土屋香織さんをファシリテイターに迎えて開催した。共感と共感でないものとの違いや、ニーズについての学びのあと、自分自身のニーズを探してみる自己共感に取り組み、まさに自分は他者との共感を必要としていることに気が付いた。午後はいよいよ共感サークルが始まる。NVCとは何か、についても前回をご参照ください。表紙の画像はかおりん撮影。

共感サークルを体験してみたら、子どもの自分に出会った

共感サークルとは、複数人で輪を作り、一人ずつ心にひっかかっている出来事などを輪の中で共有し、聴いている人たちがその人が必要としているニーズを推測、ニーズが書かれたカードを渡す、というものだ。
ニーズは当てなければいけないものでもないし、渡された側もそれ違うと自分でジャッジするものでもない。ただ、「あなたが必要としているのはこれかな?」とニーズを受け取ったら、自分の中でどんな思いが浮かんでくるのか、それを味わう。
それだけで何が変わるのか、と思うかもしれないが、今回の共感サークルはオレにとって初めてのリアルな対面だったので、そのインパクトはやはり大きかった。

4人1組の輪となって、まずオレから話を始めた。何せ自分のことを話したくてうずうずしていたことは前回書いた。

5分という時間の中でどこまで話せたかわからないが、だれにも遮られない、だれにもジャッジされないことが約束された安心感で、言葉がとめどなくあふれてきた。もうそれだけでだいぶ自分の中ではじんわりしたものを感じていたのだが、話おえると聴いてくれた輪の人たちが、ぽつりぽつりとニーズカードを渡してくれる。

静かに、必要最低限の「~が大事なんですね」「~を必要としているんですね」という言葉がじわーと身体に広がっていく。オレのためにそのニーズを探してくれて選んでくれたという気持ちがとても嬉しかった。
いつも自己共感で探り当てる自分にはおなじみのニーズも多かったが、誰かにわたされる、という行為がよりそのニーズを特別なものに感じさせた。
また、自分では予想もつかなかったニーズを渡されたとき、自分で感じないようにと無意識に抑え込んでいたのか、何か窓を開けたような心地よさを感じもした。
もう少し言うと、子ども時分の延長としての自分が「~したいのに」とリクエストしている声を聞いた気がした。ニーズに気が付いた自分が子どものように素直に思えたし、子どものころの自分をふと見た気がした。リクエストをかなえられるかどうかは関係なく、子どもの自分の気持ちを慈しむ感覚にあふれた。

そうして、誰かに解決策を教えてもらったわけでも、人生訓を講じてもらったわけでもないのに、不思議と自分の内なる力が湧いているのを感じている。

そして次の人に順番が回り、今度は自分がその人が何を必要としているのか、口を挟むことなく静かに聴き入る。
そうすると、良いとか悪いとか、かわいそうとか、正否を問う気持ちではなく、その人の中に視線が移っていくような感覚が起きる。もともと自己中で自分視点ばかりでいる自分には戸惑いすら覚える感覚であった。
ある人が、なんでもない話なんだけど、と話してくれた中に、とても大事に抱えているニーズを聞かせてくれたという感覚もあった。
そうして自分にしてくれたようにニーズカードを選んで手渡すと、何かつながりが生まれたような感覚が生まれていた。おそらく価値観は全然違ってる人同士なのに、もっと奥深い人の中に共通した大事なものへの”共感”がそれを生み出していたのだろう。ここにNVCの目的の本質が少しだけ見えた気がする。

会は最後に感想を述べるところで終わったが、初めてNVCに触れた人でも共感のもたらす力に触れられたようだった。

主催のかおりんとは、この共感サークルを継続的に開催していこうと話をした。今回はこのNVC、というか、共感、ニーズということについて、話ができる人がリアルに側にいることの心強さを実感した。
ニーズリスト風に言うなら、今回満たされたのは「共感」「安心」「理解すること」「誠実さ」「美」「平等」「空間」。
この輪が広がれば、この田舎でもきっとお互いのニーズを尊重しあえるもっと暮らし心地の良い場所へと変わっていけるだろう。そんな期待が膨らんだ。

問題解決には届かないが、前には進める

少しだけ自分の感想を補足すると、
共感サークルや自己共感で自分のニーズを掘り起こすことは、自分の核心に触れるような感覚がして、感動的な体験と言えるかもしれない。
だが、それだけで何か問題が解決するわけでない。NVCではさらに他者へのリクエスト、調停などの段階があり、実践的なコミュニケーション方法であることは確かだが、NVCの手法を知っている者同士ならいざ知らず、実際に反発しあうような人とNVCを実践し共感をえて問題解決にあたろうとするのは、かなりの技術と勇気が必要そうだ。ましてやNVCが可能と示している紛争解決などのレベルにたどりつくには相当な積み重ねが必要と感じる。

現時点では、他者のニーズよりも前に、まず自分のニーズに自分で共感して、自分自身のことを思いやれる、前に進める力を感じる、というところまでが精いっぱいかもしれない。

ただ逆に言えば、それこそがNVCの根幹として、まず自分が満たされるということがすべての始まりに位置づけられている。誰かにこうした方が良いとか、君のこんなとこ良いんだから、とか、他人の視点ではなく、自分自身で自分の大事なものを見つけた、ということは大きな自信になる。

そのような自己共感を繰り返していると、うっすらとだが他者の大事にしている何かに、あ、あの人そういうことかもしれない、という気づきに出会えたことも自分の経験として付け加えておく。

ニーズはいつも同じとは限らない

また、一度自己共感なり共感サークルなりで、自分のニーズが明らかになった、と晴れた気持ちになったからといって、それが全てではない、ということも自分の経験からは言えそうだ。
どちらかというと、日々起こる個々のケースにおいてそれぞれニーズを探っていき、その都度新たな自己を発見する、という感じだ。
日々暮らしていればいろんなモヤつくことや衝突することが出てくるが、自分のニーズはわかってるから、と対処しようとすると、かえって自分に融通の利かない硬直感に自分が支配されていたことがある。
何かコトがあれば、都度自己共感を繰り返し、そのたびに出会う自分のニーズを思いやる。新しいニーズとの出会いはとても新鮮で驚くが、いつもと同じニーズだったとしても初めて出会ったニーズのように感じられるし、そんな自分を毎度慈しんでいる。
これを繰り返していくうちに自分に何が起こるか。それを確かめてみたい。

前編後編とも自分の理解している範囲のNVC、経験の中で感じたNVCってこんな感じ、というのを書いてきたが、専門の方から見れば誤解していることもあるかもしれない。自分の理解が全てでないことは添えておきたい。
もう少し簡潔に書けたらよかったのだけど、「書けることは全部書いときたい」という「自分を大切にする」というニーズを満たすことを大事にしてみた。
また専門の方には、田舎の片隅でNVCについてこんな風に受け取って日々の力になっている人もいる、ということを少しでも知ってもらえたら幸いだ。

NVCを知るにはオンライン・オフラインどちらでも入門セミナーなどで一度体験してから、書籍を読むとより気づきが多いとは思うが、いまいちセミナーなどに気乗りしない方は、書籍だけでもニーズを引き出していく魔法のようなコミュニケーション例がいっぱい載ってて楽しいから、一度読まれてみてはいかがだろうか。

「共感」の言葉で話をしてみたくなった人は、ぜひ我が家へ。


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