【溺れる君】ヤキモチ
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番外編
そのくらい高いIQをアルファ以外で叩き出した人がもう一人いるから、その人の所に行った方がいいってなったんだ。
その場所が夜彦と同じだから、一緒に向かっている。
新人気鋭の小説家の志朗(しろう)さんが兄、文潟一番の物知りで勉強家万生(まお)くんが弟の夕凪(ゆうなぎ)家がその場所。
万生くんは僕と同じ15歳で僕と同じ金髪なのに、僕よりずっと、ずうっとすごいものしりな人なんだ。
ようちゃんは付き合いたて、真昼はラブラブ、夜彦は失恋の歌を歌うからわかったんだ。
出会いがあれば、別れがあるって。
だから、誰でも付き合ったことも別れたこともあるよね?
「夜彦は今まで付き合った人って何人くらいなの?」
「付き合ったといえるかはわかりませんが、交わったことは数えきれないほどでございます」
なんせオメガでございますからと言ってため息を吐く夜彦。
オメガのヒートはアルファもベータも関係なくひき付けるというのは教えてもらった。
だから、ヒートが来たら1週間は引きこもるのだとも。
「真昼は?」
「ベータでございますし、外では優しいと聞きますからそれなりにモテるかと存じます」
ある意味自分を持っているから、人をひき付けるのかもしれない。
「じゃあ、ようちゃんはもっとモテるよね」
だんだん声は小さくなるし、顔は下に向いていく僕。
でも、夜彦はふふふとうれしそうに笑っていた。
「それが一番聞きたかったのでございますね……そして一番聞きたくないと」
まだあんまり知らないから、もっと知りたいんだけど、知りたくないような気もする。
夜、ようちゃんと一緒に寝るんだけど、その時のアレのクセが気になるんだ。
気持ちいいか確認するとか
いやらしく撫でる手つきとか
最後のキメ台詞とか
どこでだれとしておぼえたのか、ちょっと気になるだけなんだ。
「やつがれの部屋でやつがれのヒートを抑えるためにしたのが初めてでございます」
僕の頭の中を読んだかのようにするすると夜彦が話すから、僕は勢いよく顔を上げた。
「すべて声に出ておりましたので、正直に答えさせていただきました」
僕はあわてて口を押さえたけど、だだもれでございましたと穏やかに笑われる。
「性交為を定期的にいたしますと、ヒートが軽くなると聞きまして最初は真昼にやっていただいていたのですが……アルファの方が効果があるそうで、試行錯誤の末に何回かされたのでございます」
ポツリポツリと言いづらそうにいうのを聞いて、僕は仕方がないと思った。
でも、胸のモヤモヤは晴れないんだ。
「ヤキモチでございますね……かわいいですよ」
おほほと笑う夜彦は僕の髪を優しく撫でる。
気持ちいい……でも、ほしいのはこの手じゃないんだ。
「僕がヒート来たら、ようちゃんがしてくれるの?」
抵抗するように言うと、困った顔をする夜彦。
「夕馬は人間なので、仕様が違うのでございます」
僕はガッカリしてため息を吐いた。
「でも、もっとすごい抑え方をいたしますよ」
いきなり耳元でゆっくりとささやかれたから、僕はゾクゾクが止まらなかったんだ。
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