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大企業人事を飛び出してベンチャー人事にチャレンジして見えた5つの違い

こんにちは。デザイン会社グッドパッチで人事責任者をしてますチャッカマンこと井出です。
16年間2社の大企業の人事を経験した私が、一念発起してベンチャーの人事に挑戦をして経験した背景や挑戦してみた結果見えてきた大企業とベンチャー人事の違いを書いてみたいと思います。人事としてのキャリアどう積んでいくのがいいのか、悩んでいる人の参考になったら嬉しいです。


キャリアの紹介

今回が初投稿なので、簡単に私のキャリアを紹介させてください。

フェーズ1:工場人事@パナソニック

新卒でパナソニックに入社しました。配属は地方にある工場の人事(総務)スキル評価という新人事制度の導入をリードさせてもらったり、その延長で人材育成委員会を作って中長期のスキルアップ・スキルチェンジを推進するなど、その後のキャリア形成の礎となる貴重な経験が積めました。

当時は「HRBP」という言葉はまだなかったですが、工場という現場の中にある人事は自然体で現場Firstであり、現場のために仕事をするスタンスが染みつきました。

パナソニック 松本工場

フェーズ2:海外人事+海外赴任@パナソニック

パナソニックに入社した動機は「グローバルに活躍する人材になる」でした。その希望を言い続けていたところ、海外人事のアサインをいただくことができました。

アメリカ・メキシコ・ドイツ・チェコの子会社の担当人事をさせていただき、ドイツに数ヶ月単位で出張させてもらって、現地の人事と一緒に現場の人事課題の解決に奔走したり、最終的には中国の合弁製造子会社に赴任させていただく機会を得ることもできました。

日本とは異なるカルチャー・価値観がベースの国の、しかもホールディングスの人事部門ではなく事業会社で大きな変革期にあった会社のど真ん中で、人事のあらゆる領域の仕事を通じて、会社の変革と成長を牽引するような仕事をさせていただきました。

パナソニックオートモーティブ社 本社

フェーズ3:大企業での人事第二章@日産

中国に赴任していた私にどうしても芽生えてしまったモヤモヤがありました。それは中国にいながら経営の重要な意思決定はほぼ日本人がしているという実態があり、それで本当にグローバル企業と言えるのか、海外での成長を加速していけるのだろうか?という疑問でした。

そこで、役員の半数が外国人でグローバルダイバーシティがしっかり根付いている日産に身を移してみることにしました。

日産では企画部門やR&D部門のHRBP、そして日本人ビジネスリーダーの育成(幹部育成)の仕事を任せていただきました。特にビジネスリーダー育成の仕事はとてもエキサイティングで”一人一人のらしさに向き合いつつ、彼らの可能性に火をつける”という私の価値源泉につながる大事なものを掴むことができました。

日産自動車 グローバル本社

フェーズ4:再エネ上場ベンチャーでの人事責任者経験@レノバ

入社当時150人規模だった再エネベンチャーに転職しました。最初は人事企画的なポジションで制度企画や人材育成のしくみの導入などをリードしていましたが、途中からCHROと一緒に人事全体を見させていただくようになりました。3年で250人を超える規模に急拡大していく中で、さまざまな人と組織の課題に向き合い、課題解決の推進をしてきました。

軽米東ソーラー

フェーズ5:IT系ベンチャーでの人事責任者@グッドパッチ

グッドパッチには上場後200人を超えたくらいのフェーズでJoinしました。最初は経営企画に所属し、そこで人事を任せていただき、新卒、中途採用の一部、制度企画などを見ていましたが、半年後には人事専任組織のPeople Empowerment officeを立ち上げ、採用(中途デザイナー以外)・人材開発・組織開発・PX(People Experience)・人事制度・労務の人事領域全般を見させてもらうことになりました。

そのさらに半年後、組織は別ですがデザイナー採用をしている部門の責任者の兼務もするようになり、今に至っております。自分の責任範囲もチームのメンバーも数ヶ月として同じだったことがないという感じで、かつてないほどの激動の中を必死で走り続けています。

グッドパッチ オフィス

なぜ、大企業人事を離れてベンチャー人事に行ったのか?

