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なぜ人はライブで周りの人の拍手に同調するのかー?それらを読み解く研究結果。

こんにちは、翼祈(たすき)です。
ライブなどで周りの人が拍手をしていると、自分も自然とそれに同調して拍手をする様になります。それはなぜなのでしょうかー?

そんな現象を解明した研究があります。

友達と歩いている時に歩く速さが自然と揃っていたりと、ライブで拍手が自然と同調していたり、周りの人のリズムや行動と、自分のリズムと行動が意識せずに合っていく現象は、ほとんどの人が体験し、私たちの社会・集団形成や対人関係の礎の1つと想定されています。この同調する現象は、複雑な集団で形成されているニホンザルでもヒトと同じ様な同調するアクションが見受けられるのでしょうか?

自然科学研究機構生理学研究所の磯田昌岐教授と戸松彩花特任准教授は、ニホンザルも相手のサルのアクションにつられて同調していき、その上で、社会的な序列が高いサルになればなるほど、アクションが社会的な序列が低いサルが同調しやすいという現象をこの度発見しました。

この研究結果は、2023年5月29日刊の[Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) 誌]に発表されました。この研究は文部科学省科学研究費補助金、堀科学芸術振興財団と日本医療研究開発機構の研究助成により実施されました。

今回はこの同調するアクションの素因に関してお伝えします。

人はなぜ周りの人のアクションに同調しやすいのか?それを解明した研究結果。

画像引用・参考:サルも動きがシンクロする?~ニホンザルが運動リズムを自然と同調させることが明らかに~ 生理学研究所

アクションの同調は集団への帰属意識に関連すると、古来から哲学的に議論されて来ました。実際に、ここ最近の研究では、同調するアクションの体験が同調した相手への好意を上げることが判明しています。こうした、アクションの同調は、私たちが現代社会を形成する上でキーとなる現象と言われながらも、詳細な神経の仕組みはまだ明らかにはなっていません。

神経の仕組み解明のためにも、進化の過程からも、ニホンザルでヒトと同じ様な現象が起こるのかどうかが注目を集めていました。

そこで生理学研究所の研究グループは、神経の仕組みの解明の第一歩として、複雑な社会を形成しているニホンザルにもアクションの同調が見受けられるのかを検証を始めました。今回の研究では、以下の3つの条件が整った上で、ニホンザルが、自由な感覚でレバーを左右に操作するアクションを実施しました。

  1.  「ペア」:同じアクションをする他のサルと向かい合わせでセッティング

  2. 「サル動画」:同じアクションをするサルの動画と向かい合わせでセッティング

  3. 「レバー動画」:1匹のサルがレバーだけが動く動画と向かい合わせでセッティング

すると、サルのアクションのリズムは、相手が起こすアクションリズムに同調することが分かりました。またその効果は、動画のサルと向かい合わせをしてアクションをする条件やレバーだけが動くアクションの条件に比較しても、実在のサルがすぐそばにいて「ペア」条件のときに最も強く現れることが判明しました。その上、この様なアクションの同調は、お互いに相手の行動をよく観察している場合に、より顕著に見受けられます。

また、ニホンザルは複雑な集団の中で社会的な序列を形成することが広く知られていることから、生理学研究所の研究グループは、アクションのリズムと社会的序列の同調のしやすさを生み出しているのかどうかのとの関係を検証していきました。

すると、社会的な序列の高い個体が相手に適用させてアクションを共にする割合が高い、ということも明らかとなりました。社会的な序列の高い個体は、複雑な集団の中で、相手から注目され、アクションを先読みを察知する能力が長けていると想定され、生理学研究所の実験でも、これらが持ち合わせている性質が存分に発揮されて、相手に同調するアクションのリズムが形成されたのかもしれません。

この度発見された生理学研究所の研究では、ニホンザルがヒトに該当するアクションを同調する現象が朗らかに存在し、複雑な社会的な序列や相手の実際に存在するかといった、社会形成に深い関わりを持っていることが判明しました。この研究成果は、私たちのヒトの中にあると想定される「周りの人のリズムとアクションが同調しやすい神経の仕組み」の解明に結び付くと大きな期待を集めています。

参考:生理学研究所、ニホンザルが運動リズムを自然と同調させることを解明 日本経済新聞(2023年)


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