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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2017年9月の記事一覧

アーネスト・ヘミングウェイ 『こころ朗らなれ、誰もみな』

★★★★☆

 ヘミングウェイの短編を集めた選書です。19篇収録。柴田元幸翻訳叢書のシリーズです。

 全集を読んでしまったので、当然、読んだことのある作品しか収録されていませんでした。
 なんで読んだの? バカなの?という声が聞こえてきそうですが、訳者が変わるとどうなるのかな?という好奇心が湧いてきて手に取った次第です、はい。

 選んだ作品は概ねよいと思いますが、『キリマンジャロの雪』と『フラ

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アーネスト・ヘミングウェイ 『全短編Ⅱ』

★★★★☆

『全短編Ⅰ』を読んだときに、Ⅱを読むかどうかは決めかねてる、と書きましたが、気がついたら読んでいました。
 Ⅱは未発表作品を含んでいます。解説と年譜もあり、Ⅰとは別の意味でも読み応えがあります。Ⅰの方が有名な作品が多いのですが、クオリティは変わりません。ヘミングウェイをしっかりと堪能できます。

 ヘミングウェイというと、無駄を廃し、研ぎ澄まされた文体という印象があり、それは本作にも

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クレメンス・マイヤー 『夜と灯りと』

★★★★☆

 旧東ドイツ出身の作家による短篇集。12篇収録。2010年にクレストブックスから出ています。

 社会的に見棄てられた人々が次々と出てきます。市井の人々ではなく、失業者、囚人、過疎化した村の独居老人など、窮乏した生活をおくる下層に位置した人たちしか出てきません。
 そして、物語にも救いはありません。
 心がホッコリするようなよい話とは無縁です。陰鬱でみすぼらしく、希望など欠片もありま

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カート・ヴォネガット 『人みな眠りて』

★★★★★+♥

 ヴォネガットの未発表作品を集めた短篇集。1950年代に書かれたものなので、まだ作家としての地位を確立する前のものです。没後10年目にしておそらく最後の著作となるでしょう。蔵出しの1冊です。

 ヴォネガットは自分のお父さんに「おまえの本には悪人が出てこなかったなあ」と言われたそうですが、たしかにヴォネガットの小説には真の悪人というべき人は出てきていない気がします。すべての作品

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