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山羊アキミチ
2022年6月28日 22:24
私が人魚だった頃私は海の中をたったひとりで泳いでいました。ハミングが遠のいていく。いつも同じ声が木霊して。海月が天に召されるようなあぶくがわきあがる。私は追いつけないとわかっているのに海の中を泳いで手を伸ばしている。ここ最近は毎晩のように同じ夢をみる。目を覚ますとタオルケットは足に絡まり、扇風機が首を左右に振って回っている。生ぬるい風が汗で額にくっついた前髪を糊付けする
2022年6月11日 18:34
アンテナを窓側に伸ばしたラジカセからフォークソングが流れていた六月 朝 雨姉さんはいつも以上に早くから台所へ立ち味噌汁と甘い卵焼きに大皿いっぱいのおにぎりをこしらえていたあの日寝ぼけて運動会でもあったかしらとわたしは外の雨の音と交互に姉さんの後ろ姿を目を擦りながら眺めてた叔母さんの割烹着を脱ぎながら姉さんは仏間へ向かったお鈴を鳴らし合掌しひとつ軽いため息をはい
2022年6月6日 12:12
はじめて隣の芝生が青くみえたのは石川啄木をおさげの乙女に変身させた君の鉛筆私は自分の書く字を好きになれなかっただからわざと濃く大きく書いて誤魔化した自信がないことを見抜かれないためにとめ、はねをこれでもかとわざとらしく枠からはみ出しては先生に注意された消しゴムの跡が浮き彫りでクラスの日誌で私のページは一番黒かった私は君の鉛筆がうらまやしかったそのうち君がうらやましくな
2022年6月1日 19:37
大人だから色々ある色々は色々さ面倒なこと聞いてくるやつだなどうも調子が狂うでも大人だから気にしないこどもじゃないんだ寝苦しい夜でもなかったオンラインゲームに時間を忘れてたわけでもない出張帰り空港の免税店で買った洋酒を三口で飲み干すのも毎晩のことブラームスを聴きながら眠りの泉に身を委ねたはずなのにいつもよりだいぶはやくに目が覚めてしまったコメンテーターで知る