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贅沢!『MROアナウンサー朗読会&松本俊明ピアノコンサート』

太陽フレアに世界がざわついていた令和6年5月11日土曜日。
この日間違いなく石川県で一番賑わっていたのが野々市市であったろう。
というのも能登半島地震チャリティ企画で地元の放送局のMROのアナウンサー4人による朗読会と日本のみならず世界の音楽業界でも活躍されている作曲家でピアニストの松本俊明さんによるピアノコンサートが野々市市文化会館で開催されたからである。

雲一つない青い空。容赦なく照りつける太陽。
最高気温が30度を超える夏日となったが幾分か風が吹いてくれていたのでまだ暑さにも慣れていない体への負担はそれほどでもなかった。
天気も味方してくれている。そんな気がして足取りも軽かった。

13時30分の開場にあわせて続々とお客さんたちが集い長い列となった。そして開場と同時に席は埋まっていった。
入場整理券は前もって数か所に設けられていた受付窓口でしか入手できないシステムとなっていた。
SNSでこの情報を知った僕はその日のうちに申し込みに受付窓口へ足を運んだ。
その判断は正しかった。
案の定限定200席の入場整理券は受付開始後間もなく受付締め切りとなった。
開場の列に並びながらこの手にある1枚の整理券を見つめて改めてあの日の自分を褒めてあげたいと思った。

そう思える程素晴らしいイベントだったのだ。

整理券を提示し半券にもぎってもらうとフレッシュな声と笑顔で募金箱を抱えた新人アナウンサーのお二人が頭を下げて挨拶していた。
こちらこそありがとうございますという感謝の気持ちでいっぱいになった。
入場料の代わりに募金をさせていただき奥へと進んだ。
14時開演。ベテランの川瀬裕子アナが登場。このチャリティ企画に込められた思いを語ってくれた。
その語りに僕は芸術やエンターテインメントを通じて社会の役に立てることの素晴らしさを見直させてもらえた気がした。助け合うことを実感できるのがチャリティ企画なのだ。
川瀬アナは共に朗読をお届けする後輩アナウンサー3名を紹介していった。
そして全編を通してピアノ演奏される松本俊明さんも拍手で迎えられ役者は全員揃った。

川瀬裕子アナ、牛田和希アナ、石橋弘崇アナ、兵藤遥陽アナが横一列に並び松本さんのピアノ演奏と共に絵本の朗読が始まった。


作・くすのきしげのり『LIFE』
作・荒井良二『あさになったのでまどをあけます』
作・松本俊明『グラスホッパー物語』

心地よいピアノのメロディが世界観を広げ透き通った4人のアナウンサーの語りが爽やかなそよ風のように会場を包み込んだ。
松本さんとラジオ番組で共演されている石橋アナの心を解す笑いを誘う軽妙な掛け合いで会場が沸きたち松本さんとお客さんとのふれあいコーナーと題してピアノの連弾が繰り広げられた。選ばれたのは8歳の少年。3歳からピアノを習っているとのことでばっちりきまったネクタイで堂々と松本さんとセッションする姿にこちらも自然と顔がほころんだ。
会場はすっかり温かな空気に包まれていた。
そして松本俊明さんによるソロのピアノコンサートがはじまった。
時が止まったように一瞬にしてピアノの世界にいざなわれた。
あれは魔法だったのかもしれない。

●月という名の雫

●NHK『みんなのうた』提供作品メドレー
見えない羽根~グラスホッパー物語

●月の庭

●Requiem~能登への想い~

●おはようユニバース

●Everything

●(アンコール)明日へ

アンコール含めて全7曲。豪華すぎる至福の時間を会場にいた全ての人達と共有できたことは曲の持つ力の偉大さの証でもありました。
どの曲にもエピソードがあり、それらのエピソードは曲の背景に留まらず世界中の人たちのそれぞれの人生の一部になっていることに気が付いたのです。はじめて聴いた曲でもそれは今日から、今日をはじまりとする物語になったということでもあります。全ては常にはじまっているということを教わった気がします。松本さんの根底にあるポジティブな前向きな言葉の概念も体の中から湧き上がる曲の情景や色、匂いなどのイメージに繋がっているのだろうなと生で音を感じてその発見にいたったのです。