大企業を離れて、ベンチャーへ転職する方は増えていると思いますが、こと人事領域に関しては、まだまだ珍しいのが現状です。私の場合は2つの理由がありました。

理由1: 人事領域の全てを総動員して事業成長に貢献したい

人事で組織を強くし事業の成長を牽引しようと思うと人事のあらゆる機能を総動員して取り組まないと実現できないと考えています。それを痛感したのが中国に赴任をした時です。

当時、会社全体の経営課題は「輸出依存型の事業モデルから中国内需向けに自ら事業創造をしていける会社に変革する」でした。そして組織課題は一言で言うと「ぬるま湯体質からの脱却」でした。それを実現させるためには、影響力の大きいポジションに変革を牽引できる人材の採用や登用が必要でしたし、それだけではなく、評価報酬制度もベースアップ的な昇給ではなく、KPIと連動した業績連動型の制度への変更が必要、またトップが全権を握るような権限のあり方も組織構造から変えて各機能組織の責任者に責任と権限を渡していくような組織構造に変えることも必要でした。

この経験から人事として会社変革や事業成長を牽引するには人・組織に関わる全ての人事領域を総動員して課題解決にあたる必要があり、そういったスケールの仕事で会社組織と社会にインパクトが出せる仕事を今後もやっていきたいと思うようになりました。

理由2: ”個に向き合う”をやり続けたい

人事の現場は“人”であると考えています。誰かが言っている他者の話には、必ずバイアスが入ります。自分自身で一人一人と対話の機会を持ち、自分なりのViewを持つことが大事だと考えています。

そして、一人一人には異なる持ち味(らしさ)と人生ストーリーがあります。そこに向き合い、何ができるかを考え、一戦必勝の精神で面談のたび何かGiveをすることを心がけ、そして一人一人の可能性に火をつける。

日産でリーダー育成を任せていただいた際は、リーダーシップアセスメントの導入やOff JTでの研修プログラムの提供など、さまざまな取り組みをしていたのですが、私が一番自分自身でこだわってやっていたのは、一人一人のタレントとの面談でした。

本人も気付いていないその人らしさをキャリアストーリーの中から見出し、ギフトとしてキーワードを渡す、そこを起点にキャリアをどう作っていくか一緒に考える、そんな仕事では、これまで感じたことないような大きなやりがいを得ることができました。

2つの条件を両立させるには、ベンチャーしかなかった

私の場合、ベンチャーへの転職は、人事としてのキャリアを積んでいくのに大切にしたい軸が見えたタイミングで考えました。

大企業で人事全体を見て会社の成長を牽引するような仕事をしようと思うと、人事のTopを目指していくことになりますが、実力もさることながら、大企業で上り詰めるのに必須な政治力が自分には決定的に欠けているという自己認識があったのと、運良くそこに到達できたとして、もう一方の現場レベルで“個に向き合う”仕事をするのはほぼ不可能だ、と悟りました。

そして、やりたいことを実現するには、組織規模が大事ということに気付き「そうだベンチャーに行こう!」と、キャリアを大きく変えることを決心しました。

大企業人事とベンチャー人事の違いとは?

とはいえ、大企業とベンチャーの人事では大きく異なる点もありました。転職して自分が感じたのは以下の5つ。あくまで私の場合、という形で見ていただければ幸いです。

違い1:ベンチャーは前例も規定・ルールも何もない

大企業で仕事をしていた時に、とても助かった一方で、常に思考停止を招いたものが前例とルールでした。

個別対応が必要な事象が発生すると、必ずと言っていいほど、前例は無いか、もしくはルール・規定(内規含めて)はどうなっているのか、を確認することが必要で、理由が腑に落ちるものではなかったとしても、それらには従わなければいけないことがほとんど。大きい会社で個別事由は認め出すとキリがなくなってしまうので、基本的には認めない。が前提のスタンスにあったように思います。

他方、ベンチャーでは個別対応は日常茶飯で、その時々の最適解を出します。レノバにいた時に「国際結婚をした社員がパートナーの国に移住したいが、社員として継続して仕事をしたいができないか」という相談をされたことがありました。ビザや税務の問題を乗り越えてもらう必要はありましたが、その国においては日本拠点の会社の仕事を現地で継続できる目処が立ったので、社員身分を維持することができました。

