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山羊アキミチ
2023年5月26日 16:54
辺り一面に群生していたれんげ草に身を沈めて雲を眺めていた私は高揚していた。漂う甘い春の香りに色がついて見えた。剥き出しの潤った舌の色。後を追いかけてやって来たのは味わいを溢さない小さな突起の集合体。触れずともざらついているのがわかった。私は酔いしれる方を選んだ。粘液が桃の果汁のとろみで果肉を守る皮の産毛は指で剥いた。あの湾曲した桃の形。私は人差し指で頬をなぞってみた。そして深
2022年6月28日 22:24
私が人魚だった頃私は海の中をたったひとりで泳いでいました。ハミングが遠のいていく。いつも同じ声が木霊して。海月が天に召されるようなあぶくがわきあがる。私は追いつけないとわかっているのに海の中を泳いで手を伸ばしている。ここ最近は毎晩のように同じ夢をみる。目を覚ますとタオルケットは足に絡まり、扇風機が首を左右に振って回っている。生ぬるい風が汗で額にくっついた前髪を糊付けする