有名過ぎて説明は不要なMISIAさんの『Everything』を頭のてっぺんからつま先まで一身に浴びて涙がこみ上げてどうしようもなくなりました。
あの時頭の中では歌詞がMISIAさんの歌声で流れてはいたとは思うのですが、ただなぞっているだけではない不思議な感覚に陥ったのです。言葉を超えた歌の力。これは無条件で勇気に成り得ると身をもって痛感しました。理屈じゃないんだなと理解できたのです。
会場ではすすり泣く方が大勢いました。音、曲、歌の持つ力の無限の可能性にありきたりな表現ですが感動しました。

そして能登への想いを曲にした『Requiem』は仮のタイトルだそうです。
即興で演奏した曲の反響がすごくて曲目に正式に加わったとおっしゃっていました。僕はそのお話をふまえてまっさらな気持ちで耳をすましてみました。この曲にはどんな名前が付けられるのだろう。
どんどん想いが加速していく。上昇していく。矢印は勢いよく進んでいくエネルギーを感じました。ただの勢いではないのです。そこには揺るがない強い祈りがありました。能登の傷付いた海、山、田畑、公園、商店街、学校、動物、花々、木々、苔、虫、土、大地、そこに生きる人々。
僕は咄嗟に配布されていたプログラムにメモしました。
(希望の土)(希望の大地)……。
願いの先に待つものは能登の原風景の飾らない光。
それはきっと希望なんだ。希望を抱くのは人で応えてくれるのは大地なんだ。掬い上げた土なんだ。土の匂いがしました。甘くて優しい匂いでした。天井を見上げたら涙が滲んでいました。
鎮魂歌はエールになって背中を押してくれるのではないかと涙をためながら拍手をしました。

松本さんの提案で会場にいた全員が立ち上がり『故郷』を歌い誰もが誰かに拍手を贈りチャリティイベントは幕を下ろしました。

終了後、僕はアンケート用紙に溢れ出る感動を感想の欄に書き綴っていました。
集中しすぎてどのくらい経っていたのでしょうか。書き終わって顔を上げると誰もいなくなっていました。
アンケート用紙をロビーのスタッフの方に渡し、物販の絵本を買いました。
というのも松本さんが絵本を書かれていたことを存じ上げていなかったので朗読で『グラスホッパー物語』を聴いて文字でも読んでみたいと思っていたからです。しかも購入者には松本さんにサインをいただけるとのこと。もう僕以外誰も並ぶ人もいなくなっていたので松本さんに思い切って「アキミチです」と声をかけました。
これも偶然というかタイミングが合ってしまったというか数日前に松本さんのラジオ番組で送った詩に曲をつけていただけたのです。松本さんは番組でおっしゃっていたのですが記憶力の達人で例えの達人というのも納得のまさに本物の達人なのです。顔も名前も一発で覚えられてしまう能力がおありになるのです。やはり松本さんは天才なのです。アキミチという名前だけで何もかも理解してくださったのでした。


緊張しているはずなのに緊張をかき消す魔法をかけられたように僕としては珍しく落ち着いてお話できたのも季節外れの夏模様のせいだったのでしょうか。それとも太陽フレアの仕業だったのでしょうか。
いいえ、きっと松本さんのお人柄のおかげだったのだと思います。




*2024/05/15追記

松本俊明さんのラジオ番組(MROラジオ『松本俊明の夕暮れノクターン』)放送から一週間が経ちました。通常の倍程はやく感じました。怒涛の一週間でした。
ときめき、いまだ衰えずです。
昨日noteに番組に送った詩をアップしたのですがビュー数がとてつもなく伸びており驚いております。ありがとうございます。
ラジコではもう配信期間が終了したので聴くことは出来なくなりましたが文字だけでも残しておこうと思います。
よろしければお読みください。

ここでひとまず「フィーネ(Fine)」です。







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