『なぜ五日市のノラボウはうまいんだんべぇ!?【のらぼう菜は樽菜?】』(みちくさストーリー④)

五日市で古くから栽培されてきた「のらぼう菜」は、寒さに大変強いナバナ(アブラナ、ナタネ)の仲間です。
五日市の小中野地区にある子生神社境内には、天明・天保の大飢饉の際、「のらぼう菜」が人命を救ったことを伝える碑があります。古文書によると、明和4(1767)年、関東郡代官、伊奈備前守が「闍婆菜(じゃばな)」の種を五日市村を含め、周辺12の村々に配布するように命じたということです。食用のほか、油を採るためとも書かれています。セイヨウアブラナの系統とされ、闍婆菜の名前から、当時ジャワ島周辺を支配していたオランダ(東インド会社)の船が持ち込んだものではないかと考えられています。

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名前の由来については、野良に生える=野良ばえが転じたもの、野良坊という字が当てられることもあるため、野良=畑に生えている坊主という愛称からきたという話や、検地に来た代官が「あの作物はなんだ?」と指摘した際に、「あれは野良にぼうぉ〜と生えてるだけです。」と作物であることを否定したことに由来する説など、諸説あるようですがはっきりしません。私は暖かくなると、掻いても掻いても次々に脇芽を出して伸びていく様を見た村人が、野良にあるすぐに蓬(ほう)ける(草や髪の毛などが、ほつれ乱れる。けば立って乱れる意)菜花という意味で「野良ほうけ」が訛ったものではないかと考えています。そもそも野良という言葉自体に怠けるという意味がある事から、掻き取るのを怠けていると、直ぐに蓬けてしまう菜っ葉という意味が含まれていたのかもしれません。
今の時代まで「のらぼう菜」が地域に根付き、残った背景には、他のアブラナ科と交雑しない独自の性質が大きく働いていたという説もありますが、反対に交雑しやすい性質で、実際にいくつかの品種が存在しています。過去に複数あった品種から1番美味しい品種を選抜して、代々その系統から種子を採って苗を育てています。五日市で現在、主に栽培されているのは、鳥の巣石灰岩の露頭が広がる樽地区で栽培されていた(いる)ものです。初代秋川流域ジオパーク推進会議代表である故樽良平氏は、のらぼう菜と石灰岩が風化して出来た土壌、樽地区の気候との相性の良さを盛んに説かれていました。(樽さんの勇姿はこちら→http://www.tamatan.tv/archives/20120701_norabou)
何を隠そう今出回っているのらぼう菜の素は樽さんが栽培していたものなのです。五日市のらぼう菜=樽ジオのらぼう菜ということです。

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旬は3月中旬から4月。ギザギザの葉のふちや、茎などに赤紫色がほんのりと出るのが五日市のらぼう菜の特徴とされています。ナバナよりも苦味が少なく、茎の部分がとても甘いのが特徴です。寒暖差の激しい五日市周辺地域で栽培されたものは、寒さから身を守るために植物体内に糖分を蓄積させるため特に甘く、また成長が抑えられるため、柔らかく食べやすいのが特徴です。冬場は害虫もほとんど活動しないため、ほぼ無農薬で栽培されていることも魅力の一つです。
旧五日市町周辺は、地殻変動や河川の浸食により、長い時間をかけてすり鉢状の地形=盆地になっています。このような地形ではお風呂の底に冷たい水が溜まるように、冷気が標高の低い盆地の底の部分に溜まりやすいので、五日市は朝晩の冷え込みも強く、野菜の生育も抑えられていると考えられます。
五日市独特の土壌と地形の影響で美味しく育つ春の伝統野菜『五日市のらぼう菜』は、まさに秋川渓谷のジオフードの大将です!
ビタミンCや繊維質が豊富で、あく抜きの必要がなく、茹でてもかさが減らない。さっと茹でて、おひたし、ゴマ和えは最高です。パスタやピザ、汁物にトッピングするのもオススメです。最近はのらぼうゼリーやのらぼうアイスも登場しています。
まだ食べてない方は、ぜひ早春の秋川渓谷へ!!
https://tokyogrown.jp/product/detail?id=571259
(TOKYO GROWN 東京の農林水産総合サイトへ)

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参考
・散歩の達人 1999年5月号 江戸野菜の産地を歩く のらぼう
・第99回多摩探検隊「伝説の『のらぼう』を追う!」(中央大学FLP松野良一ゼミ)
http://www.tamatan.tv/diary/20121001_norabou/

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