ベンチャーだと一人一人が替えの効かない存在であることも多く、そういったメンバーが会社を離れるインパクトは大きく、それを考えると個別最適の判断をした結果仕事が継続でき、会社への貢献もし続けてくれのであれば、十分Win-Winを築けるケースも多いと思っています。

違い2:新しいことへの挑戦と裏にある性善説と性悪説

最近、グッドパッチで、各種制度における「配偶者」に事実婚カップルや同性パートナーも認める、という制度改定を行いました。特に同性パートナーについては、公的証明ができる市区町村は少数になるため、性善説で自己申告をベースに判断するしかありませんでした。

この制度の導入を進めながら、きっと大企業だったら難しかっただろうな、と思いました。人数が多いことから、制度を悪用する人が出る確率はどうしても高くなりますし、各現場の人事や管理職の管理も大変になるといったデメリットが考えられるからです。

その点、ベンチャーではリスクはゼロではないですが、経営者のスタンスが性善説で一致してさえすれば、多少のリスクをとった判断もでき、ちょっと攻めた仕事ができる感覚を持って仕事をしています。

グッドパッチ、事実婚や同性パートナーにも社内制度や福利厚生を適用

違い3:人事ごとへの当事者意識の違い

これも大企業とベンチャーで大きな違いを感じます。大企業の人事はCoEとHRBP、シェアドサービスは明確に分かれているので、例えば、HRBPだとそもそも制度に関しての権限がないので、それを現場の管理職やメンバーも分かっていて、不満や違う考えがあっても言ってきません。
CoEも会社の上層部や組合の代表との協議などはしますが、最末端の現場のメンバーと話すようなことはほぼありません。

ところがベンチャーは違います。時に役職のないメンバーであっても、自分なりの意見を人事にくれます。そういったメンバーは人・組織の課題への当事者意識も高く、会社を良くしたいという熱量も高いので、こうあるべきだという持論も持っていて、一緒に考えてくれたりもします。

現場メンバーとの距離、ここは本当に大きな違いを感じます。

違い4:人事哲学の違いのある/なし

大企業、特に新卒中心で組織を構成している会社は、必然的にモノの考え方、価値観などが均質化されているところがあり、哲学論争になることはおおよそありません。

ところが、中途が7割、8割のベンチャーは全く違います。それぞれのメンバーが前職以前の会社で良いと思っていたものを持ち込んでくるので、トラディショナルな日系企業とゴリゴリの外資系、ベンチャー・スタートアップ出身者では、組織や人に関する哲学が全く違います。時に真逆とも言えるような意見の違いが発生することもあり、どうまとめて前に進めていけばいいのか、苦慮したこともありました。

違い5:責任と処遇

給料はやはり大企業の方が良かったと思います。持っている責任範囲や意思決定の重さなどを考えると、ベンチャーに移ってからの方が圧倒的に重い。やりがいは増えているとも言えます。

ただ、給料はベンチャーに移った当初は下がりました。そこから頑張って戻してきましたが、今でも大企業最後の頃の水準と大きく変わっていません。私は給料については、一定水準以上へのこだわりは薄く「やりがい重視」のため納得してますが、ここは人によってはコスパが悪いな、と感じることもあるかもしれません。

人事の役割そのものは、本質的には変わらない

いかがだったでしょうか? 大企業2社、ベンチャー2社で人事の経験をして見えてきた違いをまとめてみました。

今回は違いにフォーカスしていますが、逆に共通しているのは「組織と人の課題解決を通じて、Mission/Visionそして、事業成長を牽引する」という人事の役割は本質的に一緒で変わりません。

今ベンチャーの人事を大変ながらも楽しくやらせてもらっていますが、リーダー育成だけの仕事だけをやれた大企業時代は、インプットする時間も多く作れていたので、ああいう働き方も何年かに一回はできるといいな、と思うこともあります。なので、違いを理解しながら、よりFitする環境に身を置くのが正解なのではないかと思います。

終わりに

グッドパッチではデザイナー系職種もそれ以外の職種も多くの職種で採用ポジションをオープンにしています。興味もったポジションなどありましたら、カジュアル面談から是非させていただきたいので、ご連絡ください!


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