【溺れるくらい愛しましょう、ぐちゃぐちゃにしちゃうよ、だって君は】楽園さ
一番最初
もし、ほんとうにカミサマがいるのなら、おねがいです。
カレをワルい人にはしないでください。
そして、ぼくを生きかえらせないでください。
もし、生きかえらせるのならば……カレのすきな人がいいです。
コロしてくれたカレをたすけるためならば、いいのです。
ぼくのくびにある手にチカラが入ったのか、あたまがからっぽになってくる。
すると、アカいヒカリがぼんやりとでてきた。
はじめて見たぼくはそれを朝日だとおもったんだ。
「ハ、サ……ヒ」
言ってみたら、強くしめられたからうまく言えなかった。
もうすぐしぬのはわかったけど、なんとなく未来が明るい気がした。
「キ、れ……い、だ」
とどかないかもしれないけど、ぼくは手を伸ばしたんだ。
「アカン!」
でも、その声とともに手をつかまれ、朝日もなくなってしまった。
やっぱり、とどかなかった。
「自分から傷つきにいくなんて、アホだよ」
もう信じられないってカレはなぜかおこっていた。
くるしいのもなくなっている。
「なんなん、本当に死にたいの?」
なんで、そんなにおこっているの?
しかも、かなしそうに。
「あなたはぼくをコロすつもりだったんでしょ? だから、ぼくはそれにさんせいしたんです」
ぼくはとっくにカクゴはできてるよ。
「それなら、なにもしなくていい……俺に縛られてて」
伸ばした手がさっきまでくびにあった左手にぐるぐるされて、ベタッと地面に止められた。
わかった、なにもしないよ。
こんどは右手がぼくのかたを押さえるから、まだ目を閉じたままでいることにする。
なぐるのかなっておもったんだ。
次にさけるようないたみとあたたかい水があふれだす感じがしたのはソウゾウがついた。
でも、ヨソウもしないことが次々と起こる。
チュプチュプ
ドクドクとからだのソトへでているはずのチがやわらかいもので止められて、少しずつすいこまれていく。
モクモク
最初はくすぐったいような感じがからだのぜんぶをつつんだ。
フシギとイヤじゃないから、わけがわからない。
「ア、ぁ……アぁ、ンア……ハァ」
しぜんにでる声がじぶんじゃないみたいなんだ。
なんか、ぼく……変だ。
ふわふわ
温かいものがからだをビリビリさせて、だんだん下から上へとうごいてくる。
「ハァ、アぁ……ンハァ、あ……ン」
こんどはあたまがまっしろになってきた。
これが……気持ちいい、なんだ。
「気持ちいい?」
チュッとともにひくくてあまい声が目のまえできこえてくる。
「もう、しんでもいい……」
ふわふわしながらなんとか言ったぼくをふふふと笑うカレ。
「俺、吸血鬼なんだ」
「きゅう、けつ……き?」
兄たちがときどきその話をしていたのをおもいだす。
「俺の家族を御前家は傷つけてきたから、今から君はその罪のせいで死ぬんだよ」
やさしい声でカレは話しつづける。
「血は全部飲み尽くして、皮と肉は全部食べて、骨は御前家に送り付けてあげるから」
カレはうれしそうに話すから、ぼくはいいよとうなずく。
「君はただ快楽に溺れていればいい……もう俺のものだから」
ぼくはキョウハクされているはずなのに、うれしかった。
「こんなぼくだけど、ぜんぶあげますから。だから、どうにでもしてくださいね」
ぼくはしょうじきに言って、カレが最初にした顔のかたちをしてみたんだ。
「もちろん、そのつもりさ」
カレはまたフッと笑って、またチュプチュプとすいはじめた。
ずっとからだがビリビリしつづけているなかでなぜかカレの声があたまに伝わってくる。
"血は15分で吸い尽くせるよ……大丈夫、少しも怖くないさ"
"君の全ては僕の血肉になるから。もちろん、心ももらう"
"骨の髄までしゃぶり尽くして御前に送りつけるから"
"でも、君のことを寝かせるつもりは一切ないよ。どんな時も君を思い出すから"
"諦めなよ……朝日家の次期トップに捕まったのが運のツキさ"
オドされているはずなのにふわふわがふえてきて、ついにバンってはじけた。
びっくりしたぼくははじめてさけんじゃった。
「ンアッ、あ、あっ……ご、ごめんなさい」
ブルブルしたままのからだはこわさでますますふるえる。
「イッちゃった?」
やさしく言うカレは耳をペロリとするから、また変な声がでる。
「なに、それ……?」
とまどうぼくにカレはまたふふふと笑う。
「知らないんだね、かわいい」
顔のはじっこにカレはチュッとしたから、よりわからなくなったんだ。
「ねぇ……君って、いくつ?」
「15才です」
ほそく開けた目から見えるカレは変わらずニッコリしていた。
「もしかして、初めて?」
あまく小さい声で言ったカレは右のひとさしゆびでチをくるくるして取り、ながいベロでぺろりと一口でなめる。
ぼくは寒くないのに、からだが大きくブルブルってなった。
「あらら、君の初めて……奪っちゃった♪」
カレは顔を左にたおしてグーにした右手を右のこめかみに一回当てた。
それがとてもかわいかったんだ。
「あなたは天使ですね」
ぼくのことばをきいてキョトンとするカレ。
「どっちかって言ったら、君の方が天使じゃないの?」
フシギそうに言ってコテンとしたカレだけど、ピンッときたみたいで目を見開いた。
「天国よりも良いところに連れてってあげるね」
やさしい声で言ってからぼくをむねにだいて、強くくびをかむ。
「どこ……?」
ぼくはがさがさした声できく。
「楽園さ、すぐに気に入ると思うよ」
カレがほそくした目がアカく光ったのをさいごに、ぼくのイシキはなくなってしまったんだ。
続き
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